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悪い人

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「あははは、ざまぁみろだよ!」
「だなぁ。3限目だろう?騎馬訓練」
「無様に馬から転げ落ちてみっともないところ見せればいいんだよっ!」
「本当だよ。いつもいつも偉そうに!」
 はい?
 騎馬訓練?
 馬から落ちる?
 どういうこと?
 そんなこと、予言できるなんてある?
 落ちることを知ってるとかある?
「バレたらどうするんだ?」
「はぁ?俺らがやったなんてバレるわけねぇだろう。あんなに大量に生徒が入れ代わり立ち代わり周りをウロウロしてんだ。犯人なんて見つけられるわけねぇだろ」
 犯人?
 バレる?
 騎馬訓練で馬から落ちるように、何か細工をしたということ?
「待ちなさいっ!今の話聞いたわ!」
 これは黙っていられない。
「何だ小娘、聞いたって何がだよ!」
 一瞬ぎくりとした表情を見せた物の、2人の前に姿を現した私に背の高いほうの男が歩み寄ってきた。
 うぐぐ、リードルよりも背が高い。2m近くはあるでしょうかね。見下ろされるとかなりの迫力です。
「何を、聞いたって?」
 距離を詰められるとさらに迫力が。
 身長にばかり気を取られていましたが、服装は制服じゃなくて騎士服。
「誰の馬に細工をしたの?生徒たちのせいに本当にできると思っているの?」
 男がくくくっと笑った。
「気の強い小娘だなぁ。何の証拠があって、俺たちが馬に細工をしたって言ってんだ?」
「はぁ?会話を聞いたと言いましたわよね?俺らがやったなんてバレるわけねぇって。確かにそう言ってましたね?」
 男がくっくくっと笑った。
「そうそう、確かに、言った。言ったよ?だからなんだ?」
 随分と強気な発言だ。どういうことだろう。
「ちょっとそこで、誤って木の枝を折っちまったんだよ。なぁ?」
 男が後ろにいた中肉中背の騎士に声をかけた。まだあどけなさの残る若い騎士だ。
「あ、ああ。そう。そうだ。木の枝を折ったのが俺たちだってバレるわけねぇって話をしてたんだ。それだけだ」
「嘘です。確かに、馬から落ちればいいという話をしていたでしょう?」
 男をにらみつけると、男はすっと腕を伸ばして私の襟首をつかんだ。
「小娘、お前は何も聞いてないんだよな?」
 何、これ。
「な、何をするんですかっ」
「あ~?身長差がありすぎて聞こえねぇなぁ。俺がこうしてお前の声が聞こえるように持ち上げないと」
 そうなんですね。
 だから、ぐいぐいっと、私の襟首をつかんで引っ張っているんですね。
 これは、暴力というわけでは……。
 なわけあるかいっ!
「いい加減にしなさい。木の枝を折った?どこのどの木よ!そんなすぐばれる嘘に騙されるものですか!馬から落ちればいい?それは、死ねばいいって言っていることと同義よ?打ち所が悪ければ死ぬのだから。あなた方は、殺人犯ってことよ?」
 後ろの男がちょっとぎょっとした顔をする。
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