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リアード王国

族長の村

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全員を殺さずに捕らえることができた。
村で臨時に代表を務めている獣人族ケルヴィムの人に身柄を引き渡す。この人は虎人族ティグリシアンの戦士の暴走を止めようとしたけど、彼らに暴行を受け、大怪我をしていたので治療魔法を掛けておいた。

「我等がすぐに彼等を解放するとは考えないのですか?」
「その考えを持っている人は村の代表になったりしないんじゃないかと思いますけど、どうですか?」
「確かにその通りです。怒りに身を任せて突き進むなら村を治めようとは思いません。私が目指すのは元の平穏です。彼等と分り合うのは時間が掛かりますが、必ず武力なしで説き伏せましょう。」

理性的な人がいて良かったよ。

「村の治安維持に何体か竜を置いていきます。何かあれば彼らに伝えてください。」

アルフィミアさんに言ってあとの事は任せる。

私達は各部族長がいる村に行ってみる事にした。
獣人族は6の部族からなっていて、狐人族レーヴィアン猫人族フェレシアン虎人族ティグリシアン獅子人族レオニアン狼人族ヴォルシアン兎人族ダシュプーシェンというらしい。
どの部族も取分け仲が悪いという事は無く、族長達は仲のいい部族同士で集まって村を形成していた。
狐人、猫人、兎人の村と虎人、獅子人、狼人の村に分かれているのだとか。

エルさん達を送り届ける事もあるので先に狐人の族長がいる村に行く事になった。

オル君に乗って数分、山間にあるその村にはすぐに到着した。

「おお!エルファリエ!レミーシア!よくぞ無事で戻って来た!」

オル君から降りてきたエルさんとレミさんに駆け寄ってくる老人。この人が族長だろうか。

「お爺様!ご無事で何よりです。」

エルさんは連れて行かれてからの話と私達と出会って助けられた事、道中で同胞と合流する事ができた事を説明する。

「そうかそうか!ファルク達も無事で何よりだ。これで立て直しができる。皆様、同胞を救って頂き本当にありがとうございました。」

深々と頭を下げてお礼を言う狐人の族長。族長さんが言うには、リアードの兵士達が来て略奪行為が行われた時、エルさんとレミさんがわざと捕まる事で他の2部族の子供達を逃すことが出来たのだと言う。

猫人族フェレシアンの後取りは逃げ足だけは超一流だからきっと兎人族ダシュプーシェンのお嬢さん達を上手く逃している筈だ。混乱が治れば帰ってくるだろう。」

逃げ足だけって…褒めてるんだよね?

その後各族長と話をしたけどこの村では大きな混乱は無かった。リアード国に対しての怒りもあるのには違いないけど、今はとにかくバラバラになった同胞を集めて自分達の生活の立て直しをする事を最優先にすると言っていた。

「もしも我が子達を見つけたら帰ってきて大丈夫だと伝えてください。」
「分かりました。」

猫人族フェレシアンの後取り息子と兎人族ダシュプーシェンの娘さん達の特徴を聞いておいた。

さて次はもう一つの族長達が集まる村だ。虎人族ティグリシアンの戦士達の様子からしてこちらは揉めるかも知れない。荒ごとになる可能性が高いので気をつけていかないと。

「私達は引き続きお供します。獣人族ケルヴィム同士の方が話を聞いてくれるかも知れませんから。」
「エルさん、レミさんありがとうございます。」

ファルクさん達とはここで別れてオル君に乗って移動する。
次の村は大きな森の端にあった。平原に着地して徒歩で村を目指す。

「誰か来たぞー!!」

見張りだろうか、入り口にいた人が声を上げながら村の中に逃げていく。

思いっきり警戒されてる…。

「いきなり戦闘なんて事もあり得るわね。気をつけなさい。」

武器は抜かないにしてもいつでも抜ける様に手だけは掛けておく。
門をくぐると大勢の村の人達がじっと私達を睨んでいた。狼やライオン、虎の半獣人レグスケルヴィムが混じっている。

「私達は話をしに来ました。村の代表の方達とお話をさせてください。」

私の呼び掛けに反応はない。あの虎人族ティグリシアンの戦士の様に怒りに身を任せて襲って来るのだろうか。

「女だ。」

誰かがポツリと呟く。

「おおお!女ばかりだ!」
「1人小汚いオッサンが混ざってるぞ!」
「知るか、ほっとけ!」
「小汚いは余計だぜ…。」

えぇ…何?

「なんか別の意味で襲い掛かってきそうね。」
「皆さん気をつけて。」

リオさんが少し下がるとユキさんが盾を構えて前に出る。

「お嬢さん!俺の子を産んでくれないか?」

1人の半獣人レグスケルヴィムの青年がユキさんの前に飛び出して来た。直球過ぎ…。

「嫌です!」

盾で殴られて飛んでいく青年。

「抜け駆けするなよ!お姉さん、俺ならどうかな?必ず幸せにしてあげっ……!」

言い終わる前に盾に跳ね飛ばされて飛んでいった。

「な、何!?何なんですかこの人達は?」

ユキさんは困惑している。

「君、可愛いね。僕とお付き合いしてくれないかな?」
「そんな事言われても困ります!」

わ、私の所にも来た。断ってもお構いなしに肩を掴んできたので片腕を取って投げてしまった。

「お嬢ちゃん、おじさんのお嫁さんにならないか?」
「それは犯罪だから!《ウインドブラスト》!」

ソラちゃんに言い寄っている中年の男の人を無詠唱魔法で吹き飛ばすリオさん。

「助かった。あまりのキモさに殺してしまう所だった。」
「君もいいじゃない!俺と結婚してよ!」
「イヤよ!《ウインドブラスト》!」

次々と迫って来る村人達。エルさんとレミさんの所にも大勢が詰め寄っている。
何とか術で対処しているけどこのままだとマズいかもしれない。

「不届き者共を制圧します。」

ウルちゃんとオル君が飛び掛かっていく。

「こりゃまた随分と情熱的な村じゃないか。選びたい放題だけど、どうする?」
「馬鹿言ってないで助けなさいよ!」
「へいへい。」

ウェスターさんはリオさんとソラちゃんの所に迫る男達を素手で対処している。

「オッサンズルイぞ!女の子を独り占めか!1人くらい寄越せよ!」
「残念だけど俺のじゃないんだ。本当に残念だけど!」

次々と迫る男達を倒していくウェスターさん。

なんかもうメチャクチャだよ……!!
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