上 下
10 / 17
第二章

開店一ヶ月目~閻魔様悩み相談にやってくる。&地獄編おまけ

しおりを挟む
 開店一ヶ月目。

 閉店の19時を過ぎてからお客さんが来た。それはなんと閻魔様(えんま)だった。

 閻魔様といえば、死者を天国と地獄に仕分けしている人物。見た目は人間の格好をしている。角も隠しているらしい。
 閻魔様だから怖い感じだと思ったけど、とても優しい人物。忙しい筈(はず)なのに果たして、どんな理由で人間界に来たのか謎である。

「2人とも久しぶり。」

「えんちゃん久しぶり。人間界に何しに来たんだ?」

「アゼル!閻魔様と呼べよ。」

「いいや。俺は、昔からえんちゃんだ。」

「もう!どっちでも良いから。閻魔様、用があって人間界に来たんですよね。閻魔様、口に合うか分かりませんが、お茶どうぞ。」

「すまない。お茶を頂こう。あぁ・・・そうそう、悩みを聞いてもらう為に来た。」

「閻魔様に、悩みなんてあるんですか?」

「最近、死者が多くて…なんでこんなに死者が増えているのか、調査に来た。本当は、弟子に行かせようと思ったが、弟子には、私の仕事を任せてきた。」

「死者ですか?そんなに多いんですか?」

「人間界を見た限り、不満とストレスが充満している。どうしたものか・・・」

「ストレスなんて人を殴れば、解決するだろ」

「人を殴ると警察に捕まるぞ。」

「人間ってめんどくさいな。悩んだり、落ち込んだり、不満があると人のせいにする。だから、悪い悪魔に付け込まれるんだよな。」

「それが、人間。生きていれば、失敗も落ち込んだりもする。人間味があっていいことだろ。俺達は、人間じゃないから、人間と結婚することもできない。死ぬこともない。」

「まぁ、不死身だからな。でも、恋愛できないのは辛いな。店長とも仲良くなれたのに…」

「解決できない問題だわ。ストレスとは一生付き合わないといけない。ストレスをコントロールすると言っても怒りが収まらない時が私にもある。父に八つ当たりしてたからなぁ~」

「フフフ…解決はできないか…いい話を聞けた。私は、一度帰るとしよう。3人とも遅くまで悪かったな…」

「いえ…閻魔様の悩み事を聞けて良かったです。」

「俺も久しぶりに、えんちゃんと会えたし、悩み事は解決できなかったけど、楽しかったぜ。」

「悩み事を解決できなくてすみませんでした。」


開店一ヶ月~閻魔様やってくる2に続く







おまけ 閻魔様編

「えっと…お前は地獄だな。あんたは、天国行き。あぁ…疲れた。一日100万人以上の死者の仕分けをするのは、大変すぎる。礼(れい)、ちび。しばらくの間、仕事まかせてもいいか?」

「どこに行かれるんです?」

 背の小さい、ちびという男が答えた。ちびは、閻魔の手伝いをしているが、ちょっとドジのところがある。

「死者が、増えている理由が知りたい。もう一つは、私にも休暇がほしい。働いてばかりいると脳が疲れる。」

「閻魔様は、そんなに仕事してないでしょ! 仕事しているふり、しないでください。」

 話すこの女性は、礼と言って閻魔の弟子。死の狭間に迷い込んでいるところを閻魔が助けた。

「きちんと死者を分けているではないか! 仕事をさぼったことないぞ。」

「そうですよ~礼様。こう見えても閻魔様は、休みなく働いているのですからね。僕がしっかりと見ているから間違いありません!」

「ちびを味方につけて、何を企んでいるんですか?」

「企んでない。ただ…少しの間日本に行ってくるから留守番を頼もうと思っただけだ」

「仕事が、すっごく溜まってるんですよ!閻魔様がいなくなったら誰が死者の仕分けをするんですか!どれだけ大変か分かって日本に行くつもりですかぁ!」

礼は、閻魔が耳を塞ぐくらい大きな声で怒鳴った。

「礼…そんなに怒鳴らなくてもいいだろ。土産買ってくるから…な!」

「・・・・・・」

「閻魔様…礼様は無言で喋らない方が怖いんですよ。気をつけてくださいね。」

「わ、わかった。」

「閻魔様…たくさんお土産買ってきてくれるんですよね?」

「あぁ…もちろん! たくさんお土産買ってくる。」

「たくさんですよ! 約束ですからね!」

「約束する。(なんか怖いな…圧を感じる)」

「日本に行っても良いですよ。だたし!一日で帰ってきてください! 仕事、山積みですからね!」

「なるべく早く帰る」

「なるべくですか…ハハハハハ」

「いきなり笑い出しだしたぞ! 礼は、頭おかしくなったのか? ちび?」

「たぶん…大丈夫だとは思いますが、きっと仕事が多すぎて、笑いたくなったんだと思います。閻魔様! 今のうちに日本に行ってください。後は、僕が何とかしますから。」

「少しばかり不安だが…ちび、後は任せた。じゃ行ってくる。」

「僕に任せてください。閻魔様…行ってらっしゃい。(初めて閻魔様から頼まれたぁ! やった!)」

 閻魔が日本に行った後、ちびは一生懸命、礼を落ち着かせた。

「ちび…私が見てない時に閻魔様を送り出すなんて…ひどいんじゃない?」

「礼様…おかしな笑いしてたじゃないですかぁ?」

「あぁ?」

「ひぃ!」

「ちびぃ、罰として死者の仕分けをやりなさい。いつも閻魔様の味方をしてると痛い目に合うわよ!」

「礼様~それだけは許してくださいぃぃ」

 その後、ちびがどうなったかは誰も知らない。












しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

処理中です...