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20 本気を出せよっ――ごめん

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「はい、終了!数えてた?」
 ソフィア先生に言われて、補給班部門が数を答えた。
 もう働いているのか。補給班……。
「1番は、マージ君で、108個のレンガを割りました」
 うわー、すげぇ。
 それから、2番、3番と名前が上がり……。
 おや?私の名前は?
「最後はリザーク君です。レンガの数は40個です」
 最期?あれ?ってことは……打撃部門じゃなくて、私、一人、何に出場することになるの?
「おい、リザーク、お前本気出したのか?」
 マージが怖い顔をして私の顔を見た。
 ……出してない。いや、さぼってもいないけど……。
「なんで、そんな涼しい顔してるんだよ。もっと本気出せよっ。俺ですら、腕がしびれてるんだぞ?」
 マージが私の胸倉をつかんだ。
「ま、待ってください、リザーク君はさぼってたわけでなくて、ちょっと変わった方法で剣を振っていたので時間がかかっただけだと思いますっ」
 補給班の一人がマージの暴走を止めてくれた。
「変わった方法?」
「はい。なんか、こうしてレンガを積んでから割っていました」
 別の補給班の子が、僕がしていたように、レンガを間をあけ左右に二つ並べ、その上に割るためのレンガを2つ重ねておいた。
「なんだ?どうしてそんな無駄なことに時間をかけた?」
 マージが眉根を寄せる。
「腕が痛かったから、こうすると腕が痛くならないんだよ」
 勝負に腕が痛くなるからいやだとか甘いことを抜かすなと言われるかなと思ったら、マジか?という顔をしてマージが木刀を振り下ろした。
「な……まじか!本当に腕が痛くなぞ?」
 マージが、土台のレンガの上に今度は3つ積み上げた。
「ふんっ」
 木刀を振り下ろす。
「3つでも楽勝じゃねーかよっ、ってことは……」
 マージが嬉しそうにレンガを5つ積み上げる。
「俺の今までの記録は最高4つだ。これなら5つもいけそうだ!」
 マージが振り下ろしたレンガは見事に5つを割っている。
「お、おおおおっ!」
「僕もやってみるよっ!」
 打撃班2位の子がレンガを6つ積み上げた。
 ええ、ちょっと、マージに喧嘩を売るような数……。
「やった!」
 割れました。6つ。
「は?負けるかよっ!」
 マージが7個積み上げた。が、土台が悪かったのか、積み重ね方が悪かったのがぐらりと揺れてレンガが落ちた。
「こっちに積んだよ、7個!」
 いつの間にか補給班が、土台を組んで上にレンガを積み上げている。
「おう、サンキュー」
 気が付けば、みんなでレンガ割り大会が始まっている。
「止めなくていいんでしょうか……」
 立ち尽くしてその様子を見ていたソフィア先生に声をかける。
「ふむ、補給班の支援があれば、積み上げることで発生する時間ロスは解決できるわけか。剣を握る者の支援として、レンガの積み上げは問題ないだろう……」
 え?そうなの?
「うっひょーっ!最高だぜ!リザーク、さっきはごめんなぁ。本気出してないとか思って!」
 マージががしっと、抱き着いてきた。
 暑苦しい男だぜ、お前は……。だが、嫌いじゃないよ。素直に謝れるところとか。
 ……でも、私、本気は出してなかったんだよ。ごめん……。
「ボクこそ、ごめん……」
 悪役令嬢になりたくないから、本気が出せないとか、勝手で、ごめん。
 うつむいた私の背中を、マージがバンバンと叩いた。
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