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必死

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「バーヌ、できるだけすぐに食べられる状態にしておいた方がいいと思う。肉を急いで焼いて。フライもあげておいて。ちょっと出張買取所へ行ってくる」
「分かりました。気を付けて」
 出張買取所……改め「ギルド出張所」はてんやわんやしていた。
「ほかに情報はないの?S級モンスターってどんなもの?」
「幸い、お宝祭りだったから冒険者が集まっているから、モンスターがダンジョンを出て街へ行くことは防げるでしょう」
「怪我人が運ばれてきました。A級2人、B級4名」
「A級2人?どういうこと?進行を止めるだけであれば、何名もA級冒険者がいれば怪我人が出るようなこと……」
「今、S級冒険者ルクマールがダンジョンへ行きました」
「運がいい。大丈夫。S級冒険者がいたんだから……」
 どうしよう、今話しかけるのは迷惑にしかならないかもしれない。
 と、話しかけるのを躊躇していると、フィーネさんと目が合いました。
「何しているの!早く逃げなさい!」
 ちょうどいいです。
「はい。すぐに逃げます。その前に、作った料理を寄付しに来ました。シチューとフライと肉とパンがあります。食事が必要になれば無料で皆さんに配ってください」
 フィーネさんがふっと息を吐きだしました。
「それは助かるわ……ちょうど夕飯前だったからみな空腹のはずだし……。何日かかるかも分からないから……」
 よかった。役に立ちそうです。
「D級で手の空いている者を2~3人連れて行ってこちらへ運んでもらえる?」
「はい、分かりました。あの、どなたかお願いします」
 と、私たちのやり取りを聞いていた3名がついてきてくれました。
「あ、あれは……」
 一人が肉を焼いてるバーヌを見て驚いた顔をしています。
「なぜ金狼がここに……」
 きんろう……まただ。どうも、勤労と言っているわけじゃなさそう。バーヌのことを言っているんですか?
「どうして、ダンジョンに行かないんだ!」
 冒険者の一人がバーヌの元に近づきました。怒っているようです。
「みんな戦ってる、なのに……お前、強いんだろ?金狼、なんでいかねぇんだよっ!」
 バーヌが小さく首を振りました。
「人違いだと思う……。僕は、奴隷のバーヌ。君の知っている冒険者の金狼とは違う」
 冒険者の男が、バーヌの手首に視線を落として奴隷紋を見ます。
「人違い?」
 男が首を横に振りました。
「いや、そんな色の耳と尻尾を持った奴なんてそうそういるわけないだろう、人違いっていうならそれでもかまわない。奴隷なら、奴隷らしく、ご主人様を守るために行って来いよっ!」
 男がバーヌの襟首をつかんで立ち上がらせました。
 せっかく焼けた肉が火の中に落ちてじゅわーっと煙を上げます。
「今もA級B級の冒険者の多くが怪我をして運ばれている。モンスターを引き付けるおとりくらいにはなれるだろう?モンスターの気を引くのは奴隷の役目だろ?」
 ギリリとのどの奥が熱い。
 バーヌは下を向いてしまいました。
 何か言い返したいのを我慢しているのか、それとも何も言い返すことがないのか分かりません。ですが……。
 バーヌの尻尾は垂れています。悲しそうに垂れています。
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