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エルジュ王国

事後処理

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解散して宿屋に帰ると、食堂はメチャクチャになっていた。

「あの後乱闘になってねえ、みんなで兵士をボコボコにしてやったのさ。」

奥さんが笑いながら話す。
聞けばその後他の部隊が応援に駆けつけて来て全員捕縛されてしまったそう。

しかし始めからいた兵士達は、お客さん達に殴る蹴るの暴行を受けた上、帰りに他部隊が連れてきていた馬に蹴られたり、暴走した馬車に轢かれたり、宿舎で食べた物に中ったりと散々だったらしい。
ウルちゃんの禍かな?死ぬ様なことが無くて良かったと思う。

そういえばウルちゃんがいない。あの後猫の姿に戻ってくれたので、しっかり撫でて色を白に戻しておいた。

「ウルちゃんなら寄り道をしてくるって言ってましたよ。」

ユキさんが教えてくれた。…危ない事をしてなければいいのだけど。

「失礼します。」
「うっわー。また随分とメチャクチャになってるっすね。」

ラナさんとマナさんがやって来た。冒険者ギルド預りになっていた2人は、ルーティアさんに相談して穴熊亭の片付けに来てくれたらしい。
常連客の人や宿泊中の冒険者達も一緒だ。

みんなでやると早い。あっという間に片付けが済んだ。

「何か簡単なものを作るから食っていってくれ。」

おじさんは厨房に入っていく。
私も手伝おうと思い着いて行こうとしたけど足取りが重い。

「ミナさん、夜通し歩いて疲れているんです。休んだ方がいいですよ。」

そういうユキさんは普段通りだ。
そういえばギフトの影響で疲労とかしないんだっけ。

「ごめん、そうさせて貰おうかな。」
「手伝いは私がやっておきますから。」
「いいや、2人とも休みな。あんた達は頑張ったんだから。食事は部屋に運ぶから休んでなよ。」

奥さんの言葉に甘えさせてもらって、2人で自室へ。洗浄クリーンをかけてベッドに横になると、程なくして眠ってしまった。

ーーーー

目が覚めたのは次の日の朝だった。
何時間寝たんだろう。枕元にはウルちゃんが丸くなって寝ていた。
毛色は真っ白のままだ。危ない事はしなかったみたい。安心した。

しばらくモフモフを堪能して、ベッドから出る。
ユキさんとウルちゃんもすぐに起きて来た。

「ユキさんウルちゃんおはよう!」
「「おはようございます。」」

軽くストレッチをして、着替えてから食堂に。
昨日の騒ぎが嘘の様に元通りになっていた。

「おはよう。朝食の準備できているぞ。すぐに出すからな。」

シチューにふかふかのパン。サラダも付いている。ウルちゃんには大きな具を抜いたシチューだ。

「「いただきます。」」

やっぱりここのご飯は美味しい!
ずっと寝ていたせいか、いつもより沢山食べれた。

「ユキさん、冒険者ギルドに行ってみようか。」
「そうですね。様子も知りたいですし。」

ご飯を食べ終わっておじさんにご馳走さまを言うと、3人で冒険者ギルドに行ってみた。

冒険者ギルドは建物からメチャクチャに壊されていた。その様子から戦闘の激しさが伺える。

「ミナ、ユキ、おはよう。」
「ナターシャさん、おはようございます!」
ナターシャさんは建物の周りに散らばっていた木片等を片付けていた。

「もう体は大丈夫?」
「はい。ただの疲労なので、ぐっすり寝たから元気ですよ。」
「ギルマスを助けてくれてありがとう。本当に感謝しているわ。」
「いえ、私の為に戦ってくれて、怪我までさせてしまったんです。」
「それでもよ。ありがとう。」

こうしてルーティアさんを助けられたのもユタカさんのお陰でもある。もしまた会える事があればお礼を言わないと。

「ギルドはどうするんですか?」
「しばらくは他のギルドに業務を分担してもらって運営していく事になったわ。冒険者ギルドの営業再開はまだ見通しが立たない状態ね。」

暗い表情のナターシャさん。

「私にできる事があったら何でも言ってください。」
「っ……ありがとうね。」

ナターシャさんは何かを言いかけた気がするけど、聞ける雰囲気じゃないのでその場を後にした。

宿に戻る途中、ユキさんがポツリと呟く。

「多分…。」
「ん?」
「多分ギルドマスターは解任されるんじゃないでしょうか。」
「なんで!?」
「王国の正規兵と事を構えたのです。重軽傷者多数、死者も出ています。」
「でもそれは…。」

精霊使い殺しシャーマンキラーなら私が殺したんだ。それにルーティアさんは悪くない。

「冒険者達があれだけの抵抗をしたんです。トップが責任を取らされるのはある意味で当たり前なのかも知れません。」
「……。」
「極刑もありえます…。」
「っ!?」

そんなのって…。

「あー!ミナちゃーん!ユキちゃーん!」

アリソンさんが手を振っている。

「どうしたのー?何か暗くなーい?」
「その…。」

思い切って今話していた事を聞いてみた。

「あー、それはね…。」

アリソンさんは教えてくれないかもと思っていたけど、全て話してくれた。

まず、今回の戦闘については一部の貴族の暴発である事は調べがついていて、ギルド側には非は無かったことになる筈だという。
次に王国軍側に死者が出ている件。こちらについても基本的にはギルドに非は無い。ただし、精霊使い殺しシャーマンキラーの死亡については少し揉めるだろうと。

「それは私がやった事です…。」
「でもねー、ルーティアさんの精霊がやった事だし、厄介なのはあの男は爵位持ちなのよー…。」
「つまり貴族を殺した事が問題なのだという事ですか?」

ユキさんが質問する。

「まあそういう事になるねー…。」

貴族社会についてはよく分からないけど、あんな事をしておいて殺されたからといってどうこう言われるのは納得いかない。

「あとはギルド本部がどう対応するかかなー。」

エリストの冒険者ギルドは支部で、王都にこの国の本部があるらしい。冒険者ギルドは国の機関ではないため、完全に王国の味方ではない。ただ王国と関係を悪化させるのは避けたいからとルーティアさんを差し出す可能性も無くはない。

恐らく近日中に王都への出頭命令が来るだろう、と。

「私も、行ってはいけないでしょうか?」

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