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どしゅん
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『古臭い帽子をいつまでもかぶっているが、禿隠しだろうと』
ディラがニコニコ笑顔で、噂をノームおじいちゃんに話している。
……あほの子ですか、ディラ……。
300年の間に人との会話というものの作法だとか空気を読むとか忘れちゃったのか、もともと備わっていなかったのか……。
ぐらりと、小さく地面が揺れた。
うひーぃ!
今のでディラも失言に気が付いたのか、慌てて言い訳を口にし始めた。
『あ、あの、僕はそう聞いただけで、全然古臭いと思いませんし、お似合いです、あの、えーっと』
『その噂は誰が流した噂じゃ』
『……えーっと』
ディラが目をそらして、こっちを見た。
助けを求める目をされても、困るんだけど!
誰が噂してたって怒りの矛先を自分からそらすために友達を売るような真似はできないと思って困っているのかもしれないけれど、300年前の人だから、大丈夫……でしょとは思ったけれど。
『シ、シーマから、その、聞いただけで、誰がもともと言っていたかは……し、知らないというか……』
ディラの目が泳いでる。
『ん?シーマ?どこかで聞いたことがある名じゃな……どこだったかの。最近聞いたような気が……』
ディラの目が泳いでいるのには気が付かず、ノームおじいちゃんが首を傾げた。
よかったね、ちょっと怒りの矛先がそれたみたいだよ。
『最近?シーマは魔族との最終決戦からそのあとどうなったか知らないけれど、ノーム様はご存じで?』
『むむ、そうじゃ!最終決戦じゃ!最近の話なはずじゃ。シーマとは、魔族との最終決戦のときにサラマンダーと契約していた人間の名じゃないのか……ってことは、ワシの帽子が古臭いと言ったのは、サラマンダーのやつか……』
うわー、うわー、突っ込みどころが多すぎて、ちょっと待って。
まず、ディラ、せっかくのノームおじいちゃんの怒りの矛先回避を蒸し返すようなことしてどうする!
それから、最近が、魔族との最終決戦の時?ディラが言うには300年前……それも怪しいけど、とにかくすごく昔なんだけど!精霊時間だと最近なの?
それからサラマンダーって何?私の認識だと、火のトカゲだよね。トカゲ。
トカゲと契約って何?
『ぐぬぬ、あいつは今どこで何をしておるんじゃ、ずいぶん長いこと会っていないが……。会ったらお前の真っ赤なマントの趣味の悪さは古臭いよりずっと最悪だと言ってやるんじゃっ』
……。精霊……って、えーっと。妖精王だとも言ってなかった?
仮にも王様と名の付く人が、お前の帽子は古臭い、お前のマントこそ趣味が悪い……みたいな子供の喧嘩みたいな……。
==========
見た目は小さいおじいちゃん、心は子供。
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うひーぃ!
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