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2種族の栄華

帰還

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「ミナ、君には感謝している。」

目が覚めたらまた白い空間にいた。すぐ側にはディルヴェ様が立っていた。

もうここにも来慣れたものだね。

「私は死んだのですか?」
「仮初の身体が消滅しただけだ。死んだ訳ではない。」

結局どうなったの?

「未来は変わってしまいましたか?」
「いや、ミナの働きによってほば修正された。感謝している。」

ディルヴェ様は首を垂れる。

「では私の役目は終わったんですね。」
「ああ、後は私の仕事だ。」

ディルヴェ様は両手を広げて何かを呟いた。体が白く輝きだす。

「アーリアーデが居ない今、運命の修復は私にしかできない。私の魂をもって未来を元の形に復元する。」
「そんな事をしてディルヴェ様は大丈夫なのですか?」
「私は消滅する。」
「そんな…」
「良いのだ。私もアーリアーデも存在してはならない神だったのだ。時や運命を自在に操るものなど居てはいけない。」

「居てはいけないなんて、そんな事ないと思います。根拠はないけど…存在自体が間違いだったなんて悲しすぎます。」
「ありがとう。その言葉で私の心は救われた。もう思い残す事はない。」

ディルヴェ様の姿が少しずつ薄くなっていく。

「消えゆく神の加護など何の役にも立たないかも知れないが、君に送ろう。」

光りの粒が私の中に入ってくる。

「元の世界では私とアーリアーデの存在は無かった事になっているだろう。知っているのは君と君の中にいるアウレリアの分け身だけだ。他の神に尋ねたり教えたりするな。そこから矛盾が生じるかも知れない。」
「矛盾が起こるとどうなるのですか?」
「復元された未来が歪むかも知れない。そこから世界が綻ぶかも知れない。私達の事は忘れるのだ。」

「誰にも知られずに消えるなんて悲しすぎますよ…。」
「君達が覚えていてくれればそれだけで良い。さらばだ。心優しき人の子よ。」

そう言い残してディルヴェ様の姿は消えた。光のかけらとなって溶けていった。

ーーーー

フワリと優しい風が頬を撫でた。
ゆっくりと目を開けると、真っ暗な部屋でフカフカの大きなベッドに寝かされていた。綺麗な白いシャツに、白のスカンツかな?ワイドパンツを着せられている。

かなり大きな部屋だ。綺麗な絨毯が敷かれていて、小さなテーブルや椅子、一つ一つに細工が施されていて美しい。ここは貴族のお屋敷かな?何でこんな所にいるんだろう?

体を起こして周りを見渡すと窓を閉めている少女を見つける。茶色の長い髪、服装はメイド服。メイドさんにしては幼いけど、この子はどこかで…。

少女は窓を閉めて振り返る。私と目が合った。
信じられないという顔をして固まっている。私から聞いてみる事にした。

「えと、ここはどこかな?」

少女は喋らない。困ったな。

「君、名前は?」

笑顔を作って話しているつもりだけど、少女は答えてくれない。
恐る恐るドアの方へ近づいて行って…

「た、た、大変です!!」

叫びながら飛び出して行ってしまった…。

んー…困ったなぁ…。

アウラさん、ここはどこかな?

[ここは現代のエリストです。]

まさか辺境伯の屋敷…?

一瞬身構えてしまったけど、辺境伯はもういないんだった。キノコの人に拐われてここにいるというのは多分無いだろう。ミルドさんが黙っていない筈だ。

色々考えたら頭がクラクラしてきた。夜みたいだしもう少し寝ようかな。

と、ドタバタと複数の足音が近づいてくる。

ドアが開かれて入ってきたのはユキさん、リオさん、ソラちゃんだった。

「よかった。みんな本当に無事だったんだね。」
「ミナさんっ!」

ユキさんが抱きついてくる。あまりの勢いにビックリしてしまう。

「良かった…本当に…良かった…。」
「ユキ、ズルイ。私も~」
「じゃあ私も!」

ソラちゃんとリオさんまで抱きついてきた。

ちょっ…重い…苦しい…

「ああ、ゴメン!まずはおはよう。随分な寝坊だけどよく眠れた?」

リオさんがここはエリストの私の家だと教えてくれた。そういえば作ってくれるって言ってたね。
それから私は半年も眠っていたらしい。

精々2、3日位だと思ってたけど、過去の世界から帰ってくるまでに何かあったのかな。未来を復元した事による副作用的な?

そうだ、この現代が私の知っている現代なのかを確認しないと。

3人に出会った時のことや今までの冒険の事順を追って聞いていく。3人は私の質問に少し不思議に思いながらも丁寧に答えてくれた。

私の記憶にある出来事と同じだ。

良かった。ちゃんと元通りだ。
安心したら涙が出てきた。
ディルヴェ様が自身の存在を賭けて復元してくれたから、元に戻ったんだ。

3人は何も言わずに優しく抱きしめてくれる。
何も聞かずに、ただ泣き止むまでそばにいてくれた。

「ミナ様!」

開け放たれた扉からやって来たのは私ソックリの姿をしたウルちゃんと人の姿をしたオル君だ。

「お目覚めになられたのですね。どこか痛むところはありませんか?」
「うん、大丈夫だよウルちゃん。」

ウルちゃんは私が昏睡している間、各国の混乱を避けるために私の代わりとして活動してくれていた。

次に入って来たのはダキアさん達先輩冒険者のみんなだ。

ダキアさんには抱き上げられて振り回された。その後はアリソンさんにぎゅーっと抱きしめられて、クロウさんとミルドさんにはしっかり撫でられた。ルーティアさんは少し離れたところで微笑んでいた。

そういえばテュケ君がいないけど。

「テュケならエスペランサのダンジョンでリリエンタのみんなやマサキ達と修行中だ。」

ルーティアさんが教えてくれた。

マリさんのダンジョンは好調で、今は10階層まで作られているそう。
サチさんもマリさんのダンジョンの運営を手伝っているそうなので、会いに行きたいと思う。

「そういえばさっきの子って…」
「ああ、メイド見習いのサナの事?」

リオさん、今サナって…?

「あの子もそうだけど、この家は広いから使用人を雇っているのよ。あの子は聖国からの難民で弟と一緒にエリストに来たんだって。ミルドさんが保護して自分の屋敷で訓練をしてここにメイドとして雇っているの。まだ見習いだけど良い子よ。」

扉の所に申し訳なさそうに立っているサナちゃん。見覚えがあると思ったけど、過去のあの子にソックリなんだ。

「私が眠っている間にお世話をしてくれていたんだね。ありがとう。」
「い、いえ、先程は申し訳ありませんでした!」
「いいよ、こちらこそ驚かせちゃってゴメンね。ところでサナちゃんの名前って何か由来があるの?」
「はい。聖国では昔からよく付けられている名前です。獄炎の魔神が焼き尽くした大地を再生した賢者の1人の名前らしいです。弟もその時の賢者の名前、ソーンが名付けられていますよ。」

あの子達、生きていたんだ……。
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