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諦めていること

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「魔法が使えないからと、諦めていることはなんですか?」
 私の質問におばばが糸のような目を見開く。
「そうじゃな……」
 おばばが考え込んでしまった。
「魔法が使えたら、夜でも昼間みたいに明るいんだろ?」
 黙り込んでしまったおばばの代わりに、ドンタ君が口を開く。
 電気があれば、魔法なんてなくたって明るくなる。けれど、今の私はエジソンじゃないから電球は作れないんだ。ごめん。
 でもね、魔法が使えなくたって、叶うことなんだよ?
『光の魔石を使えばいいんだよ』
 ディラがモモちゃんの頭を撫でている。
「ん?」
 撫でられた2歳児モモちゃんがが上を見上げる。何かを感じ取ったのかもしれない。小さな子は霊が見えるともいうし。霊感がちょこっとあるのかもしれない。
「空も飛べるんだよな!」
 ……ごめん。それも無理かな。ライト兄弟じゃないから飛行機も作れないや。だけどね、魔法使えなくたって空は飛べる。今なら有人ドローンなんてのも開発されつつあって、飛行機よりももっと人は空を自由に飛び回れる日も近いんだよ。
『風の魔石で飛べるよ!』
 ディラがニコニコしてドンタ君にこたえている。
 300年間一人で寂しかったから、人がたくさんいることた嬉しいのか、それとも前から単に子供好きなのか。
「いーっぱいの荷物を運んだりもできるんだよな!」
 貨物列車か貨物トラックか。それとも、もっと大きなもの?
「ねぇ、おばば、魔法を使えば、こっから街まで1日で着いちゃうんだよな?」
 ん?
 歩いて2日だった。自転車なら1日、自動車なら数時間もあれば到着しちゃわないかな?魔法を使っても1日かかるの?車のが優秀じゃないか。
 魔法っていうと、一瞬で移動できるイメージがあるんだけれど。転移魔法っていうんだっけ?そうじゃないんだ。
 車どころか馬でも勝てそうだよね。
 もしかして、いっぱいの荷物を運ぶって、10トントラックほども運べなかったり?
 まぁ、どちらにしても豊田さんじゃないし、車は作れないんだけどさ。
 でも、馬や荷馬車が変われる程度の魔法なら……魔法が使えなくたって十分だよね?
 しかし、困った。魔法が使えなくてもできることはあると豪語したものの、電気も飛行機も車も私にはどうにもできない。
『まぁそうだなぁ、賢者レベルにならないと転移魔法使えないからそんなもんか』
 転移魔法?!やっぱりあるのか!そりゃ、転移魔法なら魔法の圧勝だよ!すごい!
 思わず勢いよく首を回してディラを見る。
 ……あ、私、召喚されたけれど、それも異世界から転移させられたってことじゃない?……賢者レベルじゃないと使えない?
 じゃぁ、王都には賢者レベルの魔法使いがいるってこと?その人なら……私を日本に帰してもらえる?
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