上 下
451 / 453
竜の国

天空竜の子

しおりを挟む
巨大な扉はトコヤミが体当たりをして勢いよく開けた。
私達はその後に続いて奥へと急ぐ。

「奥に地下へと続く階段があります。天空竜の子は地下に囚われていると聞いています」
「分かったわ。急ぎましょう」

グラムの案内で行った先には巨大な縦穴があった。その縦穴の内径に沿って竜用の階段が作られている。
この規模からして城の為に掘ったというより以前よりあった穴の上に城を築いた様だ。

『ここに来た事はあるか?』
『いいえ。でもここは確か代々の王の墓に使われている縦穴だと思います』

トコヤミに答えるエレ。

そんな所に子供を押し込めているのね。

『飛び降りましょう。背にお乗りください』

全員がトコヤミの背中乗ると、翼を広げて下に降りていく。
降りている途中地響きが聞こえてきたが、地上でギルディンとスレイニグが激しい戦闘を繰り広げているのだろう。

堅牢に作られているため崩壊する様な事は無さそうだが、凶石を埋め込まれたスレイニグを病み上がりのギルディンが倒せる保証はない。出来るだけ急ぐべきだろう。

トコヤミが底に着地する。

かなり下まで降下してきたので地上の光は遠く小さくなり、灯りも無いためここは暗闇だ。

私が魔法で光球を作り出し宙に浮かべると大きな穴全体が見える様になる。

辺りに竜の骨が幾つも積み重なって山をつくっていた。

その奥に白い鱗の小さな蛇竜が蹲っている。頭を上げて眩しそうに目を細めながらこちらを見ている。

「あなたがラニターヴァスの子ね?私は泉の精霊のハルよ。助けに来たわ」
『助けに……?』
「ええ、もう大丈夫よ」

近付いて行くとこの子が酷い状況である事が分かった。

全身の鱗の大部分が傷を負っていて鎖が食い込んでいる。尾に近い所には金属の杭が打ち込まれていた。

可哀想に。

鎖と杭を《栄養吸収》で分解して泉の水を身体全体に振りかける。

『わあ……すごい。もう痛くない!』
「良かったわ。あなた、お名前は?」
『ラーニだよ。治してくれてありがとう』
「ラーニ、あなたはこの子の背に乗って。ここから脱出するわ」
『私はエレネージュです。ラーニさん、早く私の背に』

エレの背中に乗ったのを確認し、私達もトコヤミに乗ると、翼を羽ばたかせて上昇する。

この後はギルディンがスレイニグに勝てていなければ私達が加勢して制圧する。
スレイニグは凶石に侵食されている為殺す事になるだろう。

「エレ」
『覚悟はできています。スレイニグさんはもう助からないと分かっていますから』
「そう……」

エレの為にも何とかしてあげたいが、今の状態では良い手は無いだろう。
手早く済ませてギルディンにドラコニアン達を取り纏めてもらうのが最善か。

地上に戻る直前、上方に膨大な魔力が現れた事に気付く。

『なんだこの魔力は……』
『……来たんだ』
「何が来たの?」
『ズロヴァストが来たんだよ……!』

エレの背の上で震えるラーニ。

地上で魔力が膨れ上がる。これは、いけないわ。

全員に《硬質化》を掛けて衝撃に備える。
大爆発が地上からこちらに迫ってくる。

「ふむ、これは厄介だな」

クオンが両手を高く掲げて魔力を込めると、私達を覆う様に結界が現れて衝撃波を止めてくれた。

巻き起こった砂塵が治ると私達の居た位置の縦穴は削り取られ地上になっていた。

『何という破壊力だ』

トコヤミはそう言って空を見上げる。城が無くなっているのだ。
代わりにそこにあったのは巨大な岩山、ではなくとてつもなく大きな竜だった。

『お父様は……?』

竜化したギルディンとスレイニグはズロヴァストの足元に倒れていた。

『ギルディンを治したのはお前か?』

燃える様な赤い眼が私を睨む。一目で見抜いたのは直感か、それとも……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生王子はダラけたい

朝比奈 和
ファンタジー
 大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。  束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!  と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!  ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!  ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり! ※2016年11月。第1巻  2017年 4月。第2巻  2017年 9月。第3巻  2017年12月。第4巻  2018年 3月。第5巻  2018年 8月。第6巻  2018年12月。第7巻  2019年 5月。第8巻  2019年10月。第9巻  2020年 6月。第10巻  2020年12月。第11巻 出版しました。  PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。  投稿継続中です。よろしくお願いします!

貴方へ愛を伝え続けてきましたが、もう限界です。

あおい
恋愛
貴方に愛を伝えてもほぼ無意味だと私は気づきました。婚約相手は学園に入ってから、ずっと沢山の女性と遊んでばかり。それに加えて、私に沢山の暴言を仰った。政略婚約は母を見て大変だと知っていたので、愛のある結婚をしようと努力したつもりでしたが、貴方には届きませんでしたね。もう、諦めますわ。 貴方の為に着飾る事も、髪を伸ばす事も、止めます。私も自由にしたいので貴方も好きにおやりになって。 …あの、今更謝るなんてどういうつもりなんです?

おじろよんぱく、何者?

月芝
キャラ文芸
タヌキ娘の拳が唸り、トラ女が猛り吠え、ヘビ娘が関節を極めては、キツネ娘が華麗に宙を舞う。 シカ男が夜の街道を爆走しつつ、解剖マニアのウシ女医がメス片手に舌なめずり。 巷を騒がせる変態怪人たちが暗躍し、たまにおっさん探偵が迷推理を披露しつつ、 カラス女の銃口が火を噴く。人情刃傷、悲喜劇こもごも、時々バトル。 阿呆どもがわちゃわちゃ戯れる笑撃の問題作。 ヒョウ柄の生息地・大阪と魑魅魍魎が跋扈する京都。 その狭間に位置しているのが高月という街。 冴えない貧乏探偵、武闘派女子高生、やさぐれ刑事、イケメン怪盗……。 住民たちはひと癖もふた癖もある猛者ばかり。 個性豊かな面々が繰り広げる日常は、どこかピントがズレている? それもそのはず、だって彼らは人間に化けた動物なんだもの。 人間たちに混じって動物たちが暮らしているのか。 動物たちに混じって人間たちが暮らしているのか。 そんなややこしい土地でも生きていくのには先立つモノが必要。 ゆえに動物たちの社会進出は必然であった。 本作は高月の街にて探偵業を営むとある動物にスポットを当て、 その生態に迫る密着ドキュメント風の仮面をかぶった何か、である。

趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南
ファンタジー
魔法が衰退し、魔導具の補助なしに扱うことが出来なくなった世界。 公爵家の第二子として生まれたフィルズは、幼い頃から断片的に前世の記憶を夢で見ていた。 そのため、精神的にも早熟で、正妻とフィルズの母である第二夫人との折り合いの悪さに辟易する毎日。 ストレス解消のため、趣味だったパズル、プラモなどなど、細かい工作がしたいと、密かな不満が募っていく。 そこで、変身セットで身分を隠して活動開始。 自立心が高く、早々に冒険者の身分を手に入れ、コソコソと独自の魔導具を開発して、日々の暮らしに便利さを追加していく。 そんな中、この世界の神々から使命を与えられてーーー? 口は悪いが、見た目は母親似の美少女!? ハイスペックな少年が世界を変えていく! 異世界改革ファンタジー! 息抜きに始めた作品です。 みなさんも息抜きにどうぞ◎ 肩肘張らずに気楽に楽しんでほしい作品です!

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

死に戻ったわたくしは、あのひとからお義兄様を奪ってみせます!

秋月真鳥
恋愛
 アデライドはバルテルミー公爵家の養子で、十三歳。  大好きな義兄のマクシミリアンが学園の卒業式のパーティーで婚約者に、婚約破棄を申し入れられてしまう。  公爵家の後継者としての威厳を保つために、婚約者を社交界に出られなくしてしまったマクシミリアンは、そのことで恨まれて暗殺されてしまう。  義兄の死に悲しみ、憤ったアデライドは、復讐を誓うが、その拍子に階段から落ちてしまう。  目覚めたアデライドは五歳に戻っていた。  義兄を死なせないためにも、婚約を白紙にするしかない。  わたくしがお義兄様を幸せにする!  そう誓ったアデライドは十三歳の知識と記憶で婚約者の貴族としてのマナーのなってなさを暴き、平民の特待生に懸想する証拠を手に入れて、婚約を白紙に戻し、自分とマクシミリアンの婚約を結ばせるのだった。

転生することになりました。~神様が色々教えてくれます~

柴ちゃん
ファンタジー
突然、神様に転生する?と、聞かれた私が異世界でほのぼのすごす予定だった物語。 想像と、違ったんだけど?神様! 寿命で亡くなった長島深雪は、神様のサーヤにより、異世界に行く事になった。 神様がくれた、フェンリルのスズナとともに、異世界で妖精と契約をしたり、王子に保護されたりしています。そんななか、誘拐されるなどの危険があったりもしますが、大変なことも多いなか学校にも行き始めました❗ もふもふキュートな仲間も増え、毎日楽しく過ごしてます。 とにかくのんびりほのぼのを目指して頑張ります❗ いくぞ、「【【オー❗】】」 誤字脱字がある場合は教えてもらえるとありがたいです。 「~紹介」は、更新中ですので、たまに確認してみてください。 コメントをくれた方にはお返事します。 こんな内容をいれて欲しいなどのコメントでもOKです。 2日に1回更新しています。(予定によって変更あり) 小説家になろうの方にもこの作品を投稿しています。進みはこちらの方がはやめです。 少しでも良いと思ってくださった方、エールよろしくお願いします。_(._.)_

処理中です...