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犯人?
その言葉にとっさに動いたのはロアさんだ。
逃げてきたガタイのいい男の前に出た。
「どけっ!」
腕を振り上げて殴りかかろうとする男の手を素早くつかむと、あっという間に後ろにねじり上げて地面に倒してしまった。
「離せっ!離せって!」
暴れる男の上に座り、ロアさんが抑え込む。
「このよそ者が犯人だ。井戸を勝手に使って蓋を開けたままにしてたんだ」
「こいつのせいで……」
後を追いかけてきた男たちが怒りに顔をゆがませている。
おじさんが男をにらんでいる。
「なんでそんなことを……水をくれと頼めば、少しくらい分けてやったのに……」
その言葉に、つかまっていた男がハッとして暴れるのを辞めた。
「す、すまなかった……。何度も宿場町で断られ……喉が渇いてどうしようもなく……」
犯人の謝罪にも、村人の怒りは収まらない。
「どうしようもなくだと?知るかよ、お前がしたことが許されるとでも思っているのかっ!」
「そうだ!村の唯一の井戸をダメにしたんだぞ!」
今にもロアさんに押さえつけられている犯人に殴りかかろうとする男たち。
ロアさんは村人を手で制して犯人に尋ねた。
「僕たちも宿場町のソイナ村で毒蛙の被害が出て水がもらえなかったけれど、何度も断られたというのはどういうことですか?他の宿場町でも毒蛙の被害が出ているのですか?」
犯人が驚いた顔をしている。
「ソイナ村って、ここよりも王都に近い宿場町だろう、俺は南から来たんだ。王都に近づくにつれて被害の声をちらほら聞き始め、ここに近い宿場町は3か所続けて被害が出ている」
「そんなにか……!」
ロアさんが驚きの声を上げた。
「王都に近づくにつれて被害がって言ってたな、じゃあ、王都も大変なことになっているのか?」
大変なことが起きていると感じた村人が怒りを静めた。
「王都ではそんなことはなかったですけど……」
首を傾げる。
「じゃあ、王都のやつらだけ、浄化草を使ってるってことか!」
「俺たち村人は水が飲めなくて死ねということか!」
再び村人が怒りだす。
犯人の上からロアはいつの間にか降りていた。
「本当にすまなかった……これ、少ないが浄化草を買うか水を買うお金の足しにしてくれ……」
犯人が再び丁寧に頭を下げてお金を村人に手渡す。
日本円にして3万円くらいと、結構な額だ。いや、しでかしたことに対しては微々たるものなのかな?
村人が頷く。
「浄化草を買いに王都へ急ごう。村の金をかき集めればなんとかなる」
あわただしく村人が村へ帰って行った。
おじさんが私とロアに頭を下げる。
「すまなかったね、水を分けて上げられなくて……」
【ねぇ、王都で被害が全くないのって不自然じゃない?】
もしかして、浄化魔法かな?
【汚い水は飲みたくない、得たいがしれない井戸水はいやだぁ、浄水器が欲しい!ちょっと水を浄化して!って、私が言ったから】
ずっと水を浄化する魔法使ってたもんね……。まさか王都中に効果があったのかな?
【毒蛙の噂一つ聞かなかったってそう言うことじゃない?学園ではいろいろな人が来てたし、噂好きの使用人と接する機会も多かったのに聞いたことがなかったし】
でも、私が浄化してたのって、私が飲む水に関係する場所の井戸……だけじゃなかったね、そう言えば。
「クスクス、聖女様、特別な水をご用意いたしましたわ」
「ばか、笑うなって、気が付かれちまうだろう」
「貧民街の井戸の水だって」
「何が入ってるか分からない汚い水、よくそんなもんとって来たなぁ」
「小汚い餓鬼に金を渡したらすぐに持ってきてくれたよ」
「クスクス、さぁ、聖女様どうぞ、お飲みください」
「お腹壊しちゃうんじゃないか?」
「いや、聖女なら浄化しろって話だろう?」
なんてことがあったから、どこの水をもってこられてもいいように、王都の井戸浄化とか魔法使ってたわ、確かに。
=============
王都大丈夫かしら?
その言葉にとっさに動いたのはロアさんだ。
逃げてきたガタイのいい男の前に出た。
「どけっ!」
腕を振り上げて殴りかかろうとする男の手を素早くつかむと、あっという間に後ろにねじり上げて地面に倒してしまった。
「離せっ!離せって!」
暴れる男の上に座り、ロアさんが抑え込む。
「このよそ者が犯人だ。井戸を勝手に使って蓋を開けたままにしてたんだ」
「こいつのせいで……」
後を追いかけてきた男たちが怒りに顔をゆがませている。
おじさんが男をにらんでいる。
「なんでそんなことを……水をくれと頼めば、少しくらい分けてやったのに……」
その言葉に、つかまっていた男がハッとして暴れるのを辞めた。
「す、すまなかった……。何度も宿場町で断られ……喉が渇いてどうしようもなく……」
犯人の謝罪にも、村人の怒りは収まらない。
「どうしようもなくだと?知るかよ、お前がしたことが許されるとでも思っているのかっ!」
「そうだ!村の唯一の井戸をダメにしたんだぞ!」
今にもロアさんに押さえつけられている犯人に殴りかかろうとする男たち。
ロアさんは村人を手で制して犯人に尋ねた。
「僕たちも宿場町のソイナ村で毒蛙の被害が出て水がもらえなかったけれど、何度も断られたというのはどういうことですか?他の宿場町でも毒蛙の被害が出ているのですか?」
犯人が驚いた顔をしている。
「ソイナ村って、ここよりも王都に近い宿場町だろう、俺は南から来たんだ。王都に近づくにつれて被害の声をちらほら聞き始め、ここに近い宿場町は3か所続けて被害が出ている」
「そんなにか……!」
ロアさんが驚きの声を上げた。
「王都に近づくにつれて被害がって言ってたな、じゃあ、王都も大変なことになっているのか?」
大変なことが起きていると感じた村人が怒りを静めた。
「王都ではそんなことはなかったですけど……」
首を傾げる。
「じゃあ、王都のやつらだけ、浄化草を使ってるってことか!」
「俺たち村人は水が飲めなくて死ねということか!」
再び村人が怒りだす。
犯人の上からロアはいつの間にか降りていた。
「本当にすまなかった……これ、少ないが浄化草を買うか水を買うお金の足しにしてくれ……」
犯人が再び丁寧に頭を下げてお金を村人に手渡す。
日本円にして3万円くらいと、結構な額だ。いや、しでかしたことに対しては微々たるものなのかな?
村人が頷く。
「浄化草を買いに王都へ急ごう。村の金をかき集めればなんとかなる」
あわただしく村人が村へ帰って行った。
おじさんが私とロアに頭を下げる。
「すまなかったね、水を分けて上げられなくて……」
【ねぇ、王都で被害が全くないのって不自然じゃない?】
もしかして、浄化魔法かな?
【汚い水は飲みたくない、得たいがしれない井戸水はいやだぁ、浄水器が欲しい!ちょっと水を浄化して!って、私が言ったから】
ずっと水を浄化する魔法使ってたもんね……。まさか王都中に効果があったのかな?
【毒蛙の噂一つ聞かなかったってそう言うことじゃない?学園ではいろいろな人が来てたし、噂好きの使用人と接する機会も多かったのに聞いたことがなかったし】
でも、私が浄化してたのって、私が飲む水に関係する場所の井戸……だけじゃなかったね、そう言えば。
「クスクス、聖女様、特別な水をご用意いたしましたわ」
「ばか、笑うなって、気が付かれちまうだろう」
「貧民街の井戸の水だって」
「何が入ってるか分からない汚い水、よくそんなもんとって来たなぁ」
「小汚い餓鬼に金を渡したらすぐに持ってきてくれたよ」
「クスクス、さぁ、聖女様どうぞ、お飲みください」
「お腹壊しちゃうんじゃないか?」
「いや、聖女なら浄化しろって話だろう?」
なんてことがあったから、どこの水をもってこられてもいいように、王都の井戸浄化とか魔法使ってたわ、確かに。
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王都大丈夫かしら?
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