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この世界

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 ちょっと待て。
 この世界には、火魔法のようなものがないのか?
 確かに、薪などの燃料を燃やしてお湯を沸かすことは燃料の少ない土地では贅沢なことだろう。
 しかし、火魔法があるならそれほどお湯を沸かすのが贅沢なことではないんじゃないか?
 もしかして、魔法が使える人間というのは、ごくごく少数という世界観か?冒険者レベルの人間が使えるような一般的なものではなく、宮廷魔導士のように、魔法が使える人間は特別でお城に雇われるみたいな、そんな感じなのか?
 火の魔石のようなものもないということなのか?魔石も貴重品?魔道具みたいなものも普及していない?
 ん?
 だが、ギルドはあった。ポーションもある。冒険者らしい人間もいた。神獣なんてのもいるらしい。
 明らかにファンタジーな世界であることは間違いないだろう。
 まだ、分からないことだらけだな。
 すぐに、部屋に2人のメイドが何度か往復してバスタブにお湯を張った。
 ふーん、二人ともなかなかかわいいじゃないか?メイドとイチャイチャってのもいいな。
 勇者といい仲になるメイドとなると、モブじゃなくなる。もしかして、実はめっちゃ強い戦うメイド?暗殺者に育て上げられたとかいう護衛も兼ねたメイド?それとも実は人ではなく、オートマタとかだったり?
 などといろいろと妄想を繰り広げながらメイドが働いている姿を眺める。
「ご主人様、ご用意が整いました」
 ぺこりと頭を下げるメイド1。
 って、あれ?
 頭を下げているのは、シャルルに対してだ。
 あー。俺が、ご主人様では、なかった……。ちっ。後で専属メイドをシャルルに頼んでつけてもらうか?勇者の頼みだ。シャルルだって嫌とは言わないよな。
「コウ、風呂を知っているようなので、使い方を説明は省く。着替えはこちらで用意するから、さっぱりしてくれ」
 衝立でバスタブが覆われている。
 メイド2人は部屋を出て行った。
 ……あれ?メイドが服を脱がせたり、体を洗ったりとか、ないのか?
 と思ったら、入れ替わるようにごつい男が一人部屋に入ってきた。
 いらない。服も一人で脱げるし、体も自分で洗える!
 急いで衝立の向こうに移動。
 バスタブの近くには体を洗うための大きなタライやせっけんや桶なんかも準備してある。
 そうか、床をぬらさないように、体はタライで洗うのか。バスタブの中のお湯を見ると、風呂というには若干量の少ないお湯。半身浴……か。まぁ、贅沢は言わない
「シャルル様、ポーションをお持ちいたしました。こちらは上級ポーション、こちらが中級ポーション、こちらが初級ポーション、それから、こちらですが……ちょっと不思議な噂のあるポーションで、試していただければとお持ちいたしました」
 衝立の向こうから男の声が聞こえてきた。
 ああ、なんだ。俺の風呂を手伝うために来たんじゃないのか。


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まだしばらく続くよ。自称勇者様のお話。もう、お腹いっぱい。
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