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【じゅう:二十歳の私へ】

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 一月十日。
 成人式で振袖を身に纏うピチピチ二十歳のインタビューをテレビで見た。

 ピチピチという表現はもはや死語にあたるらしいのだが、わざわざ全国放送のテレビインタビューに答える度胸がある若者を形容する言葉が他に思いつかない。
 十年前の私といえば祖母から預かった、かつて母も来ていたらしい緑の生地に大輪が散りばめられた振袖を着ていた。

 しかし、自分が成人と名乗れるほど成長した自信を持ち合わせておらず、童顔も相まって服に着られた七五三のようで嫌だった。
 美容室で着付けと化粧をしてもらったが、真っ赤に引かれた紅がアンバランスで鏡を見る度に吐きそうになったのを覚えている。
 色んな人に助けられながら二十歳を迎えられたことに感謝をしながらも、二十歳を迎えても自分を好きになれていないことが悲しくて。
 居間に飾られている、当日友達と一緒に撮った写真にはぎこちない笑顔の私がいる。

 テレビには映らない画角の外にーーいや、もしかしたら笑顔で映っている中にも当時の私と同じように複雑な気持ちを抱えている若者がいるのだろうか。

 あれから十年経ったが、今の私が過去の私に偉そうに言えることなどない。転職は何度かしたものの、人生を大きく左右するような事柄に遭遇もせず、淡々と今を生きているのだから。
 ただどんな困難の中で辛くても生き抜いてきた事実が少しだけ私自身を好きにさせてくれた。
 だから、もっと自分を自分を信じて挑戦していいんだよー!

 未来の私も今の私へ同じことを言ってるかもなぁ。
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