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~始まりの異変~
ー否定ー
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「要件は?」
まぁ、次は俺が自ら解放されろ、とかだろうな。
でも
「解放されるのはシェルターの中で最年長の者が選ばれる。心配しなくても最後には……。」
何が起こった?
目の前にはなんとも言えない柔らかい感触と、心の底から安心出来るような優しい匂い。
俺はマリアに抱きしめられていた。
「どう言う事だ。」
「こう言う事です。貴方が少しお疲れのようでしたので。」
疲れる?俺が?一日中部屋にこもって、動きすらしない俺が?
「それは勘違いだな。俺の体は弱いが健康的だ。」
マリアは俺を抱きしめたまま小さく笑った。
「確かに体は元気かも知れませんね。」
マリアは俺の髪を撫でる。
「でも、疲れとは体だけではありませんよ?」
体以外に何がある。
「……辛かったのでしょう?」
ピシッ。
「……苦しかったのでしょう?」
パキッ。
「……1人、寂しかっ」
「やめろ。」
俺はマリアの腕を払って、石材の廊下に座り込む。
「何故だ、何故お前はそんな目で俺を見」
すると慣れない感触が俺の頬を伝った。
なんだ?
「水漏れ?」
すると、マリアがまた。
しかしさっきよりも強く、大きく、優しく抱きしめた。
「やめろ。」
「貴方が泣き止んだらやめます。」
泣く?俺が?
目を触ると、確かに涙が溢れていた。絶えることなく。
しかしこれはおそらく感情ではない。体の異常。
なるほど、こいつの言う疲れは心の事か……だが。
「死神に心はない。」
「そう、かもしれませんね。でも貴方は死神じゃない。1人の人間。優しい人間。」
優しい?
「この人殺しが?」
するとマリアは、どこか寂しい表情を浮かべた。
「人殺し、ですか。確かに貴方は人殺しに似た行為をしたかも知れません。でも、本当にただの人殺しなら涙は出ませんよ。」
だから違う。
これは
「体の異常だ。感情ではない、だから俺に心はない。」
あってはいけない。
仕事に支障が出てしま
「仕事に忠実なのが正しい訳ではありませんよ?」
マリアは俺の心を読んだかのように否定した。
「貴方の事を心配する人もいると知ってください。」
マリアは小さく笑い、俺の目尻の涙を指で拭うと。
「ごめんなさい時間がなくて」と会釈をしてそそくさと何処かへ行ってしまった。
少しして、俺はやっと現状を把握出来た。
しかし、何故マリアはあんな事をしたのか、そして何故俺は泣いたのか。
それは分からないままだった。
「なんなんだあいつは…。」
まぁ、次は俺が自ら解放されろ、とかだろうな。
でも
「解放されるのはシェルターの中で最年長の者が選ばれる。心配しなくても最後には……。」
何が起こった?
目の前にはなんとも言えない柔らかい感触と、心の底から安心出来るような優しい匂い。
俺はマリアに抱きしめられていた。
「どう言う事だ。」
「こう言う事です。貴方が少しお疲れのようでしたので。」
疲れる?俺が?一日中部屋にこもって、動きすらしない俺が?
「それは勘違いだな。俺の体は弱いが健康的だ。」
マリアは俺を抱きしめたまま小さく笑った。
「確かに体は元気かも知れませんね。」
マリアは俺の髪を撫でる。
「でも、疲れとは体だけではありませんよ?」
体以外に何がある。
「……辛かったのでしょう?」
ピシッ。
「……苦しかったのでしょう?」
パキッ。
「……1人、寂しかっ」
「やめろ。」
俺はマリアの腕を払って、石材の廊下に座り込む。
「何故だ、何故お前はそんな目で俺を見」
すると慣れない感触が俺の頬を伝った。
なんだ?
「水漏れ?」
すると、マリアがまた。
しかしさっきよりも強く、大きく、優しく抱きしめた。
「やめろ。」
「貴方が泣き止んだらやめます。」
泣く?俺が?
目を触ると、確かに涙が溢れていた。絶えることなく。
しかしこれはおそらく感情ではない。体の異常。
なるほど、こいつの言う疲れは心の事か……だが。
「死神に心はない。」
「そう、かもしれませんね。でも貴方は死神じゃない。1人の人間。優しい人間。」
優しい?
「この人殺しが?」
するとマリアは、どこか寂しい表情を浮かべた。
「人殺し、ですか。確かに貴方は人殺しに似た行為をしたかも知れません。でも、本当にただの人殺しなら涙は出ませんよ。」
だから違う。
これは
「体の異常だ。感情ではない、だから俺に心はない。」
あってはいけない。
仕事に支障が出てしま
「仕事に忠実なのが正しい訳ではありませんよ?」
マリアは俺の心を読んだかのように否定した。
「貴方の事を心配する人もいると知ってください。」
マリアは小さく笑い、俺の目尻の涙を指で拭うと。
「ごめんなさい時間がなくて」と会釈をしてそそくさと何処かへ行ってしまった。
少しして、俺はやっと現状を把握出来た。
しかし、何故マリアはあんな事をしたのか、そして何故俺は泣いたのか。
それは分からないままだった。
「なんなんだあいつは…。」
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