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可能性の話

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「いいや。すっかりふさがったさ。ちょっと血が足りなくってふらつくがな」
 長髪の男の服を見る。本当に服にべっとりと血がついていて……ぽたぽたと流れ落ちた血の跡も見えます。どれくらい血を流したのでしょう。
「もう少し休んだ方が……」
「大丈夫だ、坊主。これでも俺はA級冒険者だ。血が足りないくらいどってことないさ。仲間が、待ってる……」
 って、長髪の男は血で汚れていないほうの手で私の頭をなでてから、再び歩き出しました。
 とても、大丈夫だっていう足取りには見えません。
「仲間……」
 ぼそりとバーヌがつぶやくのが聞こえました。
「ま、待って!」
 男を呼び止めます。
「坊主、休んでいる暇など」
 バーヌの運んでいる皿のから、レバーのフライを取って男に差し出します。
「食べてくださいっ。食べ物が血になります」
 いくらレバーが貧血にいいと言っても、少し食べてすぐに貧血が収まるわけはありません。
 だけれど、だけれど……みんなが必死に戦っているのに、何もしないでいることができなくて……。
「サンキュ」
 長髪の男が、フライをかじりながら再び歩き出しました。
 あと、血を失った時には……そうだ。水分も必要だって聞いたことがあります。
「何か、飲むもの持ってませんか?」
 周りの人に声をかけると、すぐに鍋を運んでいた冒険者が教えてくれました。
「喉が渇いたのならそこのポーションを飲めばいいぞ。効果微小で売り物にならない物が水替わりで置いてある」
 無造作に山のように積まれたポーションをいくつか手に持って、長髪の男を追いかけます。
「血をたくさん流した時には水分も取らないといけないんです。だから、のどが渇いていなくても飲んでください!」
「分かった。そうだ、さっきのやつ、うまかったよ。これが終わったらまた食わせてくれ」
 長髪の冒険者さんがニッと笑って、ポーションに口をつけました。
 ん
 んん?
 ゴクリ、ゴクリと、のどを鳴らすたびに明らかによくなる顔色。
「【鑑定】」
【鑑定結果
 ポーション(ダンジョン産)
 続きはWEBで】
 長髪の冒険者さんの飲んでいるポーションを鑑定します。
 結果はいつもの通り。
 すぐに、検索窓のポーション(ダンジョン産)の後ろに、モモシシのレバーと単語を追加して検索。
 検索結果は2件のみ。
 理科の実験室みたいなトップ画像を持つブログみたいなページにつながりました。
【薬草が手に入らなかったので、代わりにダンジョン産の微小効果のポーションを大量に買ってきた。
 ダンジョン産のポーションに何かを加えると違った効果が現れると師匠に教わったことがあるからだ。
 しかし、ダンジョン産のポーションにわざわざ異物を加えるような人間は変わり者扱いされるため世の中には広まっていないそうだ。
 とりあえず、適当にいろいろなものを入れてみるが……問題は、出来上がった物の効果を自分では実験しきれないということだ。
 どうしたものか。】
 効果は分からないんですね……。
 ダンジョン産のポーションはそのまま使うのが普通。何かを混ぜたりはしない……。けれど、混ぜると、人工物のようにいろいろ効果が付属される可能性があると言うことなんですね。
 ダタズさんの奥さんたちは、何も「レアポーション」のおかげで特別に効果があったわけではなくて、効果が微小な普通のポーションでも、レバーと一緒に飲めば貧血を速やかに改善する効果が……ある、かも、しれない。
 検索ではこれ以上の情報は得られませんでした。
 ですが、十分です。可能性の話で。
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