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乗合馬車

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「あ、乗ろう。ダタズさんに屋台の売り上げの半分もらったおかげで馬車代も手に入ったし。街を離れても別の街のギルドでも大丈夫だってことだし……急ごう!」
 バーヌの手をとって馬車に乗り込む。
 乗合馬車の乗客は、自分たちの他には10人くらい。服装からすると、冒険者が半分、商人が半分といったところだろうか。
「そうだ、奴隷から解放されたら、逆にユーキを僕の奴隷にして、好きなだけご主人様って呼んでやるんだ……ご主人様って僕がよんだら、ほっぺをひっぱれって命令すれば今まで通り……」
 隣に座ったバーヌがまだ、ぶつぶつと何か言っている。
 独り言なんだよね?何を言っているのかよくわからないけれど、ぶつぶつと何か言っているのは聞こえる。
「おお、金狼様が一緒とは心強い」
 冒険者っぽい服装をした50代の痩せた男が嬉しそうな顔を見せる。
「はぁ?こいつが?奴隷じゃんっ」
 50代の隣にいた、少年と呼べそうな10代後半の男の子がバーヌの手首の奴隷紋を指さして軽蔑した眼差しを向ける。
 あ、嫌な感じ。いかにも奴隷を下に見てる。近づかないでおこう。
「まさか、お前は冒険者なのに金狼様を知らないのか?……ったく最近の若い者は……」
 と、少年の隣の30代後半の冒険者がやれやれと首をすくめた。
「はっ、どんだけ立派な冒険者だったか知らないが、今は奴隷だろ?奴隷なんて冒険者以下の存在に様を付けるおっさんのがよっぽど気が知れない」
 少年がふんっと、自分の主張が正しいと言わんばかりに声をひときわ大きくする。
 がしっと、少年の後ろに座っていたガタイのよい女性冒険者が少年の頭をわしづかみにした。
「お前はペーペーだろう。F級か?ナインヘッドドラゴン討伐で最前線で戦っていたA級~C級の冒険者であればそんな口きけるはずないんだが」
 ぐりぐりと、手に力を入れているのか、少年の顔がゆがむ。
「ああ、そうだな、あの”怪物”は、金狼なくしては討伐は無理だった。それどころか……あの場にとどめておくことも出来ず、街の一つ二つは壊滅しただろう」
 少年の隣の30代の冒険者と50代の冒険者も女性冒険者の言葉に続ける。
「当然、わしらの命があるのも、金狼様のおかげだ」
「ああ、それから、君が準備してくれた造血効果のある変わった薬も助かったよ」
 女性がふっと笑った。
 少年が女性冒険者を睨み付ける。
「はっ、金狼のおかげ?違うだろう、奴隷に戦うように命令したそいつのおかげだったんだろ?だから、感謝すんなら、そいつに感謝すればいいんだ。なんで奴隷に感謝しなくちゃならないんだよっ」
 うー。
 どこまでもむかつくっ。


========
こういう生意気なくそg……ごにょ。
現実にもいますよね。
自分の主張が正しいと、浅はかさを披露している人。

さて、最後のお願いに参りました。というのは嘘なんですが、今月いっぱい、ファンタジー大賞読者投票期間となります。他の作品も読んだうえで「【続きはWEB】」を応援しようかなと思ってくださる方がいらっしゃいましたらよろしくお願いいたします。
投票してくださった方、ありがとうございます!嬉しいです!励みになります!えへへへ。

3作品まで投票できるようなのですので、一番好き!じゃなくても、3番目くらいには好きかも……という人がいたらいいなぁ。
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