転生少女、運の良さだけで生き抜きます!

足助右禄

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魔王

セロムザード

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冒険者達はルッカとは別に作った。
彼らが自分達を見捨てて逃げたと知っている人がいたら無用な混乱を招く可能性があるからだ。

「町の名前はどうしますか?」
「お任せしていい?」
「分かりました。それではシャンスとします。」

アウラさんは迷いなく名前を付けてくれるから便利だね。

冒険者の一団に一通りの設備の説明をしておく。

「我々はここで暮らせば良いのか…。」
「はい。無用な混乱を避ける為に一般の方達とは別になります。設備は変わりませんし、管理者も1人置いておきますので何かあったら言ってください。」
「すまない。ありがとう。」

殿下もそこに居合わせた一般の人達には緘口令を敷いた。
とりあえずこれで混乱は避けられるかな。

「まあ少しの間ならね。警備を強化しておいた方がいいわよ。」
「人の口に戸は立てられぬ、ですね。」

リオさんとユキさんが話している。完全には避けられないよね…。

気を取り直して更に生存者がいないか捜索していく。数人から数十人のグループまで意外と多くの人が逃げ延びていた。

夜までに合計で2千人を保護する事が出来た。アウラさんは人数が増えるたびに町を拡張して対応してくれた。

次の日。

「さて、アブレスから生存者も全て救助出来たし、次はセロムザードに行こうか。」
「はい。あちらも相当な被害を受けている事でしょうから、早く助けに行きましょう。」

ルーティアさんもセロムザードが気になっている様だったし私も同じだ。アブレスは国自体が無くなるようなダメージを負ってしまっていた。セロムザードも甚大な被害を受けている筈だ。
まずはあの柱を破壊して、転移や通信が出来るようにする。もし魔王がいればそれも撃破する。

「そういえばウェルト大陸には人間の国ってアブレスとセロムザードの2国なんでしょうか?」
「そうさね。この大陸の構成を教えておこう。ウェルト大陸の東側はアブレス、南側にはセロムザード。人間以外の国は3国。中央にあるレイファードがハーフデビルの国で、北部にはシュピルツァという亜人の国がある。ここはエルフやダークエルフ、フェザーフォルクが寄り集まった小さな国だ。人間の国に友好的だ。最後に西側には獣人族ケルヴィムの国ファルファーデ。」
「リリエンタ以外にも獣人族ケルヴィムの国があるんですか?」
「あるとも。獣人の種類も違うぞ。」
「他の国も救援が必要かも知れませんね
。」

今の魔王が自国以外の国をどうするかは不明だ。少なくとも人間は殲滅対象になっているのは間違いない。

「そうね。セロムザードの次は他の国を助けに行きましょうか。」

リオさんの言う通り、他の国も様子を見に行った方が良さそう。

ダンジョンから出てウルちゃんに竜の姿に戻ってもらって移動を開始する。
勿論配下の竜達も一緒だ。

南の方へ暫く飛んでいると右奥に微かに柱が見えてきた。

「アブレスにあった柱は私が倒したから次はミナがお願い。フルパワーでやっちゃいなさい!」
「分かりました!」

考えうる最大出力の魔法をぶつけてみる。

オーバーブーストを知力に付与、《ミームスギフト》でリオさんの《オーバードマジック》をコピーして発動!
更にオーバーブーストを付けた《ルインブレイザー》を発動!

最大出力の《ルインブレイザー》を柱にぶつける!地上への被害を少しでも和らげる為にかなり上方を狙っておいた。

漆黒の球体が膨れ上がりながら柱に迫る。

「柱の側に何かいますね。」
「あれは…魔王では?」

柱の前に三体浮かんでいる。気配からして魔王かな。そして三体は魔法を受け止める気だ。

サチさんのダンジョンで遭ったオプロートみたいに跳ね返そうとしている…?

着弾までに際限なく膨れ上がった《ルインブレイザー》を受け止めようとしていた三体は飲み込まれた。

柱も飲み込まれて大爆発を起こす。

「お前達!ウルを盾にしろ!」

オル君が配下の竜達に指示を出す。
ウルちゃんは全力で結界を展開して爆風を防いでくれた。

柱のあった所は超巨大なクレーターが出来てマグマのようなものが吹き出している。

「流石はミナだな。魔王三体が一撃だ。」
「ミナにかかったら魔王も雑魚扱いか…。」

ダキアさんとクロウさんが納得したように話している。

「あの威力は無いわー……。」

いや、リオさんだってこっち側だよね?

「うん。次元が違う。髪の毛が逆立って金髪になる宇宙人と同じ世界の人。きっとそのうち星を壊す。」

ソラちゃん私は宇宙人じゃないしそんな事しないよ!多分。

「よ、よし!このままセロムザードの王都、ティオレラーダに向かうぞ!」

ルーティアさんの指示でウルちゃんは王都へと飛んでいく。すぐにティオレラーダが見えてきた。

グレートアブレス程ではないけどかなり破壊されている。あの三体の魔王にやられたのだろうか?
それとも魔物の軍勢に?

王都よりもかなり離れた所に陣を張っている。
そこに降りてもらう事にした。

突然現れた巨大な竜に驚き慌てふためいている兵士達。
私達が降りて来たのを見て武器を手に兵士達が集まってくる。

「よせ!その者達は我々の味方だ!」

兵士達を掻き分けてやって来たのはオレアス王太子だった。アルバートさんも一緒だ。

「ミナ…様。救援に来てくださったのですか?」

アルバートさんが声を掛けてくる。大会の時の事を覚えているのだろう、丁寧な対応だ。

「はい。オレアス王太子殿下もご無事で何よりです。」
「おお!君がミナか!会えてうれしいぞ!」

駆け寄って来て手を握られる。

「神の使い…救世主の登場よ。」
「ん、髪の救世主。」

ソラちゃん!しーっ!

「王太子、私はルーティアだ。状況を聞かせてもらえるかな?」
「おお!幼き精霊術師タイニー・ティアも来てくれたのか!心強いぞ!」

王太子殿下はセロムザードの状況を説明してくれる。
魔王の発生直後、魔物の軍勢に襲われて周囲の町は壊滅。王都も魔王の襲来で半壊。

「しかし我々は魔王に対抗すべく立ち上がったのだ!勇者グランを筆頭とする精鋭部隊を先頭に魔王と戦い勝利した!」

「勇者!?」
「魔王を…倒した!?」

「そう、我々は王都を襲った魔王に対して一歩も退かずに立ち向かい、勝利した!」
「兵力の3分の1を失ったけどね。」

アルバートさんが小声で教えてくれた。

でも魔王を倒す事ができるのはすごい事だよ!

「軍としてはどうなのよそれ……」

リオさんは呆れ顔で言っているけど、それでもこの軍の士気は落ちてない。今も撤退せずに進軍しようとしているんだ。

セロムザード王国はすごい国だよ。
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