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地球

裏切り者

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「ミナさん!」

ユキさんは私を追い掛けてきてくれている。私はどうにか大剣使いと距離をとって逃げようとしていた。

正面には舗装道路、これは幹線道路だ。車通りもあるしこの森を出るのは良くない。

左に折れて道路に並行して走る。
追手はどうだろうか?大剣使いの今の性能だと簡単に追いついて来るだろう。

と、正面に4人の人影。

回り込まれたか…。

左手で小剣を構えて警戒する。ユキさんも追いついてくれて私の右側を庇う様な立ってくれた。

そこにいたのは見慣れた顔……

「ソラちゃん…」
「久し振りミナ、ユキ。元気だった?」
「なんで…そちら側にいるんですか…?」

ユキさんの声は震えていた。

「取引をした。力が有れば今度こそ家族を守れる」

ソラちゃんが…裏切り者…。

「リヴェルティア様に言われて私達を殺しにきたの…?」

「おい、サッサとやっちまおうぜ」
「黙ってろ」

長剣構えて前に出ようとする男をハルバードの柄の部分で小突いた。
男の人は跳ね飛ばされて近くにあった木々を薙ぎ倒しながら遠くに転がっていって動かなくなった。

「何しやがる!」
「今大事な話をしている。邪魔をするならお前達も同じ目に遭う」

残る小剣二刀使いと槍使いはソラちゃんの殺気に当てられて動けないでいる様だ。

「ソラちゃんはどんな取引をしたの…?やっぱりこっちの世界に帰って来たかった?」

首を横に振るソラちゃん。

「おい、何をしている。サッサとしろ!」

リュウさんが追いついて来てソラちゃんに怒鳴る。

その横をすり抜けて大剣使いが凄まじい勢いで斬り掛かってきた。

ユキさんが私を庇って大盾を構えてくれるけど、防ぎきれないだろう。
せめてユキさんだけでも……

彼女を突き飛ばそうとした時、私達の後ろから小さな影がすり抜けていった。

ソラちゃんだ。

振り下ろされる大剣をハルバードで弾いて、横にステップすると今度はフルスイング。両手剣使いの胴を両断した。

「ソラ…ちゃん…?」
「言ったはず。家族を守るって」

家族って私達の事だったんだ…。

「紛らわしい言い方をしないで下さい…本当に…裏切ったのかと…」

ユキさんは泣いていた。

「むぅ…だって姉妹だとリオが仲間外れになっちゃう」
「…なんで?」
「リオはお母さんだから」

その設定ソラちゃん的には本当なんだ…。

「テメェ!裏切ったのかよ!」
「騙して悪いが裏切っていないんでな…」

怒り狂う小剣二刀使いに対してキメ顔で言い返すソラちゃん。

…ややこしい上に何かのネタなんだろうけど分からないんだよなぁ。

「ユキはミナを護ってて。私が全部片付ける」

そう言うと、斬り掛かってきた小剣二刀使いをハルバードで薙ぎ倒して、槍使いも石突きで打ち倒す。ソラちゃんは技能もギフトも地球に持って来ている。つまりその為にリヴェルティア様の取引に応じたフリを…?

ソラちゃんの筋力で攻撃されたら普通の冒険者なんてひとたまりも無い。2人とも一撃で倒してしまった。

「リュウ!お前も戦え!ミナだけでも仕留めるんだ!」

初めにユキさんと戦っていた2人も襲い掛かって来る。1人は後方で魔法を放つ準備だ。

ソラちゃんは2人をハルバードの一振りで纏めて吹き飛ばした。魔法使いに対しても一瞬で目の前に迫り拳をお腹に叩き込んで意識を奪った。

強すぎる…まさかあの薬を…?

「あんなヤバそうなもの持ってない。少しだけ一緒に居たおじさんにあげた」

そうか…ソラちゃんは《ベルセルクハウル》を使っているんだね。

「オレハ…強イ……」

ユラユラと肩を揺らしながらやって来たのはショウ君だ。

「むぅ…アレはマズい」
「何か知っているのですか?」
「アレはリヴェルティアの協力者が渡して来た物。私は気味が悪いから受け取らなかった」

ソラちゃんは私達を庇う様に立ちはだかりハルバードを構える。

「そんな物に頼ってまで強くなって満足?リヴェルティアに利用されているだけだって分からないの?」
「コロス…!!」

ソラちゃんの呼び掛けに反応したわけでは無いのだろうけど、剣を振りかぶり斬り込んでくるショウ君。

ソラちゃんはそれを何とか受け止めて押し返す。

「強くなったって自我を無くしたら意味がない」

ソラちゃんはショウ君の長剣を跳ね上げると胴目掛けてフルスイング。大剣使いの様に両断されたかと思ったけど、その場から後方に吹き飛んだだけだった。

流石にソラちゃんの攻撃を受けて無傷では無かったにしても物凄い硬さだよ。

ショウ君は着地して、ソラちゃん目掛けて突進していく。

「ショウ…もう、やめろ!」

リュウさんがソラちゃんとの間に入って剣を振るう。
ショウ君の長剣はリュウさんのお腹を貫いていた。
リュウさんの剣はショウ君の胸についた石を斬っている。

「ぐっ……!ショウ…目を…覚ませ……!」
「ジャマヲスルナ!!」

リュウさんは蹴り倒されその勢いで剣が引き抜かれる。

石を斬っても元に戻らない。これはどうしようもない…。

「リュウをお願い。私が倒す」
「分かった!」

ソラちゃんがショウ君に斬り掛かっていく。それを剣で防ぐと後ろに飛び退いて構え直した。

ソラちゃんの攻撃は相当重たいらしく、剣を両手に持ち直して構えた。

「オレハ、オマエヨリモ、ツヨイ…」
「それはない。そんな物に頼ってもショウは私に勝てない」
「ホザケェェっっ!!」

凄まじい速度で突進すると、ソラちゃんの喉目掛けて突きを放つショウ君。

ソラちゃんはハルバードをグルリと横に回転させて突き出された剣を弾く。自身もその場で旋回してハルバードをスイング。
ショウ君は上体が逸れていたのに無理矢理身体を引き戻すと、スイングを長剣で防いで大きく飛び退く。

ソラちゃんの方が優位に見えるけど、焦りの表情を浮かべていた。

…時間切れが近いんだ。

私はリュウさんの止血を試みているけど、血が止まらない。このままじゃリュウさんは死んでしまう。

その時、突風が巻き起こり小さな影が降りてきた。

『ミナ、無事かい?』

ルーティアさんだった。アスティアの言葉だけど私は理解できた。

『ルーティアさん、リュウさんの手当てを出来ますか?止血出来なくて…』
『わかった。[風と大地の精霊達よ、我が願いを聞き彼の者を癒したまえ……]』

いつもと違う言い回しだ。なんで精霊魔法を使えるんだろう?

『この世界にも精霊はいるんだ。仲良くなるのにかなり時間が掛かったけどね』

ルーティアさんは治療を続けながら教えてくれた。
リュウさんの傷が塞がっていく。
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