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第十二話

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「まぁ、素敵」
「なんて、お似合いなのかしら」
 周りからのささやき声が聞こえる。
 お似合い?
 マーカス様に手を引かれて、ダンスホールへと向かう。
 ホールド。
 音楽が奏でられると、優雅な足さばきでマーカス様が私をリードする。
 ああ……。
 腕の位置が、胸の位置が、顔の位置が。
 すべてが初めての体験だ。
「エマリーくらい身長があると、踊りやすいね」
 マーカス様も同じように感じていたらしい。
「マーカス様はとても背が高いですものね。他の女性とでは身長差があって、猫背気味になってしまいますか?」
「ふふ、猫背にはなりませんよ、少し腕も頑張って伸ばすくらいですかね?エマリー達ほど身長差があるわけではありませんからね」
 私とルイ殿下のダンスを笑われたような気がして、ちょっと心がざわめく。
 不釣り合いなのは100も承知だ。
 陰口をたたかれるのにも慣れている。
 だけれど、直接言われることには慣れていない……。
「身長差なんて、すぐに埋まりますわ。去年よりも今年、今年よりは来年……ルイ殿下に追い越されて……きっとすぐにどんな女性とダンスをしても似合うようになりますわ」
 くすりとマーカス様が笑った。
「なぜ、他の女性とダンスをすること前提なの?」
「そ、それは……」
 きっと、そのころには私とは婚約破棄していて、別の誰かと婚約している……と、思うからとはなぜか言えなかった。
「ささやきが、聞こえませんでしたか?私とマーカス様が二人並んだ時に……お似合いだと……私とルイ殿下が一緒の時には一度も……言われた子とはないのです。私が、ルイ殿下にふさわしくないから……」
 あ、ダメだ。
 何か、涙が出そうになって来た。
 事実を口にしただけなのに。
 なんで泣きたくなるんだろう。
 ルイ殿下にふさわしくないのは分かってる。私は、殿下が大人になるまで、姉代わりとして成長を見守るのが役目。
「ふぅーん。皆は見る目がないんですかねぇ?私から見れば、二人はお似合いだと思うけれど」
 は?
「甘えん坊で欲深いルイと、包容力があって無欲なエマリー、この上なくお似合いの二人だよね」
「え?あの……」
 私と、ルイ殿下がお似合い?
 マーカス様にはそう見えるの?
「でも、あの、私たちが踊っているの……見たでしょう?」
 くすっとマーカス様が笑った。
「身長差なんてすぐに埋まるっていったのはエマリーだよね」
 そうだけど。
 でも、私とルイ殿下がお似合いだなんて、そんなこと絶対、絶対、誰も思ってないと思ったから、驚いてしまって。






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以下執筆状況報告


夜中の更新。
って、もうすぐ早朝だわ!

いやぁー、あれです。「エール」の総集編を見ていたら……こんな時間。
それにしても、エールの総集編……トイレ休憩がない!そして、総集編だけあって、少し目を離すと話がめっちゃ進んでる……という。
いやぁ、CMが途中で入るの大事ね……。
いえね、録画したんですよ、途中で録画して追っかけ再生で見ようっととか思ったら、別の作品録画予約してたため、録画が途中で強制終了……(´;ω;`)うおおおーーーーっ。

と、バタバタしながら見ていたため、眠くならずに、見終わったので、続きを少し書きまして。
書いたので、更新しときます。

ご覧いただきありがとうございます。
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