月の光で悪役令嬢～陽の光で八男 あ、王子、近寄らないでくれます？

128 邪魔者は、

　あ、あれ？あれ？
　フレッドが怖い顔をする。
「排除……が一番早いだろう、誰かの養女になる前に……」
　フレッドがしゅっと自分の首元で手を動かす。
　ひぃー。クビ切りっ。
　え、大人、怖いっ！
　庶民の一人や二人、さっさと殺してしまえ的な考えですか。……たぶん実際にそうしちゃう人もいるんだろうな。ああああ。
「まー、そんなことしたらフレッドの怒りを買うだけだろうからしないとしても……」
　マージが軽い口調で口を開く。
　いやいや、まぁ、そうだけど。でも、たぶん、大人の世界って子供が思うよりも汚いと思うよ……。病死に見せかけて毒を盛るくらいしそうだよ。
「フレッドと距離を置かせるために学園を追い出されるとか、フレッドと婚約する前に別の男をあてがうとか、それくらいはするだろうなぁ」
　はい。危なくなったら、学校辞めて逃げます。
　誰かフラグが経たない攻略対象と幸せに暮らします。
　……マージ、もしかしてお前、攻略対象外だよな？……いやいや、マージはない。マルヴェルは？幼馴染ポジションだけど、攻略対象じゃなかったよね？……今どうしてるか分からないけど。うーん、……。って、隠れキャラとか隠しキャラとかそういうんだと怖いから、やっぱだめだ。怖い怖い。
「どうしたらいいんだ……」
　フレッドが落ち込んでいる。
「とりあえず、好きな子がいるなんて誰にも悟られないように気を付けるのが一番で、力をつけて、周りの策略を跳ね返せるようになってから動いたらどうかな？」
「力を？」
「えーっと、例えば第一王子の近衛騎士になってから？王座を狙ってませんと分かりやすい立場になってからとか？」
「あれだ。信用置ける人のところの養女にする準備が済んでからとかじゃないか？もうすでに決まっていれば利用しようと養女にするとかできないじゃん？」
　マージもいろいろ考えてフレッドにアドバイスをしている。
「とにかく、フレッド、学園に好きな子がいると、誰にも悟られないように、な？」
　天使天使と言いふらすな！ただそれだけだ！
　そして、逃げ切る。王子の天使は誰だ？みんなで探そうイベントとかもう、死ぬし。
「……わかった。ありがとう、リザーク、マージ」
　よしよし。
「天使……僕たちのことは、皆には秘密……いいね。秘密という言葉も素敵だ」
　フレッドがバッジに話しかけてる。
　あかん。見なかったことにしよう。


　教室に戻ると、空前の天使ブームが待っていた。
「あ、ありましたわ！３日前になくしたと思っていたペンが！新しいのを買えばいいと思っていましたが、私の元に天使が届けてくれました！きっといいことが起きますわ！」
「おー、俺もそういえば、まぁいいかと思ってたやつ、探してくるっ！」
　……。
　いや、単純というか、素直というか。私の作り話信じてくれたようで……何よりなのですが……。
　ちょっとだけ、ごめん。


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王子は残念な子です……。
クラスの子は素直な子です