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13本引く10本

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 どんぶりのような器に、汁を絞り入れる。木を使ってぐりぐりねじって絞れるだけ絞る。
 それから、何に使うのか分からないけれど、皮の端キレみたいなものがあったので、くるりと丸め円錐のような形を作る。ロートの代わり。
 とがった先を瓶の口に当て、出来上がった汁を瓶に詰めていく。小さな瓶の口でも、それほど慎重にならなくても移し替えることができる。
 私の作業の様子を黙々と作業していた子がじっと見ていた。
 瓶に蓋をしながら数を数える。
「13本か。うん、結構できたよね」
 かかった時間は1時間半くらい?このペースなら、1日作業すれば全然いける。
「時間だぞ、今日の分を提出しろ」
 店長が、ドアを開いて顔を出した。
 ダーナが、机の上に乗ったポーションを回収して箱に入れていく。全員の分を集めるのがダーナの仕事なのか、私の作った13本も回収された。
「ダーナが22本、ノルマに3本足りないな、マチルダが19本、今日は不足か」
 チッとマチルダさんが舌打ちした。ダーナと争っていたつり目の女性だ。背中を押されこぼしてしまったのでノルマを達成できなかったらしい。
「ハナは17本、ノルマに8本足りないな。どうする、これで借金は金貨3枚だぞ。これ以上借金が増えるなら別の仕事をして返してもらわないと」
 店長の言葉に、ハナと呼ばれた黙々と作業をしていた女性の顔が青ざめた。同じくらいか少し若い年齢のハナは、決して美人というわけではないけれど優しそうでおっとりとした魅力的な顔をしている。少し肉がつけばとてもかわいらしいんだろうな。
「もう少し、頑張らせてください」
 ハナが小さな声でつぶやいた。
「新入り、お前は今日は……ん?瓶の数が……初日で時間も少なかったのに……」
 店長が私が納めた13本の瓶を順に持ち上げて振った。
 そして、苦々しい顔つきをしたあと、ニヤリと笑う。
「今日は3本だな」
 え?
「あの、13本作ったはず」
「瓶の口のここまでと教えたはずだ。13本のうち、中身が足りないものばかりで、3本しかちゃんとしていない」
 嘘、そんなはず……。
「文句があるのか?」
 店長の言葉に、ダーナとマチルダがにやにやして私を見ている。
 店長がダーナに声をかけた。
「おい、新人の指導をしっかりやれよ」
「はい。分かりました」
 店長はそれだけ言うとポーションを持って部屋を……いや、中庭を出て行った。
 辺りはすっかり薄暗くなってきた。
「あんたねぇ、リョウナといったか、明日から私がきっちりチェックしてやるから、持ってきなよ」
 ぐっと襟首をつかまれる。
 うぐぐ、苦しい。
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