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スマホ

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 酒くせぇ。
 男くせぇ。
 汗くせぇ。
 とにかく、くせぇ!
 あまりのひどいにおいに顔をしかめる。
 なんだよ、これ!勇者ってのは、いい匂いのするかわいい女の子や、綺麗なお姉さんに囲まれるんもんだろう?
 なんで、俺は、こんなむさくるしいおっさんに囲まれてんだ?
 向かい側の牢を見ると、相変わらず背中を丸めて一人寝転んでいる。
 って、あっちは一人じゃん。なんてこっちにおっさんたち詰め込んだ!
 アイラの差し金で、嫌がらせか?
「おい、ひょろいの、お前もそんな仏頂面してないで、飲め、飲め」
 まったく、世界は違っても、よっぱいはどこも同じだな。
 円座に座ったおっさんたちは、床に適当に置いた食べ物を肴に、大きな陶器の酒瓶からめいめいにコップに酒を注いで飲んでいた。
 常連とか言ってたが、ずいぶん持ち込んだな。
 干し肉、パン、チーズ、煮干のような小魚に、謎の食べ物。
 ぐぅーっと、お腹が空腹だということを思い出させる。
「あははは、兄ちゃん腹減ってんのか?なら、酒の前に食え。空腹に酒を入れるのはおすすめしねぇ」
 食べていいのか?
 なんだ、おっさんたち、意外と気がきくじゃねぇか。臭いけどな。
 さっそく、並べられたおいしくもない食べ物を口に運び空腹を満たす。勇者になったら、美味しい物食うぞ。こんな底辺のやつらとは違うんだからな、俺は。
 気が付けば、酒も飲み、すっかり酔いも回ってきた。
「俺はねぇ、勇者なの。なのに、あのアイラって女、俺の言うことハナっから信じねぇし」
「あはは、勇者か、そりゃ勇ましいなぁ」
「オイラは信じるよ、お前は勇者だ。アイラ様のことを呼び捨てにするなんて、勇者にちげぇねぇ」
「ぶはははは、確かに、確かにそりゃいえる」
 酔っぱらいが楽しそうにげらげら笑っている。
「本当なんだって、ほら、これ見ろよ、こんなものこっちの世界にゃないだろ」
 ポケットからスマホを取り出して見せる。
「んあー、なんだそりゃ?黒い石か?」
 電源の入っていない黒い画面を見た男が顔を近づけて覗き込む。
「たいそうな鏡だなぁ、よく映る」
「違う、これは、スマホといって」
 電源は切ってある。充電できないから、電池の節約のためだ。この世界に来た時点で、充電は90%以上あったが、あと何日もつか。
「スマホだ?」
 男が手を伸ばしてきたので、慌ててポケットに戻す。下手にいじくられて壊れたら大変だ。

=================
あ、うっかりタイトルに浩史視点って入れるの忘れてるけれど、視点が戻る時に注意書き入れるんで、まだしばらく続きます。
……(´・ω・`)
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