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~第2章~
怒り狂う王〈イビル〉
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さーて来終のミナトさんは?
ミナト魔王城へ戻りたく無い。
ミナト魔王城へ戻る。
ミナト殺される。
の三本をお送りします。
「やだなぁ魔王城。戻りたく無いなぁ魔王城。」
久しぶりの俺の部屋で畳に突っ伏していると、シオンに横腹をコンコンと軽く蹴られた。
「次へ行くのだろう。早くしろ…。」
その声はどこか冷たく、何かを考えているような声だった。
「やだよぉ~、行きたく無いよぉ~。ミナトさん症候群だよぉ~。」
シオンは「はぁ」とため息を吐くと、さっきよりも少し強く横腹を蹴った。
「ヤダって言ってるだろ!やめろよ母ちゃん!」
床に顔を擦り付けたままシオンを見ると、シオンは顔を真っ赤にしていた。
「だ!誰が母ちゃんだ!!」
次の瞬間、俺の横腹が終わったのは言うまでも無い。
「痛ててて…。えっと次は………。」
「王だ。」とシオンが答えた。
「あぁ…。あれやなんだよなぁ。仕事しろ仕事しろって…。」
文句を言っていると、シオンのニートを見る目に負けて、素直に襖を開けた。
「お、王!?」
使用人だろうか?無駄に高貴すぎず、しかし身なりの整った黒いタキシードを着た男が数人いた。
何して…って。
「………。」
王-不明-玉座の間
玉座の間はボロボロだった。
前に来た時のように高価そうな装飾のされた玉座の間は、今は床のカーペットは破れ、斬られ、焼かれ、壁は爪痕のような傷や、爆発したようにえぐれていた。
「シオン、俺から離れるなよ。」そう注意すると、「私も戦える」とでも言うように、一本のレイピアをどこからか出し、俺の横に立った。
「シオン…今はダメだ。」
その俺の言葉で通じたのか、片手にレイピアを持ったまま、俺の後ろに立つ。
念には念を、ってとこか。
俺はまだこちらを見ている使用人達に問いかける。
「何があった?」
すると1人の使用人が手に持っていた瓦礫を床に置き、左手を腹に当てて礼をした。
使用人はそんな堅苦しいのはいらないんだけどなぁ。
いるのは苦労もせずに肥え太っていく貴族だけで…。まあこの世界の貴族がどんなのかは分からんが。
「王がお戻りになる1時間ほど前。王城に侵略者が現れました。」
侵略者…ねぇ。
「犯人は?」
使用人は首を横に振る。
「姿は?」
同じく首を横に降る。
「…いいか?俺は顔を聞いてるんじゃない。どんな格好、背丈、体型をしているか聞いているんだぞ?」
しかし使用人はまた首を横に振った。
はい!?
「それは誰も見てないって事か?」
すると使用人は俺の言葉を繰り返し、そして訂正した。
「誰も見れなかったのです。」
「………あ~。」
そういう流れね…。
「でも、なら何で侵略者と分かった?」
すると別の使用人が床にあった赤い石を拾い、俺に見せた。
「あれは竜の鱗です。それも飼いならされた。」
アカみたいな奴か。
「その竜の尾には紋章が彫られていました。」
紋章で分かるって事は有名な侵略者組織か。
「何のだ?」と聞くと、使用人は手を合わせてブツブツと何を呟きはじめた。
えー、怖いこの子。
教室に1番最初に来て1番最後に帰る、声を一度も聞いた事のないまま卒業する子ぐらい怖い。
すると使用人の手の間から青紫色の光が漏れ始めた。
使用人は手は少しずつ開くと、その間から青紫色の光で周囲を照らす球が現れた。
「悪魔の血?でも悪魔の血は全部売られたり殺されたりするんじゃ…。」
するとその光を手の間に浮かせたまま、俺の立つすぐ隣のTHE王の椅子を照らした。
…へぇー。
イスには一本の矢が深く突き刺さっており、その矢に光が当たると、目を光らせ、歯をくいしばる、怒り狂う人の顔のマークが宙に浮き出た。
「怒り狂う王。〈イビル〉です。」
…んー、間違いなく俺の世界の知識が入ってる。何とは言わ、言えないけど。
使用人が光を消すと、そのマークも一緒に見えなくなった。
「まぁいいや。シオン?ちょっと回り道するぞ。」
「分かっている。」
俺の後ろからシオンが現れると、使用人達は「シオン様!?」と驚いた声を出した。
「さーて、まずは………どうしよう!」
シオンに問いかけると、レイピアが俺の首に添えられた。
「考え無しに言ったのか。」
「はい、言いました。すいません。」
シオンはため息を吐くと、レイピアを下ろす。
「この街から川沿いに下って行った先にイビルの隠れ家と噂されている屋敷がある。近くの川にはサーペントが生息していて兵達すらも恐れて近づかない。」
兵達も、ってそこは頑張れよ、兵キミ達。なんつって………すんません。
ミナト魔王城へ戻りたく無い。
ミナト魔王城へ戻る。
ミナト殺される。
の三本をお送りします。
「やだなぁ魔王城。戻りたく無いなぁ魔王城。」
久しぶりの俺の部屋で畳に突っ伏していると、シオンに横腹をコンコンと軽く蹴られた。
「次へ行くのだろう。早くしろ…。」
その声はどこか冷たく、何かを考えているような声だった。
「やだよぉ~、行きたく無いよぉ~。ミナトさん症候群だよぉ~。」
シオンは「はぁ」とため息を吐くと、さっきよりも少し強く横腹を蹴った。
「ヤダって言ってるだろ!やめろよ母ちゃん!」
床に顔を擦り付けたままシオンを見ると、シオンは顔を真っ赤にしていた。
「だ!誰が母ちゃんだ!!」
次の瞬間、俺の横腹が終わったのは言うまでも無い。
「痛ててて…。えっと次は………。」
「王だ。」とシオンが答えた。
「あぁ…。あれやなんだよなぁ。仕事しろ仕事しろって…。」
文句を言っていると、シオンのニートを見る目に負けて、素直に襖を開けた。
「お、王!?」
使用人だろうか?無駄に高貴すぎず、しかし身なりの整った黒いタキシードを着た男が数人いた。
何して…って。
「………。」
王-不明-玉座の間
玉座の間はボロボロだった。
前に来た時のように高価そうな装飾のされた玉座の間は、今は床のカーペットは破れ、斬られ、焼かれ、壁は爪痕のような傷や、爆発したようにえぐれていた。
「シオン、俺から離れるなよ。」そう注意すると、「私も戦える」とでも言うように、一本のレイピアをどこからか出し、俺の横に立った。
「シオン…今はダメだ。」
その俺の言葉で通じたのか、片手にレイピアを持ったまま、俺の後ろに立つ。
念には念を、ってとこか。
俺はまだこちらを見ている使用人達に問いかける。
「何があった?」
すると1人の使用人が手に持っていた瓦礫を床に置き、左手を腹に当てて礼をした。
使用人はそんな堅苦しいのはいらないんだけどなぁ。
いるのは苦労もせずに肥え太っていく貴族だけで…。まあこの世界の貴族がどんなのかは分からんが。
「王がお戻りになる1時間ほど前。王城に侵略者が現れました。」
侵略者…ねぇ。
「犯人は?」
使用人は首を横に振る。
「姿は?」
同じく首を横に降る。
「…いいか?俺は顔を聞いてるんじゃない。どんな格好、背丈、体型をしているか聞いているんだぞ?」
しかし使用人はまた首を横に振った。
はい!?
「それは誰も見てないって事か?」
すると使用人は俺の言葉を繰り返し、そして訂正した。
「誰も見れなかったのです。」
「………あ~。」
そういう流れね…。
「でも、なら何で侵略者と分かった?」
すると別の使用人が床にあった赤い石を拾い、俺に見せた。
「あれは竜の鱗です。それも飼いならされた。」
アカみたいな奴か。
「その竜の尾には紋章が彫られていました。」
紋章で分かるって事は有名な侵略者組織か。
「何のだ?」と聞くと、使用人は手を合わせてブツブツと何を呟きはじめた。
えー、怖いこの子。
教室に1番最初に来て1番最後に帰る、声を一度も聞いた事のないまま卒業する子ぐらい怖い。
すると使用人の手の間から青紫色の光が漏れ始めた。
使用人は手は少しずつ開くと、その間から青紫色の光で周囲を照らす球が現れた。
「悪魔の血?でも悪魔の血は全部売られたり殺されたりするんじゃ…。」
するとその光を手の間に浮かせたまま、俺の立つすぐ隣のTHE王の椅子を照らした。
…へぇー。
イスには一本の矢が深く突き刺さっており、その矢に光が当たると、目を光らせ、歯をくいしばる、怒り狂う人の顔のマークが宙に浮き出た。
「怒り狂う王。〈イビル〉です。」
…んー、間違いなく俺の世界の知識が入ってる。何とは言わ、言えないけど。
使用人が光を消すと、そのマークも一緒に見えなくなった。
「まぁいいや。シオン?ちょっと回り道するぞ。」
「分かっている。」
俺の後ろからシオンが現れると、使用人達は「シオン様!?」と驚いた声を出した。
「さーて、まずは………どうしよう!」
シオンに問いかけると、レイピアが俺の首に添えられた。
「考え無しに言ったのか。」
「はい、言いました。すいません。」
シオンはため息を吐くと、レイピアを下ろす。
「この街から川沿いに下って行った先にイビルの隠れ家と噂されている屋敷がある。近くの川にはサーペントが生息していて兵達すらも恐れて近づかない。」
兵達も、ってそこは頑張れよ、兵キミ達。なんつって………すんません。
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