上 下
87 / 159

86 リザークの剣術教室、生徒はサーシャ、やじうまはあいつら

しおりを挟む
「だろ?リザークは騎士にあこがれてるって、俺の思った通りだ」
 どや顔のマージ。おい、どや顔で知ったかぶってるけど、私は騎士にこれっぽっちもあこがれなんて持ってない。いや、立派な人達だと尊敬はしてるけどな。
「お願いします。リザーク、今の剣術を私に教えてくださいませ」
 サーシャがさらに頭を深々と下げた。
「私……本当は、少しだけ騎士になるのは無理なんじゃないかってあきらめかけてたんです。だけど、やっぱり、諦められない」
 サーシャが顔を上げる。
 まっすぐな瞳が、私の目を見ている。
「絶対、約束を守って……一緒に……」
 強い意志を感じる瞳。
 誰かと一緒に騎士になろうって約束したのかな。それとも、亡くなった祖母との約束みたいなやつかな。どちらにしても、相当な決意を感じる。
「もちろん、ボクに教えられることは教えるよ。ただ、ボクも完全に身に着けているわけじゃない。何度も何度も見て、見よう見まねでしているだけだから、うまく教えられるかも分からない。とりあえず、もう一度やってみせるよ」
 といって、木刀を構える。
「マージ」
「え?俺?いや、またやられ役?」
 マージがげんなりした。
「いや。もう、ボクの手の内は明かしただろ?回避できるように工夫して打ってきていいから」
「おう、そうだな。いつまでもやられっぱなしにならねぇからな!」
 すまん。マージ、ぼこぼこにしちゃいました。
「うええええっ」
「泣くな、マージ、だんだんやりにくくなってる。確実に成長してる。たった1時間余りでこの成長はすごい!」
 マージが涙をぬぐう。
「だよな、俺、すげーよな!よし、次こそ!」
 いなす。
 そして、背中にぽこん。
「ちょっとやってみる?」
「はい。マージ、よろしくお願いしますわ」
 サーシャに代わる。
 サーシャが、私の動作を繰り返し見ていたので、マージが動くタイミングに合わせて木刀を動かす。
 が、やはり見ただけで再現できるわけもなく……。
「えーっと、サーシャ、ごめん。説明もうまくできないけど、今度はボクに打ち込んでみて」
 サーシャの木刀が私に向けられる。うわーい。早い。
 マージより早いよ。ちょ、合わせられない。
 1回除ける。
「あ、よけた」
 マージの声。
「レディーファーストとかそういうつもりでしたら、遠慮はいりませんわ!」
 サーシャがむっとしてもう一度木刀を振る。
「いや、違う、マージよりも剣筋が読みにくくてタイミングが……」
 サーシャの剣を受けて、距離を取る。
「うええええっ」
 マージ、泣くな。
「だけど、マージほど剣圧がない。受けるのは簡単だ」
 マージが復活してる。もう、外野、うるさいっ!フレッドは、そんなマージを見て腹を抱えて笑ってるし。
「ボクの剣も軽いよ」
 今度はサーシャにフェイトを一つ入れて木刀を振り下ろす。
 もちろん、フェイントには引っかからずに、サーシャは私の木刀を受けた。
 まぁ、避けずに受けてもらうためのフェイントだからね。
「今のが、ボクの剣の重さ。じゃぁ、サーシャもう一度打ち込んでみて、できればまっすぐお願いできる?」
 サーシャの剣筋難しいからリクエストすれば、その通りに打ち込んでくれた。はい。これならいなせる。
「!」
 剣をいなした途端に、サーシャが驚いた顔で振り向く。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?

tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」 「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」 子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

婚約者の心の声が聞こえるようになったが手遅れだった

神々廻
恋愛
《めんどー、何その嫌そうな顔。うっざ》 「殿下、ご機嫌麗しゅうございます」 婚約者の声が聞こえるようになったら.........婚約者に罵倒されてた.....怖い。 全3話完結

謝罪のあと

基本二度寝
恋愛
王太子の婚約破棄騒動は、男爵令嬢の魅了魔法の発覚で終わりを告げた。 王族は揃いも揃って魅了魔法に操られていた。 公にできる話ではない。 下手をすれば、国が乗っ取られていたかもしれない。 男爵令嬢が執着したのが、王族の地位でも、金でもなく王太子個人だったからまだよかった。 愚かな王太子の姿を目の当たりにしていた自国の貴族には、口外せぬように箝口令を敷いた。 他国には、魅了にかかった事実は知られていない。 大きな被害はなかった。 いや、大きな被害を受けた令嬢はいた。 王太子の元婚約者だった、公爵令嬢だ。

おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 サロン勤めで拘束時間は長く、休みもなかなか取れずに働きに働いた結果。 貯金残高はビックリするほど貯まってたけど、使う時間もないまま転生してた。 そして通勤の電車の中で暇つぶしに、ちょろーっとだけ遊んでいた乙女ゲームの世界に転生したっぽい? あんまり内容覚えてないけど… 悪役令嬢がムチムチしてたのだけは許せなかった! さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドを堪能してくださいませ? ******************** 初投稿です。 転生侍女シリーズ第一弾。 短編全4話で、投稿予約済みです。

逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ

朝霞 花純@電子書籍化決定
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。 理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。 逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。 エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。

深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~

白金ひよこ
恋愛
 熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!  しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!  物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?

処理中です...