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142 Sクラスの練習風景

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 なんか、めっちゃフレッドが黒いオーラをまとって私をにらむんだけど、かつら自分でかぶって遊んだんじゃないよ。
 マージがかぶせたんだし……今も遊んでたんじゃなくて踊ってただけだし……。
 ひいー、分かりました。何も言いません、ええ、逆らうわけありませんよ。フレッド大王子様。……ぶるぶる。
「焦って猛特訓を始められたら、僕たちがいくら頑張ろうと差が縮まらなくなるというのは分かっているのか?」
 フレッドの言葉に、笑っていた生徒がぴたりと黙る。
「そ、そうだった……。他のクラスには頑張られない方がよかったんだ……」
「じゃぁ、えっと、あの二人は選手じゃないって言った方が……」
「あ、他の選手がへたくそだっていうのを見せて油断させる?」
 いろいろと生徒たちが話始める。
「ふっ」
 フレッドが笑った。
「差は縮まるよ。特訓の質は僕たちの方が高いことは間違いない」
 特訓の質?
「優秀な見本となる生徒がいる。美しい音楽が常にある。誰一人マイナスな言葉を口にすることなく、それぞれができることを懸命に努力している。僕は断言できるよ。同じ時間練習して一番向上するのは僕たちだと」
 えー、断言しちゃうの?
「分かるよ!偵察に行ったときに聞こえてきたから」
 Sクラスがどんな曲で練習しているか聞きに行った男子生徒が手を挙げた。
「痛いわね!下手くそ!とか私のパートナーを務めるのですから、もっと練習してくださいませしとか、俺と踊りたければあと2センチ高い靴を履けとか……代表の座はすぐに私が奪って見せますわとか、あなたはダンスはうまいけれど、その顔じゃぁとか、1人で練習したほうがましだとか、疲れたもうやめるとか……」
 言いそう。
 言いそうっていうか、言ってたのかぁ。
 まぁ、確かに、そんな練習するよりは……。
「わ、私……代表選手としては一番へたっぴだけど、でも……あの、頑張るから、リザーク君、ダメなところ教えてくれる?あと、家でどうやって練習したらいいのか、何か方法があれば教えてほしいの……」
 ルリアちゃんがうるうると目を潤ませて私の顔を見た。
 かわいいなぁ。純粋で。
 ルリアちゃんは、私と同じくらいの背丈で薄茶交じりの金髪でそばかすがキュートな豪商の子だったよね。
 ダンスは、取引先が催す内輪のパーティーみたいな場に招かれたときのためにと練習させられていたらしい。時々、貧乏貴族が、お金のために貴族じゃない金持ちと結婚することがあるんだけど、お金のために結婚しますだとあからさますぎるので、ダンスパーティで運命の出会いをしました……を演出するためだって聞いて……なんだか大変だなぁと思った。
 流石に、男爵家あたりだと、わざわざ庶民の子を他の貴族の養子にして体裁を整えるところまではしないから、その分、そういう「好きになったら仕方がない」みたいな演出に凝るんだとか。

=========
だが、同じSクラスでも、完璧なるまとめ役がいれば、そこまで荒れない。
兄6のクラスと兄7のクラスは大丈夫。

公爵家子息に不快な思いをさせるわけにはいかないと皆が気を張っているのである。
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