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「いえ、大したものではないのでもらってください。趣味で作っているものなので、その、むしろ迷惑かもしれないですけれど……」
 菜々さんの手の中に、小さなガラス玉のついたストラップを渡す。
「うわー、きれい!何?これ、作ったの?作れるの?ビー玉みたいなのを買って作るの?すごいね、白い花が入ってて、青くて本当に素敵」
 光に透かすようにして、菜々さんはストラップを持ち上げた。
「そのビー玉みたいなのは、トンボ玉っていいます。ガラスの棒をバーナーであぶってとかして作るんです」
「すごい、すごい!嬉しい、ありがとう!これ、世界に一つだけってことだよね?」
 菜々さんの香りがふわっと私を包んだ。
 いい匂い。
 ぎゅっと抱き着かれました。
 こういう人との接触に慣れていないので、びっくりしたけれど、そこまで喜んでもらえるなんて嬉しいです。
「一つだけと言いたいんですが、実は同じデザインで私も持っているんです。手作りなので完全には同じじゃないのですが。あ、おそろいになってしまって迷惑であれば、今度別のを持ってきます」
「へぇー、そうなんだ。ふふ。おそろいなんて、中学生以来よ。くすぐったくってうれしいね」
 にこっと菜々さんが笑います。花のような笑顔です。


「結梨絵さんとおそろいって言ったらうらやましがるかな。ふふふっ」
 誰がでしょう?
「たくさんありますし、欲しいという人がいれば差し上げますけど?」
「あー、いいのいいの。さぁ、行こうか。待ち合わせは店の前」
 移動中菜々さんにはトンボ玉の作り方を聞かれました。それから、他にどんな趣味があるのかとか。
「彼氏はいないんだよね?でさ、気になる人とか好きな人とかは?あ、忘れられない人がいるってこともない?」
 気が付けばいつの間にか質問攻めにあっています。
「残念ながらそのどれもないですね。大学の時半年くらい付き合った人とは社会人になってから生活がすれ違って別れてしまって、それ以来さっぱりです」
「へー、あ、いたいた!もうみんな揃ってるみたいね」
 駅から高架下沿いを歩いて2分。とある店の前で立っている4人に菜々さんが手を振りました。
 私はあいにくこの距離だと人数くらいしか分かりません。
「4人?」
「ああ、言ってなかったっけ?今日は初夏と丸山くん。それから私と結梨絵ちゃん。他2名の合計6人よ。人数が少なめのほうが、初夏も丸山くんとたくさんしゃべれるでしょ?」
 なるほど。
 初夏ちゃんの恋を応援シリーズですね。
 でも、だったら…。
「私もいないほうが4人とかのほうがよかったんじゃ?」
「なっ、ダメよ、ダメ!それじゃぁ、まるっきり意味がないからっ!」
「意味?」
「えっと、あいつが、その」
 あいつ?

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