124 / 229
第二章 運命の出会いと砂漠の陰謀
〈116〉私も、新しい道への第一歩なのです 後
しおりを挟む「レオナ」
ルスラーンが、とても真剣な顔で見下ろしていた。
「……少し、話したい」
こくり、と頷くと、ルーカスが無言で、脇の小部屋に案内をしてくれた。本来ならば密室に二人きりは良くない。が、ルーカスは黙って微笑んでくれた。
中に入ると、ゲスト用のちょっとした控え室になっていて、簡易テーブルと椅子が備えられている。
ぱたり、と扉が閉じられると、ダイニングの喧騒から離れて、静寂な空間になる。
二人は無言で、向かい合わせに腰掛けた。
「ルス、あの」
静けさに耐えられず、レオナが口を開くと
「……すまない」
ルスラーンが絞り出すように言った。拳を膝の上で、ぐ、と握りしめていることが分かった。
「自分が、これほど情けないと思ったことはない」
「そんな!」
「聞いてくれ」
何度かまばたきをして、改めてルスラーンを見つめるレオナは、彼の瞳が揺れていることが分かり、息を飲んだ。
「……はい」
「まずは先日、学院の廊下で、失礼な態度を取ったことを謝罪したい」
「いえ! あれは」
「ゼル君のため。だろう?」
レオナは、目を合わせることが出来ずに、ただ頷く。
「うん。頭では分かっていた。けど、その……俺と約束したのに、と、思って……あー、情けないが、嫉妬した」
「しっと」
「ああ」
――しっと?
今、しっと、って言った!?
「もちろん誰と何をしようが、レオナの自由だし、婚約者でもない俺に、止める権利はない」
――こ!?
こここ、こんやくしゃ!?
「俺のただの狭量だ。許してくれ」
「ゆ、ゆゆ許すも何もないですわ!」
「……怒ってはいないか?」
「ないです! 怒るだなんて!」
「そっか……良かった」
ふにゃり、と笑う顔が、レオナの心臓を貫く。
「それからダイモンイチゴのこと、ありがとう。まさかあの会話からこんなことが実現するとは、思わなくてだな、すごく驚いた」
「あの、無断でごめんなさい! ジーマ様からも色々ご協力頂いて」
「マジか! あの親父……」
「ルスが忙しかったから、ですわ!」
「いや、言い訳にならない。本当に情けないな……こんなんじゃ、選んでもらえない」
ぎり、と歯を噛み締めるルスラーン。
「? 選んで?」
「あ、あーいや。本当に嬉しかった。感謝しているし、フィリベルトともしっかり話して、今後どういうことが出来るかも考えていきたい。また色々聞かせて欲しいし、俺からも提案できることがあれば、したいんだが、いいか?」
「もちろん! とっても嬉しいですわ!」
「うん……こちらこそ。それから、その……」
ほんの数秒躊躇った後、ルスラーンは、まっすぐレオナを見つめる。
「ブルザークへ行くのは、さ」
「……はい」
「皇帝陛下と、その将来、あー、何か」
レオナは首を振る。
「今は、留学することだけ決めましたの」
「そっか……うん。応援、したいんだ。本当に」
「ありがたく存じますわ」
「うん……だが、その」
じ、と紫が、射抜く。
「正直――寂しいな」
「っ……」
――し、しし心臓止まるっ!
だだダメよ、勘違いしたらダメよ、友人として、よ!
レオナ! あなたは、公爵令嬢よ!
「まあまだ先だろ? 約束通り休みが取れたらさ、どこかに行こう」
「え、ええ」
「レオナ。改めて、本当にありがとう」
「そんな! ただ、私は」
――あなたのために、なんて言ったら、引くかな。
どうしよう。わかんない。
「私は?」
――わかんないけど、言いたい。
恥ずかしくて、顔が見られない。けど。
「ルスの、ために、その、少しでもお役に立ちたくて」
「……」
えっ? 無言!?
やっぱり引いちゃった!? よね、えーん!
恐る恐る顔を上げると、目がまん丸で驚いているルスラーンが居る。
「俺のため?」
「……はい。ごめんなさい、勝手に色々、その……」
「……っっ」
テーブルの向こうで、ルスラーンは頭を抱えてしまった。
「ルス? あの」
やはり困らせてしまっただろうか、とレオナが不安に思っていると。
「っしゃ!」
急に、ガッツポーズをされた。
「へ?」
「っっげー、うれし!」
「へっ!?」
「俺のためとか! すげー嬉しい!」
ば、と顔を上げて、くしゃりと笑う。
「やべー! 自惚れるぞ、俺!」
途端に素の、やんちゃなルスラーン。
先程までの近衛騎士の威厳は、どこかへ吹っ飛んでしまっている。
「うぬぼれ?」
「んんん、なんでもねー!」
レオナは、少年のように笑う、この、漆黒の竜騎士と呼ばれ、恐れられてすらいる人を見て
「ふふ。可愛い」
と。思いが口から漏れてしまった。
「へ? 俺が?」
「あっ」
慌てて手で口を塞ぐが、遅かった。
「うーん? 女性には、顔が怖いとか、冷たそうとか、何考えてるのか分からないとかは、良く言われるんだが……可愛い、って初めてだなぁ」
「へえ。女性には。一体何人からかしら?」
「何人? そんなの数えたことはない……あれ? 俺今、責められてる?」
「大層おモテになるようで! 良かったですわね!」
「は? 違うぞ? 悪口だろ!?」
「違いますう!」
「ええ……わかんねーし……えっ、なんで膨れてんの? 俺またやらかした!?」
「嫉妬ですう!」
「しっ……は!?」
「ふーん!」
「ふーんて、……あー、可愛いのはそっちだろ」
「かわっ!?」
「はは。可愛い」
「ちょっ、からかってるでしょ!」
「ちげーよ!」
「どうですかねー!」
「レオナ」
「なによ!」
「マジだって!」
「なにが!」
「だー! もう!」
コンコン
「「!!」」
「そろそろ、お時間ですよ」
お互いに、ゼーハー息をするぐらいに興奮していた二人を、ルーカスの冷静な声が、止めてくれたのだった。
※ ※ ※
「おー? しょんぼりしちゃって、まあ」
「……」
レオナ達が、ルーカスの案内で別の部屋に入った頃。
ジョエルは、シャルリーヌの手を引いて、壁際の休憩用の椅子に座らせた。
その隣によっこらしょ、と腰掛け、足を組むと、シャルリーヌに問いかける。
「拗ねてんのー?」
「うるさい……」
「ちょっとー、僕これでも副団長よー?」
「しってる……」
ジョエルは、眉を下げて肩をすくめる。
「なんとなく、分かってた感じー?」
シャルリーヌは、俯いたまま。
「ほんで、レオナが言ってくれるのを待ってたー?」
図星を突かれた。
シャルリーヌは、下唇を噛む。
ジョエルは頭の後ろで手を組んで、壁にもたれた。
「ほんで? 水臭いって、責めたいのー?」
「ちがうわ!」
「じゃあ、何ー?」
「……ずっと側にいたのに……」
クラスルームでも、図書室でも、食堂でも。
学院での好奇の視線に晒され続けたレオナ。
ゼルやヒューゴーと親しくしたなら、女子学生達から妬みの視線が刺さる。
テオやジンライと話せば、庶民にまで手を出す、などと、不思議なくらい、本当に下世話なことばかりで。
どれだけ心を摩耗したのだろうか。
自分達のお陰で学院生活が楽しい、と先程は言っていたが、本当だろうか? と疑ってしまう。
「私は……」
なんなのだろう、この気持ちは。
自分でもよく分からない苛立ちを抱えて、シャルリーヌは、膝の上で固く手と手を握り合わせる。
それを見てジョエルは一つ、溜息をつく。
「マーカム王国民にとって薔薇魔女は、おとぎ話だった。でしょ?」
シャルリーヌは、ジョエルの横顔を黙って見つめた。
隠れてはいない右目が、空を貫いている――何か別のものを捉えているように。
「けれども、身近に存在してしまった事実を、学生達は受け入れられないんだろう。あの瞳もそうだけれど、魔力量も隠せていない。どうしても表に出てきてしまっているからね。――恐ろしいんだろうな」
「そんな! かといって排除するのは違うでしょう!?」
「シャルには、確固たる地位がある」
ちら、と目だけでシャルリーヌを見て、また視線は空に戻る。
「小さな頃から共に過ごした『レオナの親友』っていう、ね」
「……」
「皆が子供の頃から、恐ろしい存在として語り継がれてきた存在がさ、実際にクラスルームにいるとして。膨大な魔力を持つ、権力も相当な公爵令嬢。僕なら怖いけどなぁ」
シャルリーヌは、ようやく腑に落ちた。
「私……分かっていなかった……ただ、周りが悪いと……」
「ふふ。さすがシャルはかしこーい!」
ジョエルが無遠慮に、シャルリーヌの握りしめている拳を、その手のひらでぼんぽん、として――そのまま優しく握る。
「まー、何されても黙ってるレオナが、一番悪いと僕は思うよー。それはシャルも、そう思うでしょー?」
「……ええ……でもレオナはそういうの、達観してる」
「そだねえ。僕はねえ、時々、レオナは違う世界から来たんじゃないかなーって感じるよー」
「え?」
ま、そんなわけないけどさ、とジョエルは笑う。
「だって、僕らと目線違う時って、ない?」
「ある……」
「だからさー、多分、僕らが想像つかないことを考えて、決めたんでないのー? あんま深く悩まなくて良いと思うよー。じゃなきゃ、公爵令嬢が婚約もせず他国へ留学だなんて、思いつかないっしょー!」
「はあ、それはほんとにそうね」
婚約もせず。
ローゼンでなければ、大問題である。
「諦めちゃって、ないよね……」
シャルリーヌは、思わず呟いた。
何気なく、自分の拳の上に乗っている、ジョエルの手の甲を見る。よく見ると、いくつも切り傷のあとがある。
「んー?」
「レオナ。恋愛結婚」
「ぶふ! 留学して距離離れても、変わらず好きってことなんじゃなーい?」
「あ、そっか」
「僕らは、ひたすら応援するだけ、だねー」
「ふふ」
「お? やっと笑ったー!」
「だって。バレすぎよね」
「うん。二人ともバレすぎだねー。知らぬは本人ばかりかー」
「なのに……」
シャルリーヌは、切なくなる。
――好きなのに、離れるだなんて。
私には、無理だわ。
ジョエルに視線を移すと、いつの間にかジョエルもシャルリーヌを見つめていた。
途端にかかっ、と頬が熱くなる。
「なに見てるのよっ!」
「えぇー! ひどーい!」
「うるさい! なによこの手ぇ! どけて!」
ばちん、とジョエルの手の甲を叩く。
「いたぁっ!」
さすがに、ジョエルのその声で
「おい、大丈夫か?」
「おやおや」
ラザールとジャンルーカが気づき、近寄ってきた。
「大丈夫です!」
「えぇ……僕の手なんだけどー?」
「いいの!」
「いーけどさー。さ、夜遅いから、僕がバルテ家まで送るねー」
よっこらしょ、と立ち上がり差し出されたその手を、シャルリーヌはつい意識してしまい――
「? シャル?」
「な、なんでもないわ!」
取るのを無駄に躊躇ってしまったのだった。
※ ※ ※
「もちろん、あのような事件の後で、橋渡しをお願いするのは、無茶で無礼なことだと分かっている」
タウィーザは、ゼルとともにベルナルドに対し、再度協定についての話をしていた。最後のお願い、といったところだ。
「だが今は……アザリーは本当に国としての瀬戸際に立っていると言っても、過言ではない」
「そこまで暴露しても良いのですかな?」
「信頼を得るためには、腹芸などしない」
「ふ。懸命です、殿下」
ベルナルドは、この若い王子に厳しくも温かい言葉を投げた。
「国は、一朝一夕では変わらないでしょう。ですが、その一歩が重要です。変革には血が伴う。お覚悟は、おありかな?」
「ベルナルド殿。言うまでもない。この命を賭けて」
「ならばローゼンは、殿下の技量を見極めた上で、後ろ盾にもなりえるでしょう。但し」
「ただし?」
「利は、きっちり頂く。良いですかな?」
「ははは! さすが剛腕の呼び声高き、氷の宰相!」
二人は、がっしりと握手を交わした。
ゼルは――
「俺にはこのような外交などできないが。なにか役に立てることがあれば、その」
ゼルなりにその葛藤を、ベルナルドにぶつける。
「ゼル君。今の君にできることは、君の責務を果たし、闘神の名を汚さない人物に成ることではないかな」
「責務……闘神……」
「難しいことは、一人で抱えず。いつでもローゼンを訪ねると良い。レオナが留学した後でも、ね」
ぐ、とゼルは肩に力を入れて、深く礼をした。
「ありがたく」
※ ※ ※
「ねえ、行くの? ジンも」
「う……たぶん」
「そっか……」
「テオ。ごめんな、良くしてもらってるのに」
「そんなの。気にしなくて良いんだよ」
「でももし帰って来たら、恩返ししたい」
「恩なんて感じなくて良いよ――その代わりさ、手紙書いてね」
「! ぐす、もちろん!」
ジンライにも、それが『ずっと友達でいてね』と同じ意味なのは分かった。
「泣き虫は、我慢しないとだね」
「ずび、うん。ずば」
「うくくく。鼻水で返事とか」
「ぶはへ」
「きったな!」
笑いながらテオは、ジンライにハンカチを差し出す。
そして――
「ジン、僕もね。決めたことがあるんだ」
「……そか、ついに」
「うん」
「大丈夫?」
「うん。決めたから」
テオの目の強い光を、ジンライは眩しく思い。
「ずっと、応援する。ぐすす」
「ありがと!」
二人で、笑った。
0
お気に入りに追加
882
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
王女の影武者として隣国に嫁いだ私は、何故か王子に溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
王女アルネシアの影武者である私は、隣国の王子ドルクス様の元に嫁ぐことになった。
私の正体は、すぐにばれることになった。ドルクス様は、人の心を読む力を持っていたからである。
しかし、両国の間で争いが起きるのを危惧した彼は、私の正体を父親である国王に言わなかった。それどころか、私と夫婦として過ごし始めたのである。
しかも、彼は何故か私のことをひどく気遣ってくれた。どうして彼がそこまでしてくれるのかまったくわからない私は、ただ困惑しながら彼との生活を送るのだった。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
【完結】やり直しの人形姫、二度目は自由に生きていいですか?
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「俺の愛する女性を虐げたお前に、生きる道などない! 死んで贖え」
これが婚約者にもらった最後の言葉でした。
ジュベール国王太子アンドリューの婚約者、フォンテーヌ公爵令嬢コンスタンティナは冤罪で首を刎ねられた。
国王夫妻が知らぬ場で行われた断罪、王太子の浮気、公爵令嬢にかけられた冤罪。すべてが白日の元に晒されたとき、人々の祈りは女神に届いた。
やり直し――与えられた機会を最大限に活かすため、それぞれが独自に動き出す。
この場にいた王侯貴族すべてが記憶を持ったまま、時間を逆行した。人々はどんな未来を望むのか。互いの思惑と利害が入り混じる混沌の中、人形姫は幸せを掴む。
※ハッピーエンド確定
※多少、残酷なシーンがあります
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2021/07/07 アルファポリス、HOT3位
2021/10/11 エブリスタ、ファンタジートレンド1位
2021/10/11 小説家になろう、ハイファンタジー日間28位
【表紙イラスト】伊藤知実さま(coconala.com/users/2630676)
【完結】2021/10/10
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
【短編】冤罪が判明した令嬢は
砂礫レキ
ファンタジー
王太子エルシドの婚約者として有名な公爵令嬢ジュスティーヌ。彼女はある日王太子の姉シルヴィアに冤罪で陥れられた。彼女と二人きりのお茶会、その密室空間の中でシルヴィアは突然フォークで自らを傷つけたのだ。そしてそれをジュスティーヌにやられたと大騒ぎした。ろくな調査もされず自白を強要されたジュスティーヌは実家に幽閉されることになった。彼女を公爵家の恥晒しと憎む父によって地下牢に監禁され暴行を受ける日々。しかしそれは二年後終わりを告げる、第一王女シルヴィアが嘘だと自白したのだ。けれど彼女はジュスティーヌがそれを知る頃には亡くなっていた。王家は醜聞を上書きする為再度ジュスティーヌを王太子の婚約者へ強引に戻す。
そして一年後、王太子とジュスティーヌの結婚式が盛大に行われた。
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる