転生少女、運の良さだけで生き抜きます!

足助右禄

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リアード王国

獣人

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リリエンタはつい最近リアード王国の侵略によって併合され、その際に沢山の獣人が奴隷にされて、エルさんとレミさんもその時奴隷に落とされた。

「リアード王国の兵は人ではありませんでした。レミの様な悪性変異を起こした者達が次々と襲い掛かって来たのです。」
「全員ですか?」
「はい。僅かな兵力でしたが力の差は歴然。戦士達も悉く打ち倒されていきました。」

奴隷にされたエルさん達姉妹は王都に連れて来られ、薬を飲まされた。

…多分因子核だろう。

そしてレミさんが先に悪性変異を起こし、その性能評価と称してエルさんと戦わせようとした。エルさんは自身の能力の制限が解除された瞬間、レミさんの中にある因子核を術によって凍結させ、同時にレミさん自身も昏睡させた。更にレミさんを連れてその施設から脱出。行く当ても無くたまたまこのスラムに逃げ込んだらしい。

「妹を何とか助けたいのです。この状態を治療する方法は分かりますか?」
「一人だけ治療の前例があります。」
「その方は…?」
「今も元気ですよ。」
「お願いします!妹を救ってください。私のできる事なら何でもします。どうかお願いします!」

「やれるだけやってみます。」

テュケ君の時とは状況が違う。しっかりと調べてから治療に臨もう。
医術技能を使って念入りに調べていく。
身体は仮死状態にしてある。
続いてオーバーブースト鑑定でアフターギフト因子を確認する。
因子核から伸びているものはそんなに大きくない。
今は活動を完全に停止しているみたい。そういえばテュケ君の時よりも硬質化している面積が小さい。あの時よりも状態が良い。

これならいけるか。

急いで治癒の魔法陣を描く。

「何その魔法陣?」
「え、治癒の魔法陣ですよ。」

リオさんが知らないって変だなぁ。まあ効果は間違いないので今回もオーバーブーストを掛けて使用する。

「ではいきます。」

オーバーブーストスティールを使用!
レミさんの身体から因子核を取り出す。

この後テュケ君は苦みだした。レミさんはどうだろうか…?

何の反応もない。医術で様子を観るけどどこも異常はない様だ。
鑑定で生命力を注視してみたけど、すごい速度で回復している。
レミさんの身体から硬質化した皮膚がボロボロと剥がれ落ちていく。

「成功しました。」
「レミ…!本当に…本当に治ったのですね…!ありがとうございます!」
「エルさんの処置が的確だったからですよ。無事で良かったです。」

本当に良かった…。

「悪性変異は治せるのか…。」

ウェスターさんが感心している。

「はい。初期段階なら因子核を取り除けば。直後の超高速治療が必要ですけど。」
「その方法を、どこで…?」

メリルさんも驚きを隠せない様だ。

「手持ちの技能を組み合わせて、独力です。」
「本当に何でもできるのね。」
「何でもはできませんよ。それより…。」

エルさんの方を見る。エルさんは覚悟を決めた様に頷いた。

「約束ですから…何でも言ってください。今は奴隷紋で縛られていて能力がほとんど使えませんが、この身でできる事であれば何でもします。」
「えーと、じゃあ…レミさんに掛けていた術を教えていただけませんか?」
「あれは狐人族レーヴィアンの術なので人間のミナさんには使えないと思います…。それから、今はお見せすることが出来ません。」

そうだった…。

「提案があります。一度国外に逃げませんか?もちろんレミさんも一緒に。私が絶対安全な場所に匿います。」
「それは…どこでしょう?」
「エルジュ王国のどこかとだけ教えておきます。」
「私達は奴隷紋で移動が制限されています。国外には出られません。」
「じゃあ、その奴隷紋を取ってしまいましょう。」
「えぇっ……。もしやミナさんは奴隷商人なんですか?」
「違いますよ。たまたま覚えたんですり」

うん。本当にたまたまだったね。

「じゃあ取ってしまいますから奴隷紋を見せてください。」

恐る恐る服をまくり上げるエルさん。
奴隷紋はお腹に刻まれていた。

「ウェスター、退場。」
「へいへい。外で辺りを見張ってるから終わったら呼んでくれ。」

奴隷紋を確認する。強度は中。制限は術禁止、所有者はヴェイソン・ディッツと表示された。

「メリルさん、ヴェイソン・ディッツという人を知ってますか?」
「ヴェイソン・ディッツはリアード王国の侯爵ね。7大貴族の内の1人よ。」

国がアフターギフトを扱っているのは確定だ。

奴隷紋を操作して2人とも解放して、跡が残らない様にラッキシュートを掛けたヒールで癒しておく。

「本当に解除出来てしまわれるのですね…ありがとうございます!」

そうだ、エルさんにも因子があるんだった。

「大事なことを忘れていました。エルさんの中にある因子も取ってしまいますね。」

オーバーブーストスティールでエルさんの因子を盗み取る。

「はい、終わりです。」
「え?え?もう終わったのですか?」

困惑するエルさん。

「これで悪性変異の心配は無くなりました。」
「本当に…何から何まで…ありがとうございます……!」

泣き出しちゃった。

「…姉さん、何で泣いているの?」
「レミ!」

レミさんの意識が戻ってエルさんと抱き合いながら無事を喜んでいる。これまでの経緯を説明して、念の為鑑定でステータスを確認してみた。

種族はケルヴィム(狐人族レーヴィアン)のままでステータスはレベル1でオール50…。ギフトに伝心は付いていない。

つまりテュケ君の時は進行が進んでいたからステータスがオール100になっていたって事かな。
テュケ君の時は助けたい一心でオーバーブーストを掛けたのも原因だろうし…。

狐人族レーヴィアンは基礎ステータスが高いとかの特性はないですよね?」
「ないですね。」

一度悪性変異すると身体の変異した分がステータス面だけ残ってしまうのだと思う。
まずは無事で良かった。

「それじゃあ一度安全な所に避難しましょう。」
「お願いします。」

「ミナ、私達はメリルと待ってるから2人をあそこに連れて行って。」

リオさんにそう言われて気付いた。メリルさんとウェスターさんは私達がダンジョンマスターと契約していることを知らない。
でも、もう今更隠す様な事でもない気がするので見せてしまっても良いんじゃないかな?

(ミナ、後で話がある。)

リオさんが私に耳打ちする。私は小さく頷いて、フィオレさんに念話で2人を連れて行く事を伝えて転移した。
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