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148 まさかの選曲

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「ベスランお兄様、ではお願いいたします。どの曲で練習を始めましょうか」
 ベスランお兄様が、ピアノ奏者に声をかけて曲を伝える。
 うちくらいの家になると、専属ピアノ奏者がいます。
 なんて……いうこともなく、お母様との連日のダンス特訓用に、雇いました。3人います。ええ、3人いないと、休みが取れないんですよね……。
 っていうか、私も休みがほしいのですっ!
 と、曲が流れ始める。
「え?」
 思わず声が出る。
 他の兄たちも、驚いたようで、兄6に目を向けている。
「この曲を練習しているのか?」
 兄1が兄6に確認している。
「珍しい……知っている限り、一度もダンス大会で使われたことがなかったと思うが……」
 兄1が知っている限りということは、自分の代から、昨年までということか……それだけでもずいぶん長い間使われてなかったんだ。
「……この曲は、舞踏会ではほとんど流されることはないだろう……なぜ、ダンス大会でこんなマイナーな曲を使うんだ?」
 兄2が首を傾げた。
 確かに、この曲は……ほとんど使われないので、幼少期からダンスを学んでいる貴族でも踊れる者は少ないだろう。
「学生ならではの若々しいダンスが見たいと聞いたけれど……」
 兄7の言葉にに、兄4が悔しそうな顔をした。
「あー、俺、この曲好きなんだよな!踊りたい。いいなー!なんで今になって、これ選ぶかな。俺がいるときにやってほしかった!」
 うん。
 そうね。兄4が好きな曲だよね。
 ……テンポが速くて、とにかく……元気なイメージのダンスだ。
「僕のクラスでも、5人の代表選手のうちすでに踊れるのは3組だけだよ……だから、もう毎日猛特訓してる。僕も苦手だから、頑張らないと……」
 えー。
 なんで、Sクラスの生徒すら踊れない人がいる曲にしたんだろう?
 Sクラスにふりなことするなんて珍しい。
「お前のクラスはどうなんだ?」
 兄3が兄6に尋ねた。
「僕のクラスも同じだよ。代表5人のうち、3組がまあまあ踊れる。1組はなんとか踊れる。あと1組は特訓中」
 兄1が腕を組んだ。
「そうなってくると、Aクラスも似たようなものかな。Cクラス以下は、誰も踊れないなんてこともあるんじゃないか?そもそも指導できる先生も少ないだろう?ダンス大会で棒立ちとか……なければいいが」
 ちょっと待てよ。
 基本から丁寧にイーヤミー先生は指導してくれている。
 基本から……ってことはだ、当然、マイナー曲……マイナーダンスなんて教えてもらえるわけない。
 つまり……Fクラスはみっともないダンスを見せるとか、下手くそなダンス見せるとか以下……。棒立ちという最大の屈辱をあじあわされるってこと?に?
 それを狙っての選曲?
 ……?いやいや、Sクラスだってかなりのリスクがある。
 ……私は踊れる。サーシャは?

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