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日記を読み進めるうちに、出てきた名前にどきりとする。
ハルーシュ様……。ルーノ様の弟の名前だ。
『初めてお見掛けする顏だ。きっと、社交界での私の噂を知らないのだろう。令嬢に囲まれて罵声を浴びせられている私を助けてくれた。嬉しかった。でも、きっと噂を耳にすれば、もう話かけてくれることはないのだろう』
助けてくれた……のか。
ルーノ様を思い浮かべる。
兄弟そろって、正義感の強い人なのかも。
だったら、ハルーシュ様は庶民の子だとかよくない噂を聞いても助けてくれるのでは?
それから数日後の日記。
『ハルーシュ様がいらっしゃった。声をかけてくれるなんて思わなかったから……びっくりした。王都の社交界は慣れないと言っていた。いろいろと噂される私と一緒にいては迷惑をかけてしまいますと距離を取ろうとしたらハルーシュ様が笑った。僕もいろいろと噂されてるから平気だと。どんな噂をされているんだろう?』
お茶会でハルーシュ様と再会したことが書かれている。
お茶会の後だというのに『辛い』『もう行きたくない』という言葉がなかった。
『ハルーシュ様は辺境伯の次男だった』
え?辺境伯の次男?
ということは、兄でるルーノ様は辺境伯の嫡男ってこと?
辺境伯と言えば、王家に次ぐ家柄……。
公爵家にも並ぶ高位貴族。いや、むしろ王都から離れた国境沿いの領地にいるため王都にいる貴族とのつながりは弱いから侮られがちだけれど、公爵家よりもよほど力を持ち、王家も顔色を窺わざるを得ないと言う……。
ハッと口を押える。
そんな高貴な方だったんだ……。そりゃ、公爵家や侯爵家……少なくとも伯爵家でなければ相手にされるわけがない。
子爵令嬢とのの関係なんて、別れさせなければと思うだろう。
『何を噂されているのかハルーシュ様に尋ねた。辺境伯は田舎者だと言う話と、言いにくそうに妾の子だと嘲笑されていると』
……田舎者?王都から遠く離れた場所で生活しているから?
ハルーシュ様が貸してくれた上着を見る。
すぐに自分の上着を貸してくれるなんて洗練されてると思うのに……。
ルーノ様もハルーシュ様も、誰にも見劣りするような田舎臭さなんてなかった。
日記を読み進めると、お茶会や舞踏会になじめない二人は、人がいない会場の隅や庭園に身を隠して時間が過ぎるのを待つ時に、たびたび顔を合わせて話をするようになったようだ。
そして、偶然顔を合わせていたのが、約束をして顔を合わせるようになる。
『なぜ、突然王都に来ることになったのかと、聞かなければよかった』
楽しそうな日記に突然影が落ちる。
ハルーシュ様……。ルーノ様の弟の名前だ。
『初めてお見掛けする顏だ。きっと、社交界での私の噂を知らないのだろう。令嬢に囲まれて罵声を浴びせられている私を助けてくれた。嬉しかった。でも、きっと噂を耳にすれば、もう話かけてくれることはないのだろう』
助けてくれた……のか。
ルーノ様を思い浮かべる。
兄弟そろって、正義感の強い人なのかも。
だったら、ハルーシュ様は庶民の子だとかよくない噂を聞いても助けてくれるのでは?
それから数日後の日記。
『ハルーシュ様がいらっしゃった。声をかけてくれるなんて思わなかったから……びっくりした。王都の社交界は慣れないと言っていた。いろいろと噂される私と一緒にいては迷惑をかけてしまいますと距離を取ろうとしたらハルーシュ様が笑った。僕もいろいろと噂されてるから平気だと。どんな噂をされているんだろう?』
お茶会でハルーシュ様と再会したことが書かれている。
お茶会の後だというのに『辛い』『もう行きたくない』という言葉がなかった。
『ハルーシュ様は辺境伯の次男だった』
え?辺境伯の次男?
ということは、兄でるルーノ様は辺境伯の嫡男ってこと?
辺境伯と言えば、王家に次ぐ家柄……。
公爵家にも並ぶ高位貴族。いや、むしろ王都から離れた国境沿いの領地にいるため王都にいる貴族とのつながりは弱いから侮られがちだけれど、公爵家よりもよほど力を持ち、王家も顔色を窺わざるを得ないと言う……。
ハッと口を押える。
そんな高貴な方だったんだ……。そりゃ、公爵家や侯爵家……少なくとも伯爵家でなければ相手にされるわけがない。
子爵令嬢とのの関係なんて、別れさせなければと思うだろう。
『何を噂されているのかハルーシュ様に尋ねた。辺境伯は田舎者だと言う話と、言いにくそうに妾の子だと嘲笑されていると』
……田舎者?王都から遠く離れた場所で生活しているから?
ハルーシュ様が貸してくれた上着を見る。
すぐに自分の上着を貸してくれるなんて洗練されてると思うのに……。
ルーノ様もハルーシュ様も、誰にも見劣りするような田舎臭さなんてなかった。
日記を読み進めると、お茶会や舞踏会になじめない二人は、人がいない会場の隅や庭園に身を隠して時間が過ぎるのを待つ時に、たびたび顔を合わせて話をするようになったようだ。
そして、偶然顔を合わせていたのが、約束をして顔を合わせるようになる。
『なぜ、突然王都に来ることになったのかと、聞かなければよかった』
楽しそうな日記に突然影が落ちる。
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