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 手紙には、明日は用事があって会うことが叶わないこと、子爵家へは朝食を食べたあとでも昼食を食べた後でも好きなタイミングで戻ればいいこと、挨拶は不要だとまずは書かれていた。
 それから、アイリーンのフリをしていたことは、誰にも言うつもりはないから安心して欲しいと。侍女たちにも口止めをしてあること。信用できる者だから安心してほしいと書いてある。
 最後に……。
『子爵家を出るつもりがあれば、手伝います。いつでも言ってちょうだい』
 と、書かれていた。
「子爵家を出る……?」
 アイリーンが子供を産んで帰ってきたら、子供の父親と私は結婚して子爵家を出る予定だ。
 ……結婚ではなく、子爵家を出るつもりがあるかと尋ねられているということだよね?
 もし、父親が既婚者で結婚できそうになかったらということ?
 いいえ、アイリーンが子供を産み、その母親が私だということにして結婚させられることまでは、ジョアン様は知らない。
 ということは、子爵家を出るというのは……。
 出て平民として暮らす気があればということだろうか?
 刺繍を気に入ってくださった。
 もしかしたら、他の人にも売り込んでくださるとか?それでお金を稼ぐことができれば……。
 アイリーンの子を育てながら暮らしていける?
 それとも……。侯爵家の使用人として雇ってもらえるとか?
 上位貴族の使用人……侍女などとして、男爵家や子爵家の令嬢が働いていることはよくあることだ。
 下位貴族の女性の一番の出世は王宮で侍女として働くこと、次に公爵家で働くこととも言われている。
 侍女としてではなく、下働きとしてでも働かせてもらえれば……。給料をもらえれば、暮らしていけるかもしれない。
 掃除も洗濯も、下働きがすることなら一通りできると思う。
 家でしていたから。
 でも、お父様は許してくれるだろうか?
 ……さんざん自分の子じゃないと言っているし、厄介者を養ってやってるんだとも言っている。
 厄介者の私がいなくなった方がお父様にとってはありがたいのでは?
 ……ちゃんとアイリーンの子供は私が産んだということにするし。
 なんなら、どこの誰とも分からない子を産んだから勘当したとでも言えば、私が家を出ることにも不自然さはなくなるんじゃないかな?
 そうか……。
 私……。子爵家を追い出されるんじゃなくて、自分で出ていくこともできるんだ。
 そうか……。いらない人間、邪魔な人間じゃなくて……。
 どこかで誰かにとって必要な人間になれるかもしれないんだ……。本当に、なれる?
 ううん、違う。アイリーンが私を必要な人間にしてくれる。
 アイリーンの産んだ子にとって、私は……母親として必要な人間になれる。
 もし、世継ぎとして赤ちゃんは必要だけど、母親は必要ないと子供だけ取り上げられてしまったら?
 想像して体が震える。
 例えば……もし、ルーノ様と一夜を共にして子供ができてしまったら、きっと、そうなるんだろう。
 私は決してルーノ様に必要な人にはなることはできない。
 侍女がお茶を持ってきてくれた。



============
どうにも、悪役令嬢系の「ヒロイン男爵令嬢」がほいほいと「高位貴族と結ばれちゃう」のを見すぎて、身分違いの恋とかが最近は「なんとかなるっしょ~、なんでそんなに身分にこだわるんじゃ~」になりがちだけど。
たぶん、身分違いって、本来はすごく大変な話なのだろうなぁと思って書いてます。
障害になるか?たかが身分でしょ?養子になってなんとか~みたいな技つかやええやんって、たぶん思いがち……。
本来は「駆け落ち」とか「心中」とか案件なんだろうね……
駆け落ちは、ヒロインの両親がしてがちだわ……。
でもって、ヒロインは祖父母が実はってなりがち……。
むしろ両親がすげーよな?ヒロインは甘いよな?とか、どうでもいいことを考えすぎるなり。
(*´ω`*)……だって、今日は愛知県の天気予報40度よ?
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