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61 く〇ん式……伏字。

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「でーきたっ!」
 マージが持ってきた。全問正解。
「へへ、どうだ。これで、俺が本当に計算速くてよくできるの分かっただろう!」
 誰に向かっての主張なのか。ってか速い?いやいや、ずいぶんゆっくりと……。
 え?
 他の子の様子を見る。
 ……おっそ!
 めちゃめちゃ遅い!
 なんだよ、この遅さ……。って、
 指かっ!指使って計算してるじゃないかっ!ここは、小学校1年生の教室かよっ!ってか、2年生になると、机の上じゃなくて、机の下で指をこっそり使うんだぞ?それくらい、2年生になるころには、もうみんな指を使わなくて……。
 あ、あの子指つかってな……って、指の代わりになんか点とか書いて数えてるっ。
 あっかん、何、これで、小学部卒業できたな!
「はい。できました」
 一人の女の子が紙を持ってきた。
「結構速いね」
 フレッドに声をかけられた子は、少し照れたように笑う。
「うちは、商店なので計算は叩きこまれてるんです」
 はい?
 叩き込まれて、このスピード?
 いや、そんでもって、このスピードで速い?
「なめとんかぁーーーっ!文章題だろうがなんだろうが、すべての基本になる計算がこんなに遅くては話しにならんーっ!」
 そういう子は、塾だよ。塾に通わせねばならぬ。く〇ん式だ。同じ計算繰り返させるんだよっ。そろばんでもいい。
 いや、違う、最近は小学校でも使われるじゃないかっ。
「ちょ、いきなりどうしたリザーク」
 二けたとか三桁とかの足し算引き算なんてちんたらやってる場合じゃない。もっと基礎を固めないと話にならない。
「フレッド、一桁の足し算の問題出して。私とマージとサーシャが、答えるから。誰が一番早くこたえられるか競争ね!」
「え?いいですけれど、私、計算は得意ですわよ?」
「俺も、一桁なんて楽勝すぎるぞ?」
 クラスメイトの皆が手を止めて注目する。
「じゃぁ、問題出すね。5+8」
「13」
 !
 問題が言い終わるのとほぼ同時に答える私。
「え?あ、本当だわ。13で合ってますわ」
「次、7+9」「16」
 めちゃ食い気味に答えを言う私。
「は、速っ。おい、リザーク、お前すげぇな、なんだよ、その特技!」
「特技じゃないっ。こんなの誰だってできるようになる。計算するんじゃないんだよっ。1+1から9+9は、どちらかと言えば答えを覚えるんだ。ボクの顔を見るとリザークという名前が出てくるように、8+8を見ると、16という数字が思い浮かぶように、覚える。いちいち計算なんていらないっ」
 九九を覚えるのと一緒だ。ただ、九九みたいに便利な覚え方がないだけで。
「覚える?あ、そういえば……3+3くらいまでは私もそういう感覚かも……」
 一人が口を開く。
「どうやって覚えるんだよ?」
「そんなの、繰り返し繰り返し問題解くしかないよっ!ってことで、く〇ん式!と行きたいところだけど……都合よくプリントないし」
 あれは大量のプリントがいる。
「簡単に大量に足し算の問題を作って計算練習をすると言えば……」
 紙に線をじゃっ、じゃっ、じゃっと引く。縦と横に6本。それから数字を左側と上側のマスに書く。
「100マス計算だっ!」
 いや、100マスないけどね。指使ってる人間にいきなりの100マスは厳しかろう……。
「縦と横の数字が交わっているところに、その二つの数字を足した数字を書いていく。ひたすら足し算の練習をするためのものだよ」
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