上 下
50 / 159

49 もうすぐ出番だよ

しおりを挟む
 あれは痛そうだ。だけれど、包帯を巻いた手で剣を振る姿は美しさにかけると、痛いのを我慢して剣を握っていたのだろう。
 フレッドが悔しそうに奥歯を強くかみしめる。
 ああ、黒い煙が。フレッドの口から漏れた言葉が耳に届く。
「腐ってる……絶対に、許さない」
 へ?
 いや、今は何もオタクっぽい腐ったこと考えてないですよっ。許さないって、ひぃ、誰をですか!
 私じゃないよね?
 っていうか、第二王子(発狂死)に許さないなんて言わせるなんて、死にますよ!今すぐ逃げたほうがいいですよ、誰かわかりませんが……。

「皆さん頑張りましたよ!」 ソフィア先生がパンパンと両手を打ち鳴らした。
「3種目までが終わり、1年生は、Sクラスが18点で1位、2位は16点でAクラス。3位が13点のBクラスで、4位が12点のCクラス」
 なんだか気が付けば、上のクラスから順に1位2位3位4位になってる。
「それから、5位は11点の我がFクラスです。なんと、Dクラスとは4点差、Eクラスとは6点も差がついてます!」
 ソフィア先生が、型の選手たちの落ち込んだ気持ちを回復させようと、務めて明るい声を出した。
「つまり、最後の種目で、Eクラスが1回戦を勝たない限り、最下位脱出は難しいでしょう」
 クラスメイトの顔が明るくなった。
 Eクラスに勝ったも同然ということを告げられたのだ。
「だけど、Eクラスが1回戦を勝ったらどうなるんだ?」
 おい、マージ、水をさすなぁ!
 一気に、せっかく盛り上がったクラスメイトが沈む。
「ぼ、僕も1回戦に勝てば、Eクラスに負けることはないよっ」
 にこっとほほ笑んだ。
 そのとたん、クラスメイトの顔が心配そうな表情になる。
「リザーク、無理はするなよ」
「そうよ。例えリザークが負けたって、リザークが頑張ってくれたの、知ってるからね?」
「そうですわ。相手は4Cのブランカだったんですもの」
 戦う前から、負けた想定で慰めモードだ。
 それも、全力で。
 うん、マージは名前の書き忘れとトイレでクラス分けテスト最下位だったし、フレッドは難しい問題から挑戦して時間切れの下から3番目だとみんな知ってる。
 で、僕はといえば……。全力で下から2番目。
 つまり圧倒的にクラスで最下位だと思われてるからだよね……。
 1回戦勝てるように頑張るけど……。謎のマスク男を思い出す。そして、成果が出なかった兄たちとの特訓を思い出す。
「……勝てなかったらごめんね……」
 兄たちは、対戦相手のビアンカ……じゃないや、ブランカは弱いと言っていた。
 だから、勝てると思うんだけど……ただの兄の欲目の可能性もあるし、勝負に絶対はない。
「大丈夫だから、気にするな」
「そうだよ、相手は常勝ブランカだよ」
 じょーしょー?上昇?ジャンプして剣を除けたりするのかな?
「それより、無理しないで、ブランカは相手が弱くても降参しない限り全力で向かってくるから」
 相手が弱くても全力で?それは試合だし、弱いと侮って力を抜くなんて油断する人のが駄目じゃないのかな?
「勝てないと思ったら、降参すればいいから」
 降参?そういえば、なんか降参するときのポーズをフレッドに教えてもらったような気が?なんだったっけ?忘れちゃった。
しおりを挟む
感想 229

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

えっ、これってバッドエンドですか!?

黄昏くれの
恋愛
ここはプラッツェン王立学園。 卒業パーティというめでたい日に突然王子による婚約破棄が宣言される。 あれ、なんだかこれ見覚えがあるような。もしかしてオレ、乙女ゲームの攻略対象の一人になってる!? しかし悪役令嬢も後ろで庇われている少女もなんだが様子がおかしくて・・・? よくある転生、婚約破棄モノ、単発です。

【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!

春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前! さて、どうやって切り抜けようか? (全6話で完結) ※一般的なざまぁではありません ※他サイト様にも掲載中

逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ

朝霞 花純@電子書籍化決定
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。 理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。 逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。 エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。

お嬢様たちは、過激に世界を回していく。

ラディ
恋愛
 貴族令嬢に聖女や王妃や魔女に至るまで。  恋だの愛だの、一時の気の迷いのような感情で彼女たちは。  時に逆境を乗り越え。  時に破滅に向かい。  時に成長し。  時に狂い咲き。  それらは少しずつ重なって混ざり、繋がり広がり。  時に世界を動かす。  数珠繋ぎで繰り広げるドタバタ逆境愛情色恋活劇。  どうぞよしなに。 ■完結しました! よろしければお気に入り登録などしてごゆるりとお読みください。 ■数珠繋ぎオムニバス形式の話になります。基本的に一話完結ごとに主人公が変わりますが各話少しずつ話が繋がっています。 ■感想コメントなどはお気軽にどうぞ! ■同一世界観で『虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。』という長編作品を別で執筆中です。よろしければ登録コンテンツから是非に。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

処理中です...