44 / 111
交渉
しおりを挟む
「聞いてくださいよ、店長。月の橋の噂で、ポーションを買い求める人が多いだけじゃなくて、私の作ったポーションの効き目が高いからって、もう大人気で」
急にワントーン上げた声に切り替わった。嬉しそうな顔をしている。
「よし、値上げすればいい。しばらくは値段が上がっても買う人間は後を絶たないだろうからな。他のみんなにも伝えろ。明日からは倍の値段にするようにと。今日の客には明日から値上がりするから今日がお買い得だと言うように」
「はぁい。分かりました店長!」
ミミリアがすぐに出て行く。
残った店長に声をかける。
「店長、いくらあっても売れるんですよね?だったら、ノルマを超えた分の買い取り価格も上げてもらえますか?」
「は?何を言う、ちょっとディール様と顔見知りだからといって、好き勝手をさせるつもりはない」
私の言葉に、店長はすぐに否定の言葉を発する。
「分かりました。じゃぁ、ノルマまでは頑張りますけど、時間がどれだけ余ろうがそれ以上は1本も作りません」
「馬鹿をいうな、稼ぎ時だ!1本でもたくさん作れ!」
店長の言葉にふぅっと小さくため息をつく。
「私たちは、稼ぎ時でもなんでもありませんから。疲れるだけ損です。ノルマを達成すればそれでいいんです。1本銅貨10枚の買い取り価格になれば、やる気が出て、よりたくさんのポーションが作れそうな気がするんだけどなぁ……ねぇ、マチルダ」
マチルダさんに視線を向ける。
「1本銅貨10枚……」
マチルダさんがごくりと小さく唾を飲み込んだ。
「は、わかった、いいだろう。どうせノルマにプラスして数本のことだ。いきなりたくさん作れるわけもないからな。今は確かに1本でも余分にあれば儲かるからな」
「約束ですよ。表で売る値段を元に戻すまでは1本銅貨10枚でお願いしますね」
にこりと笑うと、店長がぷいっと顔を反らしてドスドスと不快そうな足音を立てて去って行った。
「……買い取り価格が10倍……リョウナ、あんたすごいね」
マチルダさんが驚いた顔をしたままだ。
ダーナはどんな顔をしているのかと見ると、悔しそうに唇を噛んでいる。
「私は自分の力で借金を返してここを出ます。助けを待ったりなんてしない」
ダーナの顔を見る。
「はっ、そう簡単にうまくいくものかっ!」
ダーナが私を憎々し気な目で睨む。
「簡単かどうかは知らないけれど、努力は続ける。諦めて誰かの助けを待ち続けるなんてとてもできない」
ダーナをにらみ返すと、あっさりとダーナは目を反らし、薬研で薬葉をすりつぶすのを再開した。あくまでも、その方法を貫くつもりらしい。
ハナもマチルダも、もう足踏み式に切り替えて作業をしているというのに。
私は、足踏み式でノルマ分を作り終えると、薬研に切り替える。借金が増えなきゃ、それでいい。
店長をもうけさせるようなことをする気はない。
急にワントーン上げた声に切り替わった。嬉しそうな顔をしている。
「よし、値上げすればいい。しばらくは値段が上がっても買う人間は後を絶たないだろうからな。他のみんなにも伝えろ。明日からは倍の値段にするようにと。今日の客には明日から値上がりするから今日がお買い得だと言うように」
「はぁい。分かりました店長!」
ミミリアがすぐに出て行く。
残った店長に声をかける。
「店長、いくらあっても売れるんですよね?だったら、ノルマを超えた分の買い取り価格も上げてもらえますか?」
「は?何を言う、ちょっとディール様と顔見知りだからといって、好き勝手をさせるつもりはない」
私の言葉に、店長はすぐに否定の言葉を発する。
「分かりました。じゃぁ、ノルマまでは頑張りますけど、時間がどれだけ余ろうがそれ以上は1本も作りません」
「馬鹿をいうな、稼ぎ時だ!1本でもたくさん作れ!」
店長の言葉にふぅっと小さくため息をつく。
「私たちは、稼ぎ時でもなんでもありませんから。疲れるだけ損です。ノルマを達成すればそれでいいんです。1本銅貨10枚の買い取り価格になれば、やる気が出て、よりたくさんのポーションが作れそうな気がするんだけどなぁ……ねぇ、マチルダ」
マチルダさんに視線を向ける。
「1本銅貨10枚……」
マチルダさんがごくりと小さく唾を飲み込んだ。
「は、わかった、いいだろう。どうせノルマにプラスして数本のことだ。いきなりたくさん作れるわけもないからな。今は確かに1本でも余分にあれば儲かるからな」
「約束ですよ。表で売る値段を元に戻すまでは1本銅貨10枚でお願いしますね」
にこりと笑うと、店長がぷいっと顔を反らしてドスドスと不快そうな足音を立てて去って行った。
「……買い取り価格が10倍……リョウナ、あんたすごいね」
マチルダさんが驚いた顔をしたままだ。
ダーナはどんな顔をしているのかと見ると、悔しそうに唇を噛んでいる。
「私は自分の力で借金を返してここを出ます。助けを待ったりなんてしない」
ダーナの顔を見る。
「はっ、そう簡単にうまくいくものかっ!」
ダーナが私を憎々し気な目で睨む。
「簡単かどうかは知らないけれど、努力は続ける。諦めて誰かの助けを待ち続けるなんてとてもできない」
ダーナをにらみ返すと、あっさりとダーナは目を反らし、薬研で薬葉をすりつぶすのを再開した。あくまでも、その方法を貫くつもりらしい。
ハナもマチルダも、もう足踏み式に切り替えて作業をしているというのに。
私は、足踏み式でノルマ分を作り終えると、薬研に切り替える。借金が増えなきゃ、それでいい。
店長をもうけさせるようなことをする気はない。
26
お気に入りに追加
1,757
あなたにおすすめの小説
俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
騎士志望のご令息は暗躍がお得意
月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。
剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作?
だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。
典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。
従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
【完結】最強ロリ聖女のゆるゆりグルメ紀行
吉武 止少
ファンタジー
幼いころから聖女として魔物溢れる森で騎士たちを癒していたマリアベルは、無実の罪で陥れられて置き去りにされてしまう。
メイドのノノと逃げ出したマリアベルは美味しいものを食べながら他国でのんびり暮らそうとするが……
「んっ……おいひい……」
「ぐっ!?」「きゃわわ」「とうとい……!」
「あ、けがした人が……!」
「け、けがが治った!」「聖女様……?」「天使だ……!」
これは最強ロリ聖女が美味しいものを食べながら幸せになるお話。
【第一部完結保証】第一部完結まで毎日投稿します。
【R15は保険です】
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる