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竜の国
治療と協力者
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ギルディンはドラコニアン全体を守るために魔竜王ズロヴァストの支持に従ってきたのだろう。
ライアッドに現れて話をしたのも、メリーゼハーヴの言っていた風貌からして彼であると思われる。
多大な犠牲を出してしまったライアッド侵攻も魔竜王の指示の筈だが私達の事を恨んではいない様だ。
「ギルディンさん、このままルドガイアから離脱して私達の側に来ませんか?」
私が聞こうとした事を芽依が要約して聞いていた。
「それも悪くはないと思うのだが、今の私に従ってくれる者がどれだけいるか……」
ギルディンの表情は暗い。私が見た所、今も王は彼であると思っている竜は少なからずいる様だが。
『お父様が竜の姿にならないのはあの時の怪我の所為ですか……?』
「……そうだ。私はズロヴァストに両翼をもがれてしまった。竜になれない者を王と認める者はおるまい」
ギルディンはそう言うと纏っていたマントと上着を脱いで背中を見せる。そこには生々しい大きな傷があり血が滲んでいた。
「うわ……」
「ふむ、ズロヴァストにやられた傷か。奴は一種の呪いの様なものを纏っている様で、一度負わされた傷は癒える事が無いのだ」
芽依は痛々しい姿を見て絶句し、クオンは冷静に教えてくれた。
「泉の水を使ってみましょう。もしかしたら治せるかもしれないわ」
「そこまでしてもらう訳には……」
「エレのお父さんなのだからこれくらいはさせて。それでもと言うのならこれは交渉の一つだと思えば良いわ」
返事を待たずに《過剰分泌》させた泉の水を背中に振り掛ける。水は忽ちに蒸発し傷口が泡立ち始める。
「ぐっ……」
苦痛に顔を歪めるギルディン。泉の水で癒しきれない傷は初めてだ。私は更に大量の水を振り掛けて治療を続ける。
大量の水蒸気が上がる中観察していると、徐々に傷が小さくなっていく。
『す、スゴい……』
「もう少しよ。頑張って」
竜の巨体を丸めて心配そうに見ているエレ。私はギルディンを励ましながら水をかけ続けた。
そしてしばらくの後。
「終わりました。もう大丈夫だわ」
「おお……まさか本当に治るとは……」
傷の無くなった背中を手で触りながら、まだ信じられないという様子で呟くギルディン。
『お父様……良かった。本当に……』
「心配をかけたな、エレよ」
目を細めて首を垂れるエレの頭を優しく撫でるギルディン。
「泉の精霊様。改めて御礼申し上げます。私はハル様のお味方をする事をお誓い申し上げます。シルドレイクのドラコニアンもシグルーン聖泉国の同盟に加わる様に説得させてください」
「分かりました。賛同者はどれくらいになりそうですか?」
傷の癒えた今ならギルディンの言う事を聞く者も増えるだろう。
しかしその話をするより先にラニターヴァスの子供の奪還をさせてもらう。シグルーンの者が来ている事を知られて同盟を拒絶されたら要らぬ争いが生まれてしまうだろう。
まずは現王スレイニグと直接話をさせてもらう事にする。
「精霊様、恐らくスレイニグは同盟に反対するでしょう。天空竜の子を返すとも言わないと思います」
『私が良く知るスレイニグさんはもう居ないのですね……優しい竜だったのに』
寂しそうに呟くエレ。彼女とスレイニグは幼馴染の様な間柄だったらしい。
「奴は旅に出ている間にズロヴァストに臣従する様になっていました。私が魔竜王に敗れてから命を受けて王になったのです」
「そうだったのね。でも話をするのでしょう?」
「はい。機会を頂ければ」
ギルディンがそこまで言うのであれば任せてみようと思う。皆も賛成してくれた。
現王はこの地の一番高い所に居を構えているそうで、彼の取り巻きになっている竜が数体共に住んでいるらしい。
「早速行きましょう」
エレの帰還を報告するという名目で行く事になった。
ライアッドに現れて話をしたのも、メリーゼハーヴの言っていた風貌からして彼であると思われる。
多大な犠牲を出してしまったライアッド侵攻も魔竜王の指示の筈だが私達の事を恨んではいない様だ。
「ギルディンさん、このままルドガイアから離脱して私達の側に来ませんか?」
私が聞こうとした事を芽依が要約して聞いていた。
「それも悪くはないと思うのだが、今の私に従ってくれる者がどれだけいるか……」
ギルディンの表情は暗い。私が見た所、今も王は彼であると思っている竜は少なからずいる様だが。
『お父様が竜の姿にならないのはあの時の怪我の所為ですか……?』
「……そうだ。私はズロヴァストに両翼をもがれてしまった。竜になれない者を王と認める者はおるまい」
ギルディンはそう言うと纏っていたマントと上着を脱いで背中を見せる。そこには生々しい大きな傷があり血が滲んでいた。
「うわ……」
「ふむ、ズロヴァストにやられた傷か。奴は一種の呪いの様なものを纏っている様で、一度負わされた傷は癒える事が無いのだ」
芽依は痛々しい姿を見て絶句し、クオンは冷静に教えてくれた。
「泉の水を使ってみましょう。もしかしたら治せるかもしれないわ」
「そこまでしてもらう訳には……」
「エレのお父さんなのだからこれくらいはさせて。それでもと言うのならこれは交渉の一つだと思えば良いわ」
返事を待たずに《過剰分泌》させた泉の水を背中に振り掛ける。水は忽ちに蒸発し傷口が泡立ち始める。
「ぐっ……」
苦痛に顔を歪めるギルディン。泉の水で癒しきれない傷は初めてだ。私は更に大量の水を振り掛けて治療を続ける。
大量の水蒸気が上がる中観察していると、徐々に傷が小さくなっていく。
『す、スゴい……』
「もう少しよ。頑張って」
竜の巨体を丸めて心配そうに見ているエレ。私はギルディンを励ましながら水をかけ続けた。
そしてしばらくの後。
「終わりました。もう大丈夫だわ」
「おお……まさか本当に治るとは……」
傷の無くなった背中を手で触りながら、まだ信じられないという様子で呟くギルディン。
『お父様……良かった。本当に……』
「心配をかけたな、エレよ」
目を細めて首を垂れるエレの頭を優しく撫でるギルディン。
「泉の精霊様。改めて御礼申し上げます。私はハル様のお味方をする事をお誓い申し上げます。シルドレイクのドラコニアンもシグルーン聖泉国の同盟に加わる様に説得させてください」
「分かりました。賛同者はどれくらいになりそうですか?」
傷の癒えた今ならギルディンの言う事を聞く者も増えるだろう。
しかしその話をするより先にラニターヴァスの子供の奪還をさせてもらう。シグルーンの者が来ている事を知られて同盟を拒絶されたら要らぬ争いが生まれてしまうだろう。
まずは現王スレイニグと直接話をさせてもらう事にする。
「精霊様、恐らくスレイニグは同盟に反対するでしょう。天空竜の子を返すとも言わないと思います」
『私が良く知るスレイニグさんはもう居ないのですね……優しい竜だったのに』
寂しそうに呟くエレ。彼女とスレイニグは幼馴染の様な間柄だったらしい。
「奴は旅に出ている間にズロヴァストに臣従する様になっていました。私が魔竜王に敗れてから命を受けて王になったのです」
「そうだったのね。でも話をするのでしょう?」
「はい。機会を頂ければ」
ギルディンがそこまで言うのであれば任せてみようと思う。皆も賛成してくれた。
現王はこの地の一番高い所に居を構えているそうで、彼の取り巻きになっている竜が数体共に住んでいるらしい。
「早速行きましょう」
エレの帰還を報告するという名目で行く事になった。
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