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会議室へ

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 新しく作る旅館、旅館での時間そのものを楽しめる旅館……か。
 このホテルもきっとそうなのだろう。ホテルで過ごす時間も特別なものになるようにと……。
 見上げると、吹き抜けの天井に大きなシャンデリアがキラキラと光を反射している。
 足元の絨毯は毛足が長くふかふかだ。靴を履いて歩くのだから、掃除が大変だろうに。目立った汚れもなく綺麗なものだ。
 行き届いた清掃。掃除の効率を考えれば毛足の短い絨毯の方がいいだろう。だけれど、あえて毛足の長いものにしてある。
 足に感じる感触。それまでも、普段とは違う、特別な感じがするのって、すごいことかもしれない。
 高級ホテルならではの役割……。
 そうだ、舞踏会に出たシンデレラのような気持ちになれるのかもしれない。特別な場所に来たと……。
 まぁ、普段からこういうホテルしか利用しないようなセレブであれば、また違った感想が出てくるのかもしれないけれど。
「深山君、こっちだ」
 部長に促され、エレベーターで4階で降りる。
 4階は半分は客室のようだ。スタッフオンリーと書かれた扉が、客が行き来するであろう廊下からは見えない場所に設置されていた。
 扉を開けば、今までいたホテルとは雰囲気ががらりと変わる。いわゆる、オフィスだ。
 ホテルの廊下は間接照明が用いられ、暗くはないけれど雰囲気がある明るさになっていた。廊下にも毛足が長い絨毯。幅の広い廊下には、絵画や花が飾られ雰囲気を出していた。
 それが一転。
 白っぽい床に壁を無機質さを感じる白いLEDライトが照らしている。
 わが社よりも数段上等できれいなオフィスだが、オフィスというだけで事務服の私はほっとする。
「どうした?緊張しているのか?」
 部長の言葉に首を横に振る。
「いえ、むしろ、ほっとしました」
「は?」
「会議室が、舞踏会でも開かれるような広間みたいな部屋だったらどうしようかと」
「ぷっ。ははは、深山くんは面白いことを言うな。いやいや、むしろそういうところで酒でも飲みながら会議したいもんだがなぁ」
 酒は余分でしょう。酒は。
 扉を開けてすぐのところに受付がある。受付嬢と呼ばれるだろう役職には、50前後のベテラン女性が座っていた。
「お待ちしておりました。本日は第二会議での13時40分からの会議の予定ですね」
 部長が名前を告げるまでもなく、どこのだれかが分かったようで、受付の女性はすぐに立ち上がって挨拶をする。とても立ち姿が美しく、そして自然な笑顔が、緊張感をほぐしてくれる。
 プロだ。
 一瞬でも、社業が女嫌いだから若い受付嬢を置かないのかと思った自分が恥ずかしい。彼女は、仕事ができるから、ここにいるのだ。
 もう一人、受付に座っていた若い男性に声をかけて、女性が第二会議室まで案内してくれる。
 第二会議室というプレートのかかった部屋の前で、女性がノックをして返事を待ってから扉を開いた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
 頭を下げて部長と会議室へ足を踏み入れる。
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