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32話 ぎこちない再会
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扉を叩く音がする。
コンコン、コンコンコンと子気味良く。
いつの間にか自分は二度寝を貪っていたようで自分の部屋の扉が叩かれていると気づくのに少しの間を使う。
うるさい。
惰眠をしておきながら随分ないいようだと思う。
でも今は誰にも会う気にはなれなかった。
コンコンコン、コンコンコンコン。
しつこく叩かれる扉。
コンコンコンコンコン、コンコン……ドンドンドンドン!!
叩かれる音は次第に激しくなっていき、仕舞いには扉を壊さんばかりに激しく叩かれる。
しつこい、これだけ無視しているのに諦めの悪い奴だ。
しかたなくベットから出てゆっくりと扉を開ける。
「あ!やっと開いた~、もう遅いよ~」
扉の隙間から聞きなれた声と見慣れた少女の顔がある。
「……」
急いで扉を閉めようとするがガッチリと扉は捕まれビクともしない。
「何閉めようとしてるのさ~、せっかくお見舞いに来てあげたのに~」
少女はにこやかに笑うが目だけは何故か笑っていない。
「ラミア、悪いけど今日は帰ってくれ」
「いつまで引きこもってるつもりだよ~」
お帰り願おうとしても彼女は帰ろうとせずむしろ食い気味で扉にへばりつく。
「いつまでって……俺は今日起きたんだ、まだ色々と整理がついてない悪いが帰ってくれ……」
「えー、いいじゃんか~。久しぶりに話そう、よっ!」
ラミアはいっそう手の力を強めて扉をこじ開ける。
チッ……。
酷く乾いた苛立たしさを感じさせる音が響く。
「悪いけど、今日は本当に帰ってくれないか……」
誰かに心の底から軽蔑の眼差しで睨んだのは初めてではないだろうか。
そう思う程に今、俺は酷く彼女に腹が立ち、嫌悪感を抱いていた。
……………。
「……ごめん、少し悪ふざけがすぎたね。今日は帰るよごめんね……」
少しの静寂のあと彼女はぎこちなく笑ってあ部屋を出る。
「……」
その言葉に返事はせず、ただ無言で彼女のせなかを見送った。
……つくづく自分が嫌いになる。
ただ俺を心配して来てくれただけなのに、もう少し何か言い方があっただろう……。
アニスはいなくなった……もう、会えない。
右手の中にある赤い魔石を見つめてその事実を再確認する。
グゥ~。
落ち込んでいようが腹はすく、かれこれ二ヶ月も食べていなかったのだから当たり前だろう。
しかし今はちょうど食堂がやっていないのでベットに腰を下ろし、ただ何もせずぼうっと窓の外を見つめて時間を過ごした。
・
・
・
夜だ。
あれから糸の切れたあやつり人形のように動かず、あの時のことが頭の中で何度も何度も繰り返されていた。
……グゥ~。
もう何度鳴ったかわからない腹の虫を聞いて、食堂へと向かう。
もう、人も少ない頃だろう。
食堂へつくと案の定人は少なく、中はがらんとしていた。
「はい、お待ちどうさん!」
「ありがとうございます」
「あ!ちょっと待った。あなたレイルくんかい?」
食堂のおばさん、アリスさんに夕食をもらい席に行こうとすると引き止められる。
「はい、そうですけど……」
呼び止められた理由がわからず、困惑する。
「いや、ごめんね。いっつもローグくんとご飯食べに来てたけど最近見ないからどうしたのかなと思ってね。いっぱい食べてね!」
「……どうも」
どうやらアリスさんはローグと一緒に俺の事も覚えてくれていたようだ。
少し複雑な気分になりながら席へとつく。
久しぶりの食事に口の中は自然と唾液で溢れそうになる。
今夜の献立は牛の肉を香辛料などで焼いたものとサラダ、スープにパンととても豪華だ。
やばい、美味そう。
脳がそう理解した瞬間、一心不乱に食事をかきこむ。
満腹とまではいかないが一瞬で食事を食べ終わり、コップに入った水をも飲み干す。
「相棒!!」
すると遠くから誰かを呼ぶ声が聞こえる。
こんな変な呼び方をするのは1人しかおらず、そして呼ばれ慣れてもいる。
「ローグ……」
今はあまり会いたくないと思いながら声のした方を向く。
そこにはマキアの姿もあり心配そうな顔でこちらを見つめる。
「無事でよかったよ!二ヶ月も起きてないって聞いたから……」
ローグはこちらの席に食い入るように来て肩を掴む。
「ラミアさんがお昼頃にレイルさんの所に行くと言っていたのですが、それから会えてなくてどうだったのか心配していたんです」
マキアはほっとした様子でローグの後ろをついてくる。
「……」
「どうしたんだよ相棒?僕達の顔忘れちゃった?」
何も答えない俺にローグは不思議そうな顔をする。
「……いや、二人ともごめん、心配をかけた」
食べ終わった食器を持って席を立つ。
「もう行くのかい?もう少し話を……」
「ごめん、まだ少し疲れてるんだ。また今度な……」
適当な理由をつけてすぐに食堂から出る。
ダメだ、アイツらを見ると色々なことを思い出してしまう。
足は自然と部屋の方ではなく、外へと向かう。今は外出禁止時間だが気にせず、真っ直ぐに向かう。
外はひんやりと肌寒く、静寂が包んでいた。
空には雲ひとつなく黄色い月がひとつ浮かんでいた。
あの時見たのと同じだ……。
ポケットから赤い魔石を取り出して見つめる。
「今夜も月が綺麗だなアニス……」
もう届かない言葉を少女に向かって呟く。
コンコン、コンコンコンと子気味良く。
いつの間にか自分は二度寝を貪っていたようで自分の部屋の扉が叩かれていると気づくのに少しの間を使う。
うるさい。
惰眠をしておきながら随分ないいようだと思う。
でも今は誰にも会う気にはなれなかった。
コンコンコン、コンコンコンコン。
しつこく叩かれる扉。
コンコンコンコンコン、コンコン……ドンドンドンドン!!
叩かれる音は次第に激しくなっていき、仕舞いには扉を壊さんばかりに激しく叩かれる。
しつこい、これだけ無視しているのに諦めの悪い奴だ。
しかたなくベットから出てゆっくりと扉を開ける。
「あ!やっと開いた~、もう遅いよ~」
扉の隙間から聞きなれた声と見慣れた少女の顔がある。
「……」
急いで扉を閉めようとするがガッチリと扉は捕まれビクともしない。
「何閉めようとしてるのさ~、せっかくお見舞いに来てあげたのに~」
少女はにこやかに笑うが目だけは何故か笑っていない。
「ラミア、悪いけど今日は帰ってくれ」
「いつまで引きこもってるつもりだよ~」
お帰り願おうとしても彼女は帰ろうとせずむしろ食い気味で扉にへばりつく。
「いつまでって……俺は今日起きたんだ、まだ色々と整理がついてない悪いが帰ってくれ……」
「えー、いいじゃんか~。久しぶりに話そう、よっ!」
ラミアはいっそう手の力を強めて扉をこじ開ける。
チッ……。
酷く乾いた苛立たしさを感じさせる音が響く。
「悪いけど、今日は本当に帰ってくれないか……」
誰かに心の底から軽蔑の眼差しで睨んだのは初めてではないだろうか。
そう思う程に今、俺は酷く彼女に腹が立ち、嫌悪感を抱いていた。
……………。
「……ごめん、少し悪ふざけがすぎたね。今日は帰るよごめんね……」
少しの静寂のあと彼女はぎこちなく笑ってあ部屋を出る。
「……」
その言葉に返事はせず、ただ無言で彼女のせなかを見送った。
……つくづく自分が嫌いになる。
ただ俺を心配して来てくれただけなのに、もう少し何か言い方があっただろう……。
アニスはいなくなった……もう、会えない。
右手の中にある赤い魔石を見つめてその事実を再確認する。
グゥ~。
落ち込んでいようが腹はすく、かれこれ二ヶ月も食べていなかったのだから当たり前だろう。
しかし今はちょうど食堂がやっていないのでベットに腰を下ろし、ただ何もせずぼうっと窓の外を見つめて時間を過ごした。
・
・
・
夜だ。
あれから糸の切れたあやつり人形のように動かず、あの時のことが頭の中で何度も何度も繰り返されていた。
……グゥ~。
もう何度鳴ったかわからない腹の虫を聞いて、食堂へと向かう。
もう、人も少ない頃だろう。
食堂へつくと案の定人は少なく、中はがらんとしていた。
「はい、お待ちどうさん!」
「ありがとうございます」
「あ!ちょっと待った。あなたレイルくんかい?」
食堂のおばさん、アリスさんに夕食をもらい席に行こうとすると引き止められる。
「はい、そうですけど……」
呼び止められた理由がわからず、困惑する。
「いや、ごめんね。いっつもローグくんとご飯食べに来てたけど最近見ないからどうしたのかなと思ってね。いっぱい食べてね!」
「……どうも」
どうやらアリスさんはローグと一緒に俺の事も覚えてくれていたようだ。
少し複雑な気分になりながら席へとつく。
久しぶりの食事に口の中は自然と唾液で溢れそうになる。
今夜の献立は牛の肉を香辛料などで焼いたものとサラダ、スープにパンととても豪華だ。
やばい、美味そう。
脳がそう理解した瞬間、一心不乱に食事をかきこむ。
満腹とまではいかないが一瞬で食事を食べ終わり、コップに入った水をも飲み干す。
「相棒!!」
すると遠くから誰かを呼ぶ声が聞こえる。
こんな変な呼び方をするのは1人しかおらず、そして呼ばれ慣れてもいる。
「ローグ……」
今はあまり会いたくないと思いながら声のした方を向く。
そこにはマキアの姿もあり心配そうな顔でこちらを見つめる。
「無事でよかったよ!二ヶ月も起きてないって聞いたから……」
ローグはこちらの席に食い入るように来て肩を掴む。
「ラミアさんがお昼頃にレイルさんの所に行くと言っていたのですが、それから会えてなくてどうだったのか心配していたんです」
マキアはほっとした様子でローグの後ろをついてくる。
「……」
「どうしたんだよ相棒?僕達の顔忘れちゃった?」
何も答えない俺にローグは不思議そうな顔をする。
「……いや、二人ともごめん、心配をかけた」
食べ終わった食器を持って席を立つ。
「もう行くのかい?もう少し話を……」
「ごめん、まだ少し疲れてるんだ。また今度な……」
適当な理由をつけてすぐに食堂から出る。
ダメだ、アイツらを見ると色々なことを思い出してしまう。
足は自然と部屋の方ではなく、外へと向かう。今は外出禁止時間だが気にせず、真っ直ぐに向かう。
外はひんやりと肌寒く、静寂が包んでいた。
空には雲ひとつなく黄色い月がひとつ浮かんでいた。
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もう届かない言葉を少女に向かって呟く。
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