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「ほら、ミリヤお姉ちゃん、このお店のレーズンクッキー、美味しいよ!」
 私の口元にカリアがクッキーを近づけると途端に息が苦しくなった。
「大丈夫ミリヤっ、もしかして、まだ病気が良くなってなかったのに無理して帰ってきたの?」
 違う、あのクッキー……。
「お姉ちゃん大丈夫?無理しちゃだめだよ、まだ領地にいた方が良かったんじゃない?」
 誰、ねぇ、心配するふりをしてニタニタ笑っているあなたは誰なの?
「せっかく美味しいクッキーだけど食べられそうにないね、お姉ちゃん。ここのお店、小麦粉だけじゃなくてそばの粉も使っているからサクサクなんだよ……」
 息が……苦しい……。
 何で、心配そうにしているお母様も、メイも……知ってるはずなのに。
 私はそば粉で命を落としてしまうかもしれないから近づけないようにと……お医者様に言われたことを。
 どうして、どうして……。
 ヒューヒューと喉がなる。
 息が……。
 そこで意識が途切れた。

 目を開くと、タウンハウスの……知らない部屋に寝ていた。
「私の……部屋じゃない……」
 私の声に気が付いたのか、すぐにメイが心配そうな顔で私の顔を覗き込んだ。
「ミリヤお嬢様、目を覚まされたのですね。喉は乾いていませんか?今、お水を……」
「ねぇ、メイ、ここはどこなの?」
 メイが驚いた顔をしている。
「もちろん、ミリヤお嬢様のお部屋ですよ?……ああ、もう王都のお屋敷に戻ってきたんですよ?覚えていますか?」
 覚えているけれど、明らかにこの部屋は私の部屋ではない。
「ここは屋敷のどの部屋なの?」
「お嬢様が王都を離れるまで使っていたお部屋ですよ?覚えていませんか?」
 上半身を起こして、部屋を見渡す。
「違うわ、私の部屋じゃない。机もドレッサーもベッドも、何一つ私の使っていたものじゃないっ!」
「どうしたんですか、お嬢様?」
 ベッドから降り、裸足のまま廊下に出る。
「お嬢様?お待ちくださいっ」
 メイの止める声が聞こえるけれど、無視してそのまま廊下を進んで真ん中の部屋の扉を開ける。
 目に飛び込んできた天蓋付きのピンクのベッドも、薔薇の花模様のついた机も、小さなぬいぐるみが置いてあるチェストも、全部見覚えがある私の部屋だ。
「どうしたの、お姉ちゃん、何か用?」
 知らない少女がベッドの上に座っている。
 私をお姉ちゃんと呼ぶ、私とは似ても似つかない容姿のカリア。私のお気に入りのピンクのドレスを着て、私の大切なぬいぐるみをお尻の下に敷き、私の宝物の本のページを乱暴にめくっている。
「返して、それ、私の本よ!それに、ぬいぐるみの上に座らないで!」
 本に手を伸ばし、カリアをぬいぐるみの上からどいてもらおうと肩を押した。
 カリアは後ろに倒れ、そのままくるんと回ってベッドの下に落ちた。
「痛いよぉーお姉ちゃんが、ひどいことする~」
 ものすごい勢いで泣きだしたカリアに、ごめんなさいと声をかける間もなく、カリア付の侍女が私をにらみつけた。
「何をなさるんですか!酷いですミリヤお嬢様!大丈夫ですかカリア様!」
 泣き声に、隣の部屋からお母様が飛んできた。



===============
ふにゃーん。名前が間違ってたらごめんなさい。
かなり気を付けているのですが
ミリヤをミリアと何度も打ち間違えました。
カリアも間違えそう……なんだよ、だれだよ、こんな名前つけたの。
メイは大丈夫よ。メイドのメイだからね!覚えやすいね!侍女だからメイドでメイだよ!
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