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番外編 妹サイド その6

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「えーっと、こうね。【水よ出よ】」
 上を向いて口を開き、出てきた水をごくごくと飲み始めた少女。
 少女の口元から、口をそれて垂れる水がポツリと落ちた。その水滴までもがかわいいと、ルークは思った。
「ぷはー。美味しい。今まで飲んだどんな水よりも美味しい。これ、すごい、魔法なの?水の魔石ってすごいね。肉の魔石とかチョコレートの魔石もあればいいのにっ!」
「肉の魔石かぁ、それは確かにあれば便利そうだ」
 ルークが少女の言葉に笑う。
「あ、そうだ。はい。母さんにいつも多めに持たされてるから。水と一緒に塩も必ずなめろと」
 ルークがポケットに手を突っ込んで一つまみの塩を取り出す。
 少女が条件反射で差し出した手の平の上に塩をパラパラと落とした。
「塩?塩?いや、これ、塩?」
 なぜか少女は何度も塩かと確認している。
「うん。そうだよ。毒じゃないから。えっと、もしかして塩が高価な国もあるって父さんが言ってたけど、うちの国は大丈夫だよ。高級品じゃないから、遠慮なくもらって」
 ああ、内陸部では塩が金のような価値があったんだっけ?と少女がふと思い出す。いや、今はそんなことじゃなくて。
 目の前のドラゴンと呼ばれる生き物は、少女から見れば、どう見てもナメクジだ。
 ナメクジが目の前にいて、塩が手元にあったら、することは一つしかないだろう。
「ちょっと、ルーク、塩もうちょっとちょうだい」
「え?いや、あんまりたくさん食べすぎても体に悪いからって母さんが」
 マザコンか!と、心の中で悪態をつく少女。
 少女はルークが取り出した塩の入った巾着をひっつかむと、一目散にナメクジドラゴンに向かって走り出した。
 あ、転んだ。
 起き上がった。
 また走り出した。
 と、ルークはただ少女の行動を見守るばかり。
 いや、単に脳みそが情報を処理しきれていないだけなのである。
 少女はなぜ塩の袋をひっつかんで、ドラゴンに向かって走り出したのか……。
 自殺行為だ。
 え?自殺?
 まさか!少女は、この絶望的な状況を悲観して自殺しようと?
「あわわわっ!」
 慌てて少女の後を追うルークである。……自殺するような性格に見えましたかね?(天の声)
 ドラゴンのすぐ近くまで走っていく少女。巨大なドラゴンのちょうど腹部分、真ん中あたりだ。
「あぶないっ!」
 いくらドラゴンは動きがのんびりで、頭やしっぽ以上に動きがとりにくい腹部分とはいて、あれだけ近づいては危険だ!
 ルークは少女を後ろから抱きとめた。
 お腹に手を回し、その場から回避するために。
「ちょ、何すんのっ!」
 と、文句を言いながらも、少女は塩の入った袋に手を突っ込み、ぎゅっと握りしめた塩をえいっと投げた。
「まさか、相撲取りみたいに塩をまく日が来るとは思わなかったわ……」
 相撲取り?
 いや、今考えるのはそのことじゃない。


========
はーい。いつもありがとうございます。
第一部完結したので、第二部準備中なのですが、とりあえず忘れていた……
妹サイド編を続けていくつかアップします。

第二部再開までしばらくお待ちください。

ところで「40秒で準備しな!」って、どこまで一般的なのでしょう。
ご存知の方、もしくはよくわからない方、ご意見いただければと思います。

あ、感想欄でご指摘していただきました。
準備でなく支度で合ってたんですね。

支度と書いて、あれ?支度じゃなくて準備だっけ?と書き直して間違えたという……。

というわけで、

「40秒で支度しなっ!」

にあやかって。

「40秒で感想かきな!」

(=゚ω゚)ノ
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