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特別編3:異世界

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「なんだあ?このガキ…」

と言いつつ少し後ろに下がって警戒するならず者勇者。

「ガキじゃない。真の勇者ソラ」
「そんなキメ顔で言われてもねぇ…まあいいわ。やっちゃいなさいソラ」
「ん、やっちゃう」

リオさんの指示に嬉しそうに頷くソラちゃん。

「気を付けろ、勇者ソラ。奴はとんでもない勇者だ」
「ん。大丈夫」

おじさんに軽く返事をしてエギルハンマー…じゃなくてエギル・エギラを水平に構えて一気に間合いを詰める。

「な!?コイツ…早…!!」
「えーい」

間の抜けた声と共にフルスイング。
身体がくの字に折れて真横に吹き飛ぶならず者勇者。ゴロゴロと転がって起き上がってくる。

おぉ…結構タフだね。

「な、なんだコイツ…」
「おー結構硬い」
「俺の能力はそんな攻撃じゃ貫けないぜ…ぐはっ」

効いてる効いてる。

「いくら硬くなっても衝撃は殺せないからね」
「ソラちゃんからしたらサンドバッグですね…」

見た感じスピードも大した事なさそうだしソラちゃんに勝てる所は何一つ無さそう。

「この剣が真の姿になる為の贄となるがよい~」
「コイツ、何を言って…うわあぁぁぁぁっ!?」

悪役みたいなセリフを言って、ソラちゃんは左右に横振りの連打を繰り返していく。ならず者勇者は吹き飛ぶ事も許されず、ほぼその場でめった打ち…。

硬質化が出来なくなったら死んじゃうよ?死んでもリスポーンするからいいのかな…。

「す、すびばぜんでじだ」
「なに?聞こえない~」

地面に倒れたならず者はソラちゃんに謝っているみたいだけど構わず剣?を振り下ろしている。

「ソラちゃん!そろそろやめてあげて」
「やり過ぎよ。ソラ」
「えー」

不満そうな声をあげながらも手を止めるソラちゃん。硬質化は最後まで作動させたままだったし、能力は結構優秀そうだね。

「た、助かった…ありがとうございます…」
「…アンタを助けたわけじゃない。これに懲りたら悪さなんてするんじゃないわよ」
「は、はい…」
「きっちり罪を償う事ね」

今回の罪ってダドさんに絡んだくらいかな?余罪がどれくらいあるのかは知らないし、抵抗する気力も無いみたいだからこのままダドさんに引き渡してよさそう。

「さすが聖剣を抜いた真の勇者様だ!格が違う」
「ん。どーって事ない」

ダドさんはならず者勇者を手早く縛り上げると自警団員に引き渡してお礼を言ってくる。
村の人達もソラちゃんの活躍を見ていたらしく大歓声か上がっていた。

引かれなくて良かった。

「それにしても頑丈な台座だな」

遠くから一部始終を見ていたんだろう、テュケ君が近くに来て話す。

「あれだけ叩いても少し欠けただけなんてね」
「もっと硬いものにぶつけないと」
「面倒だし魔法で壊しましょうか」
『やめておいた方が良い。我が融解するやもしれん』

エギル・エギラさんはリオさんの魔法の腕前は知らないだろうけど何かを察したみたい。

「ならねーちゃんの剣で切るのはどうだ?」
「剣ごと切れそうだよね」

私のディエスエグゼクリシオンだとやり過ぎちゃいそうなんだよね。

「そもそもその台座って何でできているのかしら」
「調べてみた方が良いかもしれないですね」

ちょっとした騒ぎがあったけどお祭りはそのまま続行。村長さんに台座について聞いてみたけど伝承とかが残っている様子ではなかった。

「まあ、こういう時はまず魔法で調べるのが定石よね」

リオさんが《ディテクト》の魔法で解析を始める。

「どうです?」
「おかしいわね。これは…」

リオさんは表示された内容を私達に教えてくれた。

【エギル・エギラの為に   が作成した台座】

「誰が作ったのか分からないのよ」
「表示がされない理由ってなんだ?」
「考えられるのは《ディテクト》が効かないか、作成者の名前が無いか、名前を表示する事が許されない者か、くらいかしら」

なるほど。

「神様が作ったとかですか?」
「それなら表示されないのも納得できるな」

まあ、こんな凄い剣だし神様が作ったとしたら色々納得できるね。

「抜けないのは本当の剣の持ち主じゃないからよね」
「ですよねー」

でも今更返すのもね。

「ま、しばらくこのままでいいんじゃない?」

ソラちゃんは剣を軽く振り上げながら呑気に言っている。

「ソラちゃんが良いならいいんだけど…」

さっきまで嫌がってたのに今は何だか機嫌良さそう。叩き心地が良かったのかな。

ーーーーーーー

その日は村でゆっくりさせてもらって次の日に魂探しを再開する事にした。

剣はソラちゃんが肩に担いで、元々の得物のハルバードはテュケ君が持つ事に。

「テュケ君ってハルバードも使えるの?」
「ダキアさん達に鍛えられたからな。大体の武器は扱えるぞ」

私も使おうと思えばいけるだろうけど、戦闘スタイルが全然違うからね。私の持ち味を活かすなら短剣か小剣…まあ今使ってるのは長剣なんだけど。
ディエスエグゼクリシオンの場合、規格外過ぎて戦闘スタイルとか関係ないんだよね。

「俺が使えるんだから、ねーちゃんだって使えるだろうけど、パワーのいる武器だと勿体ないよな」

テュケ君も分かってるんだね。

「次はどこに行く?」
「そうですねぇ…」

リオさんに聞かれて地図を見て考えるけど、良さそうな所が思いつかない。

「私は美味しいものがある所がいいなー」
「真面目にやれよ…ただでさえふざけた事になってるのに」

ソラちゃんの意見にテュケ君が呆れ顔で答える。その目線は担いでいるエギル・エギラさんにいっていた。

『む、我は至って真面目であるぞ』
「それならその台座を外せよな」

そう言われて反論出来ないエギル・エギラさん。

「あら、ネネから《ビジョン》だわ」

リオさんが魔法を起動して通信を始める。

「何かあったの?」
『ええ。有力な情報があったから共有しようと思ってね』

ネネさんが言うには滞在している街にアニエスの魂を持ってそうな人がいるそうで、その人は少し厄介な事に巻き込まれているそう。

『イスファリナという人が来て探知用の石を届けてくれたのだけど』
「セラの魂の保有者は見つかったからユキとアニエスの分ね」
『そうよー。あなた達がネネ達と合流するなら石を届ける手間が省けるんだけど』

映像の奥から顔を出したのはイスファリナさん。

「どうする?」
「そういう事なら行きましょう。アニエスさんの魂を持っているかもしれない人の確認もしたいので」
「オッケー。じゃあネネ、今から行くからどこにいるのか教えて」

思いがけず次の行き先が決まった。
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