64 / 187
プレゼントをしたい
しおりを挟む
「表情が豊かになったわね。新しいことに気が付かせてくれて、こんなに楽しそうに話をしてくれる。いいお友達ができてよかったわね」
メイの言葉に、大きく頷く。
うん。いい友達ができたの。
本当は、もっともっとエミリーのことを聞いてほしい。
だけれど……秘密があるから。私たちの関係は秘密だから……。
自由に会うこともできない。
悲しくなって、涙がこぼれそうになる。
だめ。メイに心配をかけてしまう。どうしたのと尋ねられたって、教えられないんだから、心配させるわけにはいかない。
「かわいいのも確かだけれど、やっぱりおいしそうだって思うのも本当よ!じゃぁ、早速いただくわね!」
務めて明るい声を出し、お菓子を口に運ぶ。メイは、ちょうど飲み頃になったお茶をティーカップに注いでくれた。
「そういえば、花茶をご馳走になったのよ」
何をしていても思い出すのはエミリーのことばかりだ。
「へぇ、そうなんですね。今度用意いたしましょうか?」
注がれたばかりの紅茶の表面が揺れているのを見る。
ゆらゆらと、私の顔が映っている。
私、一人の顔が映っている。
「……いいえ……必要ないわ……メイがいつも美味しく入れてくれるお茶で満足してるの」
顔をあげ、メイにお礼を言う。
「いつも、ありがとう」
「どういたしまして」
一人で飲んでもきっと幸せな気持ちにはならない。
花茶の開いていく花びらを一緒に見る人がいなければ。
エイミーと一緒でなければ。
「そういえば……」
お菓子もすっかり食べ終わり、2杯目のお茶を飲んでいる時には心も落ち着いていた。
そして、数日すっかりエイミーとの思い出に浸って何も手につかなかったけれど。
特別に用意してくれたというお菓子に、花茶。
ハンカチのお礼だと言っていたけれど……。お礼のお礼はおかしいかな?
お菓子のお礼がしたい。
また、何かエミリーにプレゼントしたい。ブーケ・ド・コサージュの別のものにしようかしら?
でも、まだきっとあまり広まってないのに、いくつもすでに男性用のコサージュを持っていても不審がられちゃうかな?
今度は違うものにしよう。
何がいいかな。
「リリーシャンヌお嬢様、この後は何をなさいます?」
「んー、そうね……」
考え事をしたい。エミリーにプレゼントするものを考えたいの。
「じゃぁ、刺繍でもしようかしら?」
メイに答えると、すぐに刺繍をするための裁縫道具が用意された。
先月から刺し始め、途中になっている刺繍だ。
針を取り、布に突き立て針の先を出して抜き出す。時折針に糸をくるりと巻いて抜き出し、模様を作っていく。
すでに図案は書き写してあるし、ひたすら布地を埋めて行く単純作業だ。
こういう単純作業は、考え事をしているときにはちょうどいい。
=====================
あー、私は編み物とか刺繍はダメ。
裁縫はいい。ミシンでがががと縫う系はいい。
なんというか、作り始めてから作り終わるまでが、「その日のうち」のものはいい。
次の日に持ち越しになるやつは、飽きちゃうので完成しない……。
メイの言葉に、大きく頷く。
うん。いい友達ができたの。
本当は、もっともっとエミリーのことを聞いてほしい。
だけれど……秘密があるから。私たちの関係は秘密だから……。
自由に会うこともできない。
悲しくなって、涙がこぼれそうになる。
だめ。メイに心配をかけてしまう。どうしたのと尋ねられたって、教えられないんだから、心配させるわけにはいかない。
「かわいいのも確かだけれど、やっぱりおいしそうだって思うのも本当よ!じゃぁ、早速いただくわね!」
務めて明るい声を出し、お菓子を口に運ぶ。メイは、ちょうど飲み頃になったお茶をティーカップに注いでくれた。
「そういえば、花茶をご馳走になったのよ」
何をしていても思い出すのはエミリーのことばかりだ。
「へぇ、そうなんですね。今度用意いたしましょうか?」
注がれたばかりの紅茶の表面が揺れているのを見る。
ゆらゆらと、私の顔が映っている。
私、一人の顔が映っている。
「……いいえ……必要ないわ……メイがいつも美味しく入れてくれるお茶で満足してるの」
顔をあげ、メイにお礼を言う。
「いつも、ありがとう」
「どういたしまして」
一人で飲んでもきっと幸せな気持ちにはならない。
花茶の開いていく花びらを一緒に見る人がいなければ。
エイミーと一緒でなければ。
「そういえば……」
お菓子もすっかり食べ終わり、2杯目のお茶を飲んでいる時には心も落ち着いていた。
そして、数日すっかりエイミーとの思い出に浸って何も手につかなかったけれど。
特別に用意してくれたというお菓子に、花茶。
ハンカチのお礼だと言っていたけれど……。お礼のお礼はおかしいかな?
お菓子のお礼がしたい。
また、何かエミリーにプレゼントしたい。ブーケ・ド・コサージュの別のものにしようかしら?
でも、まだきっとあまり広まってないのに、いくつもすでに男性用のコサージュを持っていても不審がられちゃうかな?
今度は違うものにしよう。
何がいいかな。
「リリーシャンヌお嬢様、この後は何をなさいます?」
「んー、そうね……」
考え事をしたい。エミリーにプレゼントするものを考えたいの。
「じゃぁ、刺繍でもしようかしら?」
メイに答えると、すぐに刺繍をするための裁縫道具が用意された。
先月から刺し始め、途中になっている刺繍だ。
針を取り、布に突き立て針の先を出して抜き出す。時折針に糸をくるりと巻いて抜き出し、模様を作っていく。
すでに図案は書き写してあるし、ひたすら布地を埋めて行く単純作業だ。
こういう単純作業は、考え事をしているときにはちょうどいい。
=====================
あー、私は編み物とか刺繍はダメ。
裁縫はいい。ミシンでがががと縫う系はいい。
なんというか、作り始めてから作り終わるまでが、「その日のうち」のものはいい。
次の日に持ち越しになるやつは、飽きちゃうので完成しない……。
2
お気に入りに追加
3,872
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結】失恋した者同士で傷を舐め合っていただけの筈だったのに…
ハリエニシダ・レン
恋愛
同じ日に失恋した彼と慰めあった。一人じゃ耐えられなかったから。その場限りのことだと思っていたのに、関係は続いてーー
※第一話だけふわふわしてます。
後半は溺愛ラブコメ。
◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
ホット入りしたのが嬉しかったので、オマケに狭山くんの話を追加しました。
全裸で異世界に呼び出しておいて、国外追放って、そりゃあんまりじゃないの!?
猿喰 森繁
恋愛
私の名前は、琴葉 桜(ことのは さくら)30歳。会社員。
風呂に入ろうと、全裸になったら異世界から聖女として召喚(という名の無理やり誘拐された被害者)された自分で言うのもなんだけど、可哀そうな女である。
日本に帰すことは出来ないと言われ、渋々大人しく、言うことを聞いていたら、ある日、国外追放を宣告された可哀そうな女である。
「―――サクラ・コトノハ。今日をもって、お前を国外追放とする」
その言葉には一切の迷いもなく、情けも見えなかった。
自分たちが正義なんだと、これが正しいことなのだと疑わないその顔を見て、私はムクムクと怒りがわいてきた。
ずっと抑えてきたのに。我慢してきたのに。こんな理不尽なことはない。
日本から無理やり聖女だなんだと、無理やり呼んだくせに、今度は国外追放?
ふざけるのもいい加減にしろ。
温厚で優柔不断と言われ、ノーと言えない日本人だから何をしてもいいと思っているのか。日本人をなめるな。
「私だって好き好んでこんなところに来たわけじゃないんですよ!分かりますか?無理やり私をこの世界に呼んだのは、あなたたちのほうです。それなのにおかしくないですか?どうして、その女の子の言うことだけを信じて、守って、私は無視ですか?私の言葉もまともに聞くおつもりがないのも知ってますが、あなたがたのような人間が国の未来を背負っていくなんて寒気がしますね!そんな国を守る義務もないですし、私を国外追放するなら、どうぞ勝手になさるといいです。
ええ。
被害者はこっちだっつーの!
ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です
ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。
曼珠沙華
恋愛
「運命の人?そんなの君以外に誰がいるというの?」
きっかけは幼い頃の出来事だった。
ある豪雨の夜、窓の外を眺めていると目の前に雷が落ちた。
その光と音の刺激のせいなのか、ふと前世の記憶が蘇った。
あ、ここは前世の私がはまっていた乙女ゲームの世界。
そしてローズという自分の名前。
よりにもよって悪役令嬢に転生していた。
攻略対象たちと恋をできないのは残念だけど仕方がない。
婚約者であるウィリアムに婚約破棄される前に、自ら婚約解消を願い出た。
するとウィリアムだけでなく、護衛騎士ライリー、義弟ニコルまで様子がおかしくなり……?
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
【完結】殺されたくないので好みじゃないイケメン冷徹騎士と結婚します
大森 樹
恋愛
女子高生の大石杏奈は、上田健斗にストーカーのように付き纏われている。
「私あなたみたいな男性好みじゃないの」
「僕から逃げられると思っているの?」
そのまま階段から健斗に突き落とされて命を落としてしまう。
すると女神が現れて『このままでは何度人生をやり直しても、その世界のケントに殺される』と聞いた私は最強の騎士であり魔法使いでもある男に命を守ってもらうため異世界転生をした。
これで生き残れる…!なんて喜んでいたら最強の騎士は女嫌いの冷徹騎士ジルヴェスターだった!イケメンだが好みじゃないし、意地悪で口が悪い彼とは仲良くなれそうにない!
「アンナ、やはり君は私の妻に一番向いている女だ」
嫌いだと言っているのに、彼は『自分を好きにならない女』を妻にしたいと契約結婚を持ちかけて来た。
私は命を守るため。
彼は偽物の妻を得るため。
お互いの利益のための婚約生活。喧嘩ばかりしていた二人だが…少しずつ距離が近付いていく。そこに健斗ことケントが現れアンナに興味を持ってしまう。
「この命に代えても絶対にアンナを守ると誓おう」
アンナは無事生き残り、幸せになれるのか。
転生した恋を知らない女子高生×女嫌いのイケメン冷徹騎士のラブストーリー!?
ハッピーエンド保証します。
顔は平凡な婚約者なのに、浮気はするのかよ!
新川 さとし
恋愛
婚約者の紗絵が浮気した。顔は平凡だけど、真面目で素直で料理の得意な子。オレのコトだけを思ってくれると思ったから将来を誓ったのに。 許せん! 紗絵の親友である、超絶美女の町田美羽ちゃんに支えられながら、相手の男もきっちりと破滅に追い込みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる