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手をつなぐ

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「あら?」
 視線を落とすと、薔薇の垣根は、地面に植えられた薔薇ではなく、鉢に植えられたものが並べられているだけだ。
 どかせば行けないこともないけど……。
 エミリーはどうするのだろう。どかしてあづまやに行く?引き返してしまう?
 ここで待っていれば、行違うことはない?
 胸がぎゅっと押しつぶされそうなくらい不安が膨れてきた。
 すれ違って、会えなかったらどうしよう。
「エミリーに、もう会えない……」
 どうしよう。
 心臓がバクバクしはじめた。
 やだ。そんなの。会いたい。会えないなんて……。
 会場を探し回ればどこかにいる?
 身長が高かったエミリーだ。会場の中で、人ごみの中でも、ちょっと出ているオレンジ色の頭を探せば見つかる?
 だ、大丈夫、落ち着いて。
 落ち着いて……。
 舞踏会に招待されている人なんだから。オレンジ色の髪の人はそんなにたくさんいない。
 ロイホール公爵婦人に尋ねれば、誰か分かるはず……。そう、最悪、誰か教えてもらって手紙を出せば……。
 大丈夫なんだから……。
 涙が、目じりに浮かんできた。
 大丈夫だと自分に言い聞かせるんだけれど、でも……。
 目の前のあづまやへの道を阻む垣根が、私とメアリーの関係を阻む壁のように見える。
 不安が悲しみに変わって……どうしようもなく心が痛い。
「リリー、よかった。来てくれたんだ」
 え?
 この声……!
 ぱっと、目の前に大輪の花が咲いた。希望という名の花。
 オレンジ色のラナンキュラスが、垣根の間から顔をのぞかせた。
「エミリ……オ……」
 エミリーだ。でも、言葉遣いが男のものだから、今はエミリオと呼んだ方がいいのだろう。
 すぐに、道をふさぐ鉢が一つずらされ道ができた。
 中に入ると、エミリオがすぐに鉢を元の位置に戻して道をふさぐ。
「さぁ、行きましょう」
 エミリーの手が私の手を取り、二人であづまやへ向かった。
「手……」
 呟きを漏らすと、エミリーが慌てたようにパッと手を離した。
「ご、ごめんなさいっ!いくらアレルギーが出ないからって、許可もなく手を触って失礼だったわよね?私ったら……リリーにあえて嬉しくて……その。あ、あの、ほら、小さな子供って、早く早くって大人の手をすぐに引っ張っていこうとするでしょう?なんだか、そんな感じだと思ってもらえると……あの」
 くすくすと思わず笑ってしまう。
「そうよね、おかしいわよね、子供みたいで……」
 エミリーの言葉に首を横に振る。


==============
出会えた。出会えた。

あ、ところで……ですね。
「東屋」がずっと「あづまや」になってるんですが、「ガゼボ」のことです。
「ガゼボ」は語感が汚いから使いたくない、
「東屋」と感じだと雰囲気が。

で、平仮名「あずまや」にすればよかったんですが、うっかり「あづまや」にしちゃって。
吾妻さんというキャラがねいて、「あづま」で変換して書いてたんですよ。そのなごりで、手が……手が
「あづま」のほうが打ちやすくて……えーっと、ここまでは、誤字だけどまぁいいやと思ってたんですが
ちょっと調べた。

https://kobun.weblio.jp/content/%E3%81%82%E3%81%A5%E3%81%BE%E3%82%84
辞書の引用
学研教育出版学研教育出版  
あづま-や 【東屋・四阿】
②特に、庭園などに休息・眺望などのために設けた「あづまや①」。

……なんと、もともとはあずまやじゃなくて、あづまやでも正解でした(つまり古語ですが、現代辞書にもかっこで「づ」の方も平気されております)
ので、まぁよかろう。完全に間違いじゃないのだから……と、そのままにさせていただきます。



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