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君とお約束展開な恋がしたいの元(仮)

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きっかけはいつだったか覚えてないとか言いたいところだが、バッチリと覚えているんだ。
こんな恋がしたいって。

少女マンガは良い。少年マンガも好き。なにせ、恋する二人は輝いている。

「はぁ、好き……」
「なつき、また読んでるのそれ」

感情の溢れ出す私にそう声をかけてきたみらい。それ、とは私が手に持っているマンガのこと。何度も読み返し、読むたびに泣いたり手に汗握ったりしていたため本はもうボロボロだ。また買おう。

「みらい、見てよ~このシーンのこのコマがほんと……」
「何回も見たってば」

呆れた顔で見ないでほしい。何回伝えても足りない良さがここにはあるんだ。
出会った場面や恋におちる瞬間、さまざまな苦難や嫉妬を乗り越えて結ばれる二人は見ていてたまらない。

「ほんとにベタなの好きだね、なつきは」
「キュンってしちゃう恋が好きなの」

たくさんの恋の物語、繰り広げられる展開の数々に胸は踊ってしまう。"好き"って素敵だ。

「たまには小説も読んでよ。感想分かち合いたいのに」
「……友達いないの?」

「ばか」
「ぁたっ!」

もう、ひどいなぁ。
小説も嫌いじゃないけどね、眠くなっちゃうってだけで。みらいが読んでるぶあついのは少し苦手だけど。

「これならなつきでも読みやすいわよ」
「お、マンガだ。みらいがマンガって珍しいね」

「好きな小説がコミカライズされたの。これで内容が好きだと思ったら小説版も読みやすいでしょ?」
「へぇ、ありがとうみらい!もしかして私のために買ってくれたの?」

「私だってたまにマンガは読むわよ」

そうなの?小さい頃から一緒にいるけど聞いたことも見たこともない気がする。照れ隠しってやつかな?可愛いやつめ。

「へー、可愛い」
「中身はもっと可愛いわよ」

みらいが可愛いって意味だったんだけど……まぁいいか。たしかに絵も可愛いし。

「ありがとう、みらい」






「この登場人物たち、私たちに似てた……幼なじみだし家も隣だし……」
「幼なじみなのはそうでしょうけど家がとなりなのはあんたが昔ごねたからでしょうが」

「そんな昔の話はいいの!とにかくこれで私、運命感じちゃった!」
「運命?」

「運命なんだよ、私たち!」
「何言ってるのよ……」

「みらい、私とお約束展開な恋をしよう!」


そう叫んでからみらいが断って私に冷たい視線を向けるまで、そう時間はかからなかった。
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