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異世界?ええ?え?

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「まじか、いや、まじかよ……」
 浩史があたりをきょろきょろと見回す。
 私も同じようにぐるぐると頭をまわして景色を見る。
 あれほどいた人がいない。
 ビルも駅も、何もかもなくなっている。
 森の中の舗装もしていない土がむき出しの1本道に、私と浩史は立っていた。
 信じられない。一瞬360度の映像が映し出される部屋にでも運び込まれたのかとも思ったけれど、肌に触れる空気が違う。
 あの新宿のどことなく濁った空気ではない。空気清浄機で作られた綺麗だと言われる空気とも違う。
 山に行ったときのような、濃厚なまとわりつくような、それでいて不快な感じがしないあの空気だ。
「異世界かよ、異世界に来ちまった……」
 は?異世界?確かに都会の景色からすると別世界みたいな自然の中にいるとは思うけど……。
「俺、勇者なのか?すげぇどんなチート能力あるんだ?」
 浩史はニヤニヤして嬉しそうだ。もうすっかり、今、自分の浮気が原因で私に婚約破棄を突き付けたという事実などなかったかのようだ。
「ステータスオープン……あれ?表示されないな。そうか、ギルドカードに表示されるパターンか、もしくは神殿の水晶に触れると見える系か?」
 浩史の口からは次々とゲームなのか小説なのか分からないけれど、物語の中のような単語が飛び出している。
「そうとなればさっそくギルドに行かなくちゃな」
「ちょっと、浩史、何を言ってるの?」
 まったく話についていけずに、興奮気味にニヤニヤしている浩史の肩をつかんで事情説明を要求する。
「は?涼奈、お前分かんないの、ほら見てみろよ」
 浩史が空を指さす。
「え?太陽の周りに白い月が……3つ?」
「そうそう、それにほら、あそこに飛んでる恐竜みたいなの飛んでるだろ」
 言われてみれば、遠くの空に大きな翼を広げたプテラノドンのような影が見える。
「きょ、恐竜?」
「恐竜っていうと古代みたいだけど、俺たちがいるのは人工的に切り開かれた道でわだちもあるから文明のある時代。恐竜じゃなくてあれはモンスターって呼ぶのが正解だろうな。ワイバーンってやつじゃね?」
 浩史が自信満々に答える。
「トラックにひかれたわけでもないし死んでもないから転生ではない。穴に落ちるみたいなきっかけもないから転移でもなく、異世界召喚じゃないかな。勇者様この世界を救ってくださいってアレ。ふふふ、俺が、勇者かぁ」
 何を、浩史が言っているのか半分も理解できない。
 ただ、今いるところは、どうやら地球ではない別の世界……。本当に、異世界のようだっていうこと……それだけは、分かる。
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