『私』が365日を生きるということは

【なな：猫被りの弊害】

　一月七日。
　効率よく業務を熟す。時間を無駄にしない。とても大切だ。
　直属の上司から営業さんが入力・確認しやすい表をエクセルで作成してほしいと、昨日私が帰宅した後にメールで依頼があり、その期限が今日中というのだから最大級に集中して作業をしている。
　計上する項目が多く営業さんの数も五十人近いのだから気を抜いている暇はない。
　ヴー、ヴー、ーー。
　社用携帯が着信で震える。
　この忙しい時に誰だ！

「げっ」

　思わず声が出てしまい慌てて咳で誤魔化す。
　前の部署の上司で、めんどうな予感しかしないが出ないのも不自然かと気を鎮め猫を被り通話ボタンを押す。

「お疲れ様です！　夏森です」
「おー夏森さんお疲れ様ー元気ー？　最近全然電話くれないじゃん白状だなぁ」
「そうでしたか？　まあ部署違いますしね」

　あったりまえやろがい！　用もないのに電話する程暇じゃないんだよ！　現在進行形で！

「それで、ご用件は」
「ああ、そうそう。共有フォルダに先月の売り上げデータのファイルあるじゃん？」
「はい、ありますね。修正ありました？」
「いや、修正じゃないんだけど、本部に提出する資料に貼り付けたいからスクショしてほしいんだよね」
「……はい？」
「簡単でしょ？　ちゃちゃっと表紙の一枚ほしいんだけど」
「…………はい？」
「だから……、まあいいや。こっちでも出来るから！　じゃあまた！」
　プー、プー、ーー。切れた。

　一度全てから手を離して深く息を吐く。
　沢里さんが心配そうにこちらを見ている。

「もしかして、中多マネージャー？」
「はい。スクショ一枚依頼されましたがご自身で出来ると切られました」
「それくらい自分でやれって話よね。前に夏森さんが資料作成手伝ってから頻繁に電話くるじゃない」
「ほんとそれです。まさに無駄な時間」

　私のやる気をかえせ！