2 / 111
異世界?ええ?え?
しおりを挟む
「まじか、いや、まじかよ……」
浩史があたりをきょろきょろと見回す。
私も同じようにぐるぐると頭をまわして景色を見る。
あれほどいた人がいない。
ビルも駅も、何もかもなくなっている。
森の中の舗装もしていない土がむき出しの1本道に、私と浩史は立っていた。
信じられない。一瞬360度の映像が映し出される部屋にでも運び込まれたのかとも思ったけれど、肌に触れる空気が違う。
あの新宿のどことなく濁った空気ではない。空気清浄機で作られた綺麗だと言われる空気とも違う。
山に行ったときのような、濃厚なまとわりつくような、それでいて不快な感じがしないあの空気だ。
「異世界かよ、異世界に来ちまった……」
は?異世界?確かに都会の景色からすると別世界みたいな自然の中にいるとは思うけど……。
「俺、勇者なのか?すげぇどんなチート能力あるんだ?」
浩史はニヤニヤして嬉しそうだ。もうすっかり、今、自分の浮気が原因で私に婚約破棄を突き付けたという事実などなかったかのようだ。
「ステータスオープン……あれ?表示されないな。そうか、ギルドカードに表示されるパターンか、もしくは神殿の水晶に触れると見える系か?」
浩史の口からは次々とゲームなのか小説なのか分からないけれど、物語の中のような単語が飛び出している。
「そうとなればさっそくギルドに行かなくちゃな」
「ちょっと、浩史、何を言ってるの?」
まったく話についていけずに、興奮気味にニヤニヤしている浩史の肩をつかんで事情説明を要求する。
「は?涼奈、お前分かんないの、ほら見てみろよ」
浩史が空を指さす。
「え?太陽の周りに白い月が……3つ?」
「そうそう、それにほら、あそこに飛んでる恐竜みたいなの飛んでるだろ」
言われてみれば、遠くの空に大きな翼を広げたプテラノドンのような影が見える。
「きょ、恐竜?」
「恐竜っていうと古代みたいだけど、俺たちがいるのは人工的に切り開かれた道でわだちもあるから文明のある時代。恐竜じゃなくてあれはモンスターって呼ぶのが正解だろうな。ワイバーンってやつじゃね?」
浩史が自信満々に答える。
「トラックにひかれたわけでもないし死んでもないから転生ではない。穴に落ちるみたいなきっかけもないから転移でもなく、異世界召喚じゃないかな。勇者様この世界を救ってくださいってアレ。ふふふ、俺が、勇者かぁ」
何を、浩史が言っているのか半分も理解できない。
ただ、今いるところは、どうやら地球ではない別の世界……。本当に、異世界のようだっていうこと……それだけは、分かる。
浩史があたりをきょろきょろと見回す。
私も同じようにぐるぐると頭をまわして景色を見る。
あれほどいた人がいない。
ビルも駅も、何もかもなくなっている。
森の中の舗装もしていない土がむき出しの1本道に、私と浩史は立っていた。
信じられない。一瞬360度の映像が映し出される部屋にでも運び込まれたのかとも思ったけれど、肌に触れる空気が違う。
あの新宿のどことなく濁った空気ではない。空気清浄機で作られた綺麗だと言われる空気とも違う。
山に行ったときのような、濃厚なまとわりつくような、それでいて不快な感じがしないあの空気だ。
「異世界かよ、異世界に来ちまった……」
は?異世界?確かに都会の景色からすると別世界みたいな自然の中にいるとは思うけど……。
「俺、勇者なのか?すげぇどんなチート能力あるんだ?」
浩史はニヤニヤして嬉しそうだ。もうすっかり、今、自分の浮気が原因で私に婚約破棄を突き付けたという事実などなかったかのようだ。
「ステータスオープン……あれ?表示されないな。そうか、ギルドカードに表示されるパターンか、もしくは神殿の水晶に触れると見える系か?」
浩史の口からは次々とゲームなのか小説なのか分からないけれど、物語の中のような単語が飛び出している。
「そうとなればさっそくギルドに行かなくちゃな」
「ちょっと、浩史、何を言ってるの?」
まったく話についていけずに、興奮気味にニヤニヤしている浩史の肩をつかんで事情説明を要求する。
「は?涼奈、お前分かんないの、ほら見てみろよ」
浩史が空を指さす。
「え?太陽の周りに白い月が……3つ?」
「そうそう、それにほら、あそこに飛んでる恐竜みたいなの飛んでるだろ」
言われてみれば、遠くの空に大きな翼を広げたプテラノドンのような影が見える。
「きょ、恐竜?」
「恐竜っていうと古代みたいだけど、俺たちがいるのは人工的に切り開かれた道でわだちもあるから文明のある時代。恐竜じゃなくてあれはモンスターって呼ぶのが正解だろうな。ワイバーンってやつじゃね?」
浩史が自信満々に答える。
「トラックにひかれたわけでもないし死んでもないから転生ではない。穴に落ちるみたいなきっかけもないから転移でもなく、異世界召喚じゃないかな。勇者様この世界を救ってくださいってアレ。ふふふ、俺が、勇者かぁ」
何を、浩史が言っているのか半分も理解できない。
ただ、今いるところは、どうやら地球ではない別の世界……。本当に、異世界のようだっていうこと……それだけは、分かる。
23
お気に入りに追加
1,757
あなたにおすすめの小説
俺のスキルが無だった件
しょうわな人
ファンタジー
会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。
攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。
気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。
偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。
若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。
いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。
【お知らせ】
カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。
【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する
影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。
※残酷な描写は予告なく出てきます。
※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。
※106話完結。
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)
SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。
しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。
相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。
そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。
無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!
騎士志望のご令息は暗躍がお得意
月野槐樹
ファンタジー
王弟で辺境伯である父を保つマーカスは、辺境の田舎育ちのマイペースな次男坊。
剣の腕は、かつて「魔王」とまで言われた父や父似の兄に比べれば平凡と自認していて、剣より魔法が大好き。戦う時は武力より、どちらというと裏工作?
だけど、ちょっとした気まぐれで騎士を目指してみました。
典型的な「騎士」とは違うかもしれないけど、護る時は全力です。
従者のジョセフィンと駆け抜ける青春学園騎士物語。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
【完結】最強ロリ聖女のゆるゆりグルメ紀行
吉武 止少
ファンタジー
幼いころから聖女として魔物溢れる森で騎士たちを癒していたマリアベルは、無実の罪で陥れられて置き去りにされてしまう。
メイドのノノと逃げ出したマリアベルは美味しいものを食べながら他国でのんびり暮らそうとするが……
「んっ……おいひい……」
「ぐっ!?」「きゃわわ」「とうとい……!」
「あ、けがした人が……!」
「け、けがが治った!」「聖女様……?」「天使だ……!」
これは最強ロリ聖女が美味しいものを食べながら幸せになるお話。
【第一部完結保証】第一部完結まで毎日投稿します。
【R15は保険です】
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる