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番外編 妹サイド その9
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まずは塩をかけ、そして火であぶる。時間は10分以上で、両面しっかり火が通るように……!
と、ルークは勘違いに拍車をかけていた。……ところで、拍車とは、車の一種だと勘違いしていたのは天の声だ。
ルークは言われるままにドラゴンの羽の先をつまんで、くるりとひっくり返した。
哀れ、ドラゴンの腹面にはいい焼き色がついていた。
「んー、そろそろいいかな?ルーク、なんか剣とかもってない?」
「ナイフなら」
ルークが、ナイフを取り出して少女に差し出す。
「ちょっ、あんた、どういう教育受けてんのよっ!」
少女が怒り出した。
「刃のついてるナイフだとかハサミだとかは、人に手渡すときはこうして刃の部分が相手に向かないように、刃を持って相手に獲ってを向けるのよっ!小学生どころか幼稚園児でも知ってるわよっ!」
日本ではという条件が付く。
が、ルークは小学生とか幼稚園児とかなんだかむつかしい言葉が入っていると、考えることを放棄する癖がある。
「ご、ごめんなさい。投げ渡しちゃだめだとは教えられたけど……」
投げ渡すって、論外ですよ……と、少女はこめかみを抑える。
「まぁいいわ。許す。今度からはちゃんとするのよ?」
「はい」
いやだから、ルークは何も悪くない。
こちらの世界の常識では、いたって普通の渡し方、真横にして柄の部分を取りやすいようにして差し出したのだから。
ああ、いろいろと教えてくれるなんて親切だなぁ。かわいくて親切で優しくて物知りで……。
と、ルークは少女への好感度を上げていた。
その9割は勘違いだが。
そもそも、ドラゴンの倒し方など少女は知らない。
そして、今、火にかけているのは倒すためではない。食べようとしているのだ。
……そんなことルークは知る由もない。
「どれどれ」
少女がナイフでドラゴンを切った。
ピクリと尻尾の先が動いたが、そのままドラゴンは息絶えたようで……。
「ひゃーっ、ちょ、どういうことっ!なんで、どうしてっ!」
少女の悲痛な叫びがダンジョン内にこだまする。
「うわ!やった!すごい!SS級ドラゴン討伐おめでとう!」
ルークは目いっぱい拍手している。
焼いていたいい匂いのする塩エスカルゴもどきは、光に包まれて忽然と消えた。
「どういうことなのっ!なくなっちゃった、なくなっちゃったじゃないのっ!」
少女がルークの襟首つかんでぐんぐんとゆする。
「え?いや、ダンジョン内のモンスターはやっつけると消えてなくなるものだけど……ほら、そうして、アイテムを出すんだよ」
=========
うん、書いているうちに、だんだんこの二人の凸凹な組み合わせも楽しいカモと思えてきた。
……もうお気づきの方もいるかと思いますが、ルークとルクマール……おっと、誰か来たようだ
と、ルークは勘違いに拍車をかけていた。……ところで、拍車とは、車の一種だと勘違いしていたのは天の声だ。
ルークは言われるままにドラゴンの羽の先をつまんで、くるりとひっくり返した。
哀れ、ドラゴンの腹面にはいい焼き色がついていた。
「んー、そろそろいいかな?ルーク、なんか剣とかもってない?」
「ナイフなら」
ルークが、ナイフを取り出して少女に差し出す。
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少女が怒り出した。
「刃のついてるナイフだとかハサミだとかは、人に手渡すときはこうして刃の部分が相手に向かないように、刃を持って相手に獲ってを向けるのよっ!小学生どころか幼稚園児でも知ってるわよっ!」
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投げ渡すって、論外ですよ……と、少女はこめかみを抑える。
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「はい」
いやだから、ルークは何も悪くない。
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ああ、いろいろと教えてくれるなんて親切だなぁ。かわいくて親切で優しくて物知りで……。
と、ルークは少女への好感度を上げていた。
その9割は勘違いだが。
そもそも、ドラゴンの倒し方など少女は知らない。
そして、今、火にかけているのは倒すためではない。食べようとしているのだ。
……そんなことルークは知る由もない。
「どれどれ」
少女がナイフでドラゴンを切った。
ピクリと尻尾の先が動いたが、そのままドラゴンは息絶えたようで……。
「ひゃーっ、ちょ、どういうことっ!なんで、どうしてっ!」
少女の悲痛な叫びがダンジョン内にこだまする。
「うわ!やった!すごい!SS級ドラゴン討伐おめでとう!」
ルークは目いっぱい拍手している。
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「え?いや、ダンジョン内のモンスターはやっつけると消えてなくなるものだけど……ほら、そうして、アイテムを出すんだよ」
=========
うん、書いているうちに、だんだんこの二人の凸凹な組み合わせも楽しいカモと思えてきた。
……もうお気づきの方もいるかと思いますが、ルークとルクマール……おっと、誰か来たようだ
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