上 下
73 / 96

73

しおりを挟む
 菜々さんは和臣さんの前カレ、もしくは今カレではないのでしょうか?
 私と、他の女性と二人で食事に行くことはいやではないのでしょうか。
 いえ、そもそも、セッティングしたのが菜々さんなのですが……。どういうことなのでしょう?
 もしかして、二人は別れたけれど、和臣さんは菜々さんに未練があって、菜々さんはそれが迷惑で……。
 早く誰かと付き合ってほしいと思っているのでしょうか?
 まさか、私と和臣さんをくっつけようとしている?
 いえ、そんなはずはないですよね。私、彼氏が欲しいと思っていないというのは伝えてありますし……。
 それに。もしそうだったとしても、和臣さんの心が菜々さんに向いているのであれば、それは迷惑なことです。
 残酷なこと。和臣さんにとっても、私にとっても。菜々さんがそんなひどいことするとは思えません。
「さぁ、できた!今日はマーメイドをイメージしてゆるふわ編み。どうかな?」
 髪型の話のようです。カールした髪を、緩くふわふわと大きなみつあみにしてあります。
 化粧は、いつものように自分で化粧するよりも5倍はかわいいです。
 目元のアイシャドウはブルー系です。濃紺のワンピースに合わせてくれたのでしょうか。
「さぁ、行こう!」

「あ、はい」
 菜々さんが楽しそうな声を出します。
 ロッカーに化粧道具を片付け、かぎをかけています。
「あ、もしかして、それ……」
 ロッカーのカギにぶら下がっているストラップを指さします。
「へへ。そうだよ。結梨絵ちゃんからもらったトンボ玉」
「使ってくださってるんですね、ありがとうございます」
 嬉しいです。
 菜々さん、本当にいい人です。
「これ、友達にも評判いいんだよ。どこで買ったの?ってよく聞かれるの!あ、ねぇ、トンボ玉でかんざしとか作れないかな?デザイン科の子が、夏の浴衣ファッションショーで使いたいと言ってたんだけど……えっと、あまり高いとだめだけど買わせてほしいって」
「え?買いたいんですか?いえ、売るようなものじゃないので……トンボ玉はストラップと同じように穴に通して加工すればかんざしにもなると思いますが……」
「十分売るようなものだよ!」
「えーっと、あの、じゃぁ、今度いくつか持ってきます。えっと、売り物ではないので、じゃぁ、材料費をもらうという形で」
「え?そんなのでいいの?うん、分かった。友達に伝える!ありがとうね!あ、ファッションショーは結梨絵ちゃんも見に行く?食堂の仕事ある日なのかな?」
 夏の浴衣ファッションショー?どこかでポスターを見た気はしますが、あまり興味がないので一度も見に行ったことはありません。いつですたっけ?
 土日ならば食堂は休みです。平日でしょうか?
「あ、いたいた。おーい!じゃぁ、また連絡するね!」
 話しながら歩いていたら、いつの間にか目的の駅に着いたようです。駅前の広場に背の高い人影が見えます。あれが、和臣さんでしょうか。
 菜々さんがそのまま速足で駅へと入っていきました。広場の背の高い人影が近づいてきます。
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

傷痕~想い出に変わるまで~

櫻井音衣
恋愛
あの人との未来を手放したのはもうずっと前。 私たちは確かに愛し合っていたはずなのに いつの頃からか 視線の先にあるものが違い始めた。 だからさよなら。 私の愛した人。 今もまだ私は あなたと過ごした幸せだった日々と あなたを傷付け裏切られた日の 悲しみの狭間でさまよっている。 篠宮 瑞希は32歳バツイチ独身。 勝山 光との 5年間の結婚生活に終止符を打って5年。 同じくバツイチ独身の同期 門倉 凌平 32歳。 3年間の結婚生活に終止符を打って3年。 なぜ離婚したのか。 あの時どうすれば離婚を回避できたのか。 『禊』と称して 後悔と反省を繰り返す二人に 本当の幸せは訪れるのか? ~その傷痕が癒える頃には すべてが想い出に変わっているだろう~

私にモテ期とか冗談でしょ? アラサーオタ喪女に突然の逆ハーレム

ブラックウォーター
恋愛
アラサー、独身、彼氏なし、趣味サブカル全般。 28歳の会社員、秋島瞳は単調な毎日を過ごしていた。 休日はDVDやネット動画を観て過ごす。 食事は外食かズボラ飯。 昨日までは…。 同期でやり手の上司、克己。 エリートで期待のルーキー、勇人。 会社創業者一族で貴公子、龍太郎。 イケメンたちになぜか付き合ってくれと言われて…。 なんの冗談?私にモテ期っておかしいって!

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

アラフォー王妃様に夫の愛は必要ない?

雪乃
恋愛
ノースウッド皇国の第一皇女であり才気溢れる聖魔導師のアレクサは39歳花?の独身アラフォー真っ盛りの筈なのに、気がつけば9歳も年下の隣国ブランカフォルト王国へ王妃として輿入れする羽目になってしまった。 夫となった国王は文武両道、眉目秀麗文句のつけようがないイケメン。 しかし彼にはたった1つ問題がある。 それは無類の女好き。 妃と名のつく女性こそはいないが、愛妾だけでも10人、街娘や一夜限りの相手となると星の数程と言われている。 また愛妾との間には4人2男2女の子供も儲けているとか……。 そんな下半身にだらしのない王の許へ嫁に来る姫は中々おらず、講和条約の条件だけで結婚が決まったのだが、予定はアレクサの末の妹姫19歳の筈なのに蓋を開ければ9歳も年上のアラフォー妻を迎えた事に夫は怒り初夜に彼女の許へ訪れなかった。 だがその事に安心したのは花嫁であるアレクサ。 元々結婚願望もなく生涯独身を貫こうとしていたのだから、彼女に興味を示さない夫と言う存在は彼女にとって都合が良かった。 兎に角既に世継ぎの王子もいるのだし、このまま夫と触れ合う事もなく何年かすれば愛妾の子を自身の養子にすればいいと高をくくっていたら……。 連載中のお話ですが、今回完結へ向けて加筆修正した上で再更新させて頂きます。

この誓いを違えぬと

豆狸
恋愛
「先ほどの誓いを取り消します。女神様に嘘はつけませんもの。私は愛せません。女神様に誓って、この命ある限りジェイク様を愛することはありません」 ──私は、絶対にこの誓いを違えることはありません。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。 ※7/18大公の過去を追加しました。長くて暗くて救いがありませんが、よろしければお読みください。 なろう様でも公開中です。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

運命の赤い糸はとんでもない!

竹輪
恋愛
 突然の父親の訃報によって、爵位を継がなくてはならなくなった冒険者の兄ハージが貧乏男爵のコートボアール家に帰ってきた。――足首に呪いの赤い糸と、とんでもない美男子の他国の王子様をくっつけて……。  他人事のように大好きな兄を応援していた妹アイラだが、ある日、呪いの赤い糸が兄と交換できると判明する。美男子と呪いに翻弄される兄妹は無事に赤い糸の呪いを解くことができるのか!? 「是非、お兄様の嫁に! 偏見なんて微塵もありません! 女性が苦手でも平気! お兄様に一生大切にさせます!」 ~腐った本のせいで突っ走るブラコンアイラと赤い糸の呪いを解く愛の物語~ **小説家になろうでも(竹輪㋠の名で)公開中です**

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...