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学園入寮編

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ロビーにつくと、荒瀬先輩と番らしき人物、後は寮長ペアがいた。

「お待たせしました。」
「大丈夫だ。てか、寝てる…?」
荒瀬が声をかけてくれたが、全員の視線は櫂斗に抱かれている時雨に注目している。

「すみません、疲れて寝てしまってて。食堂には行くって言われたのでそのまま連れて来ました。暫くしたら起きると思うので。」

「お、おう。わかった。あ、こっちは俺の番、蓮見羽衣(はすみうい)。俺たちは2年だから1つ上な。かたっ苦しいのは嫌いだから、気楽に接してくれ。」
「蓮見です。ごめんね、無理矢理じゃなかった?こー君強引な所あるから…。」
こー君とは荒瀬の事だろう。

「来栖櫂斗です。今は寝てますが番の月見里時雨。よろしくお願いしますね。蓮見先輩。食堂利用したいと思っていたので有難いです。」
「それなら良かった。月見里君起きたら、また紹介してね。」
「はい。」

「さ、自己紹介も終わった事だし、向かうか。」
吾妻山寮長が促し、6人で歩き出す。

「いやー、しかし、驚いたわ。5階に入るって聞いてはいたが、まさか来栖が来るとは思わんかった!」
「確かに。中等部では番はいなかったよね?びっくりしたよ。」

「ああ、シグと出会ったのは外部オリのあった日なので、まだ一月も経ってませんからね。」
中等部では3年間、生徒会にいたため、行事などで櫂斗の事を知っていたのだろう。

「えええっ!そんな直ぐに番ったのか⁈意外だなぁ!」
全員が驚いた様で、吾妻山でさえも目を見開いている。

「声少し落として下さい。運命の番なんですよ。他にも事情はありますが、誰にもちょっかいを出されたくないので話し合って入学前に。両家の同意もあるので、問題ありません。」

「運命の番か。それまた凄いな。まぁ、俺も来栖はどこか一線を引いている様な感じがしていていたから、独占欲丸出しで、驚いている。」
吾妻山と白水は幼馴染らしく、運命では無いが、お互い気持ちは同じで1年の末に番ったらしい。

「来栖君、月見里君学校でも気にかけててね。君、中等部から人気だったから、Ωだけじゃなくてαにも注目されているから。
月見里は外部からの進学みたいだし、もしかしたら嫉妬した人に危害を加えられるかもしれない。注意して。」
「高等部もそんな感じなんですか?中等部と比べて、その辺は整理されていると伺いましたが。」
「中等部よりは分別ついてるとは思うけど、ゼロじゃないよ。特に、高等部でも生徒会は人気だからね。無いとは言い切れない。君はあの来栖だし、社交的に家の繋がりがほしいものが月見里君を利用しようとするかもしれない。」

高等部でも注意しなければならないのかとうんざりする。
時雨に危害を加えようとするものもいるかも?
手出した瞬間にそいつがどうなるかわからないが、そんな事も無いように時雨からなるべく離れないようにしようと決意する。元からそのつもりだったが。

「ありがとうございます。生徒会で、俺がいない時は少し頼るかもしれません。」
「全然いいよ。こー君も部活で遅くて1人の時も多いから。ああ、番寮のΩで都合があえばになるんだけど、毎週水曜日に誰かの部屋で集まって雑談してるんだ。月見里君も誘う予定何だけど、大丈夫?」
横からおずおずと白水も声を出した。

「あ、あの、ほんとに、ただ、あった事とか、情報共有した方がいい事なんかを、話してるだけと言うか…。Ω同士、にしか、わかりにくい事も、あるので…」
吾妻山にへばりつきながら、変な集まりでない事を強調する。

「ああ、その間はその部屋のα側は追い出されるからな。俺たちも俺たちで、αで集まって話をしている。来栖も誘うつもりだったが、難しいか?」
学園の事はなるべく把握しておきたい。
「いえ、お邪魔します。シグも知り合いはいないので、先輩方が仲良くしてくれると嬉しいです。多分、行くと思うのでよろしくお願いしますね。」

「やりーっ!よろしくなぁ!あ、残りの2組も全然いいやつだから安心しろよ!今実家に帰ってて寮にいないから、会えるのは歓迎会の時かな~」

そんなこんなで話しながら歩いていると、高等部の校舎に着いていた。

「食堂は一階にある。1年はちょいと遠いな。ああ、2階は基本的に中等部と同じで、役職持ちや教師が利用するから、一般生徒は上がれない。」
「わかりました。自炊するつもりなので、あまり利用しないと思いますが、気に留めときます。」
「自炊するんだな。意外だ。お堅い奴だと思ってたけど、案外普通なんだな。」

「普通ですよ。中等部も朝夜は作ってましたから。」
周りにどう思われていたんだと疑問に思いながらも、先輩に案内されるままについていくと、食堂が近いのか、人がパラパラといる。

時雨を抱いているせいか、自分自身の認知度か、はたまた、先輩方のせいなのかわからないが、通り過ぎるたびに、ギョッとされる。

「お前は目立ってんな~」
どうやら、荒瀬先輩曰く俺が原因らしい。

「そりゃそうだろ。鉄壁と言われた来栖生徒会長が、番寮に入って番抱いて歩いてんだから。」
「鉄壁じゃないです。はぁ…今から気が重いんですけど。」


食堂に無事に着き、扉を開けると中は食事時で賑わっていた。
丁度、6人席が空いたため、そこに全員で座る。
注目されているのはわかるが、もう気にするまい。

「月見里君、起きないねぇ。どうする?先に頼む?」
「はい。多分、起きてもそんなに食べないと思うので。」
フードを少しめくり、様子を確認する。まだ気持ちよさそうに眠っている。体温は少し暖かいが、熱が出ている様子はない。

タッチパネルで日替わり定食を頼む。料理が出来たら、パネルで呼び出しがかかるため受け取り口に取りに行くシステムだ。
時雨がいるため、吾妻山先輩が代わりに持ってきてくれた。

「ありがとうございます。」
「気にするな。さぁ、食べようか。」
全員でいただきますをして、橋をつける。

今日は鯖の味噌煮定食らしく、鯖の味噌煮にキャベツサラダ、味噌汁と、ほうれん草の小鉢が付いている。

話しながら半分ほど食べ進めると、匂いがしたのか、周囲の音かわからないが、腕の中がもそりと動いた。

「シグ、起きた?」
フードをまたずらして確認する。
「………うん…。おはょ…。」
ぐりぐりと眠たい目を起こす様に擦り、もたれかかったまま櫂斗を見上げている紫眼がうつる。

「おはよう。食堂行くって言ったのに起きないから、そのまま連れてきたよ。何か食べるか?」
「………………食堂⁈」
時雨ははっとした様に飛び起きた。
その瞬間、フードが取れて時雨の顔が露わになる。

「……綺麗…。」
思わずと言った様に、隣の1番近い席にいた蓮見が呟いた。

「…へ?」
時雨は状況がまだ掴めず、知らない人に囲まれているのに気づき、隠れる様に櫂斗の胸に顔を埋めた。

そんな様子をみて、箸を置き頭を撫でて安心させる。
「大丈夫だよ。同じ席についてるのは寮長達と、番寮の4階にいる先輩。」

「そうだぜぇ!やっと起きたな!俺は荒瀬広大!来栖の隣にいるのは番の蓮見羽衣な!よろしくっ!」
時雨は一瞬大きな声にビクッとしたが、櫂斗を一瞥し、櫂斗が大丈夫だと頷いた為、おずおずと顔を上げた。

「…失礼しました。月見里、時雨です。よろしく、お願いします。」
緊張した様子でペコリとお辞儀をするとまた顔を埋めた。

一方時雨はパニックである。今まで、ほとんど同年代近くと関わって来なかった為、人見知りが発生している。
良い匂いに包まれて安心して部屋で寝ていたと思ったら食堂にいて、知らない人に囲まれているのだから。

櫂斗の服を握る手に力が入っているのをみて、宥める様に背中を叩く。
「頑張ったな。大丈夫だよ。シグ、何か食べよう。先輩、タブレットとってもらえますか?」
吾妻山先輩が渡してくれ、時雨に見るように言う。
抱きついたまま、視線だけそっちを向き、櫂斗の操作する手を眺めている。

「食堂はタブレットで頼むんだ。料理ができたら、取りに行く。
シグ、リゾットなら食べれそう?」
「あんまり、お腹空いてない…。」
「半分食べてやるから、な?」
食欲はまだ戻らないらしい。昼間と同じようになりそうだ。

とりあえず、トマトリゾットを注文するとまた取りに行くのを吾妻山先輩が行ってくれた。

「すみません、ありがとうございます。」
「いや、大丈夫だ。月見里、少しでも食べた方がいいぞ。」
「…ありがとう、ございます。はい…」
とりあえず、また顔を上げて食事の方を向いたが俯いたまま手がつかない。

「シグ。無理そう?」
「ひと口でいい…?」
「ああ。ひと口でいいから。」
「わかった。」
スプーンを持って、ひと口掬うとパクッと口に入れた。
「どう?」
「おいしい。けど、もういい。」
ギブアップの声が聞こえた為、残りを平らげる。元々リゾットは量が無いため、櫂斗により一瞬で無くなった。
メンバーも食事を終えたため、寮に帰る事になった。

「シグ、歩く?」
「……靴。」
「あ。すまん。我慢してくれ。」
抱いて出てきたため、時雨に靴を履かせていなかった。帰りも抱き上げて帰る事が決まり、またフードに顔を埋める事となってしまったのだった。
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