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出会い
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時雨が目を覚ますと、目に入ったのは真っ白な見慣れた空間であった。
また、倒れてしまったのかと状況を思い出す。
説明会に行って、見学が終わって帰ってたんだっけ…
それで、あの人にあって、気付いたらここに居た…
って事は、あの人の目の前で倒れちゃった⁈
凄い迷惑かけたなぁ。申し訳ない。
でも、あのアールグレイみたいな香りはとっても良い香りだったなぁ。
そう言えば、この部屋もそんな匂いがする。
お見舞いに来てくれていたのだろうか。
そう思いながら、病室から見える景色をぼんやり眺めながら過ごしていた。1週間近く寝たきりの身体は重くて、上手く動かせない。
暫くして、病室の扉がガラリと開き、アールグレイの香りが強くなる。
彼だ!!
「ただいま。シグ。」
突然の登場に驚くも、名前を呼ばれるだけで胸が満たされる気がする。
「ぉかぇり、なさぃ…」
咄嗟に返した言葉は自分が思う以上にか細いものであった。
だが、しっかりと彼には届いたのだろう。
「ああ、ただいま。」
というや否や、時雨を優しく抱きしめ、香りで包んでくれる。
暫くそのままで抱き合っていた。
「目の前で、倒れちゃって、ごめんなさい。ご迷惑を、おかけしました。月見里、時雨と、申します。」
「心配はしたが、迷惑はかかっていないよ。俺は来栖櫂斗。櫂斗でもカイでも好きなように呼んでほしい。」
「櫂、斗、さん。」にっこり笑って名前を呼ぶ。
「ああ。」
優しい眼で見つめ返された。
「出会ってすぐではあるが、俺は時雨に一目惚れをした。もう離すことは出来ないくらいに。俺と番ってくれないか?」
とんだ急展開だ。番って欲しいという言葉に嬉しくもあり、困惑もある。
「…櫂斗さんの、お申出は、大変、嬉しいです。」
「じゃあ!」
「ですが、出来ません。」
「……え…?なぜ…」
「見ての通り、僕は、身体に、欠陥があります。番は、αにとっても、唯一無二であると、存じます。
多分、そんなに、長くないでしょう。僕は、相手を不幸に、したくない。誰とも、番わないと、決めている、のです。」
家族にも伝えていなかったが、どうせ永くは生きられない。時雨は誰とも番うつもりは無かった。例えそれが運命でも。
高校進学も、死ぬ前に唯一、年相応に学校に通いたいという思いもあった。
そこで運命と出逢うとは思ってもいなかったが。
「……長くないから番えないと?そんな理由では納得できないな。」
「…え?どう、して?」
「人はいつ死ぬかわからない。余命1年と宣告されたものが20年生きた場合もある。時雨の命だって、後50年生きるかもしれない。医療の進歩は目覚ましいしな。わからない未来を決めつけて、生きる希望を無くしているのは時雨だろう。
俺が生きる意味になってやる。俺の側で、生きろ!」
時雨は思わず呆然とする。なんで、どうして、だって、治療を繰り返したところで、全く治らないし、少しずつ悪くなる一方だ。どうして、そんな事が言えるの……?
「…ぅ…ぃ。」
「ん?何だ?」
「うるさい!50年生きるかも?医療の進歩?例え、例え生きられたとして、これまでの様に、ベッドの上で、ただ、生きながらえるだけの治療を、繰り返して、やりたい事も出来ずに、ただ生きるだけなら、すぐに死んだ方がマシだ!!
貴方なんかに、出会いたくなかった!出て行って!!」
ゼーハーと苦しい呼吸をさせながら、時雨は思いっきり叫んだ。
「…時雨…。」
「出て行って!出てってよ…
もう、疲れたんだよ。高校も、この調子じゃ許してくれない。今後、君と会う事は無いよ。さよなら。」
そう言うと、時雨は乱れる呼吸の中、櫂斗に背を向け布団に潜り丸まった。
「すまない。簡単に言って良い事では無かったな…。でもな、俺はお前と、月見里時雨と共に生きていたい。俺を、生きる意味にして欲しいと言ったが、反対なんだ。
俺が、俺が生きていけるように、時雨が支えて欲しい。
俺の横に立つのは、月見里時雨以外いないんだよ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シリアス展開続いてますね…
もうすぐシリアスは終わる予定です…
明るい話書きたい…
また、倒れてしまったのかと状況を思い出す。
説明会に行って、見学が終わって帰ってたんだっけ…
それで、あの人にあって、気付いたらここに居た…
って事は、あの人の目の前で倒れちゃった⁈
凄い迷惑かけたなぁ。申し訳ない。
でも、あのアールグレイみたいな香りはとっても良い香りだったなぁ。
そう言えば、この部屋もそんな匂いがする。
お見舞いに来てくれていたのだろうか。
そう思いながら、病室から見える景色をぼんやり眺めながら過ごしていた。1週間近く寝たきりの身体は重くて、上手く動かせない。
暫くして、病室の扉がガラリと開き、アールグレイの香りが強くなる。
彼だ!!
「ただいま。シグ。」
突然の登場に驚くも、名前を呼ばれるだけで胸が満たされる気がする。
「ぉかぇり、なさぃ…」
咄嗟に返した言葉は自分が思う以上にか細いものであった。
だが、しっかりと彼には届いたのだろう。
「ああ、ただいま。」
というや否や、時雨を優しく抱きしめ、香りで包んでくれる。
暫くそのままで抱き合っていた。
「目の前で、倒れちゃって、ごめんなさい。ご迷惑を、おかけしました。月見里、時雨と、申します。」
「心配はしたが、迷惑はかかっていないよ。俺は来栖櫂斗。櫂斗でもカイでも好きなように呼んでほしい。」
「櫂、斗、さん。」にっこり笑って名前を呼ぶ。
「ああ。」
優しい眼で見つめ返された。
「出会ってすぐではあるが、俺は時雨に一目惚れをした。もう離すことは出来ないくらいに。俺と番ってくれないか?」
とんだ急展開だ。番って欲しいという言葉に嬉しくもあり、困惑もある。
「…櫂斗さんの、お申出は、大変、嬉しいです。」
「じゃあ!」
「ですが、出来ません。」
「……え…?なぜ…」
「見ての通り、僕は、身体に、欠陥があります。番は、αにとっても、唯一無二であると、存じます。
多分、そんなに、長くないでしょう。僕は、相手を不幸に、したくない。誰とも、番わないと、決めている、のです。」
家族にも伝えていなかったが、どうせ永くは生きられない。時雨は誰とも番うつもりは無かった。例えそれが運命でも。
高校進学も、死ぬ前に唯一、年相応に学校に通いたいという思いもあった。
そこで運命と出逢うとは思ってもいなかったが。
「……長くないから番えないと?そんな理由では納得できないな。」
「…え?どう、して?」
「人はいつ死ぬかわからない。余命1年と宣告されたものが20年生きた場合もある。時雨の命だって、後50年生きるかもしれない。医療の進歩は目覚ましいしな。わからない未来を決めつけて、生きる希望を無くしているのは時雨だろう。
俺が生きる意味になってやる。俺の側で、生きろ!」
時雨は思わず呆然とする。なんで、どうして、だって、治療を繰り返したところで、全く治らないし、少しずつ悪くなる一方だ。どうして、そんな事が言えるの……?
「…ぅ…ぃ。」
「ん?何だ?」
「うるさい!50年生きるかも?医療の進歩?例え、例え生きられたとして、これまでの様に、ベッドの上で、ただ、生きながらえるだけの治療を、繰り返して、やりたい事も出来ずに、ただ生きるだけなら、すぐに死んだ方がマシだ!!
貴方なんかに、出会いたくなかった!出て行って!!」
ゼーハーと苦しい呼吸をさせながら、時雨は思いっきり叫んだ。
「…時雨…。」
「出て行って!出てってよ…
もう、疲れたんだよ。高校も、この調子じゃ許してくれない。今後、君と会う事は無いよ。さよなら。」
そう言うと、時雨は乱れる呼吸の中、櫂斗に背を向け布団に潜り丸まった。
「すまない。簡単に言って良い事では無かったな…。でもな、俺はお前と、月見里時雨と共に生きていたい。俺を、生きる意味にして欲しいと言ったが、反対なんだ。
俺が、俺が生きていけるように、時雨が支えて欲しい。
俺の横に立つのは、月見里時雨以外いないんだよ。」
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シリアス展開続いてますね…
もうすぐシリアスは終わる予定です…
明るい話書きたい…
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