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教授と奥様
しおりを挟む新進気鋭の教授と世界的な巨大グループの令嬢の結婚。
潤沢な研究費はあるが、研究室の後輩たちは微妙だ。
教授が犠牲になるなんて。
そんなとき、奥様が研究所を訪れる。
研究員たちは苦い顔。
我が物顔で、あんなにボディガードたちをぞろぞろ連れてきて。
見せつけるつもりか。
しかも、まだ十代の小娘。
ふわふわした雰囲気で、研究に理解があるようにも思えない。
自分たちがこの憧れの研究室に足を踏み入れるのに、どれだけ苦労したことか。
それを、お金を持っているというだけで当たり前のようにずかずか入ってくるなんて。
奥様は教授を遠くから見つけ、手を振った。
教授が顔を上げて手を振り、奥様が歩いて来るのを待つ。
その歩調のゆっくりしたこと。
教授はにこにことしていたが、研究員たちが焦れた。
「急にどうしたの?」
「近くまで来たから」
はにかむ奥様。
奥様の「お昼を一緒に」という誘いを、教授は「大事な実験があるから」とさっさり断った。
研究員たちは心の中で拍手喝采。
さすがは我らが教授。
普段から食事がおろそかになりがちの教授のために、みんなが弁当を持ち寄って一緒に食べているのだ。
この時間だけは、ゆっくり教授と話せる。
その貴重な時間を奪われなかったことを喜んだ。
すすす、と女子研究員が奥様に近寄り囁く。
「教授は権力にへつらうかたではありませんので」
その女子研究員が、奥様の目の前で教授をお昼に誘う。
弁当を用意したので一緒に食べようと。
頷く教授。
奥様しょぼん。
ボディガードたちを遠ざけてロビーで一人でいると、奥様のことを知らない若い男が隣に腰掛けた。
外部の人だよね。
かわいいね。
俺は◯◯研究室でチームリーダーをやってるんだ。
これからお昼に行くんだけど、もし予定が空いてたら一緒に‥‥。
ぽん、と肩を叩かれ、男の言葉はそこで途絶えた。
男が振り返ると、教授が「妻に何か?」と威圧していた。
一緒にいた研究員たちがびっくり。
あんな教授、初めて見た
「あれ、知らなかった?教授の一目惚れ」と、教授の共同研究者が軽く証言。
奥様に一言物申した女子研究員が「あれはなんだったんだ」と回想する。
「教授は、ご令嬢と結婚されて、このセンターを?」
「まぁ、それが条件だったからね」
教授は苦笑していた。
それを見た女は思った。
センターを設立するために、ご令嬢と結婚したのだ。
しかし、それを聞いてみると事実は違った。
「それな、結婚するにあたって、教授の研究を広く社会に活用するためのセンターを設立するよう、義父に言われたんだよ。そうしたら、結婚していいって。」
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